日産NV350キャラバンとトヨタ・ハイエースバンを徹底比較!〈ライバル車比較インプレッション〉
- 2019/12/03
- ニューモデル速報
徹底したハイエース対策でキャラバンが巻き返し
マイナーチェンジの詳細については別項にも詳しいが、今回は走行メカニズムには手はつけられていない。エクステリアのテコ入れ、オートエアコン(これがほぼ唯一NV350がハイエースに負けていた主要装備)の採用、4WDラインナップ拡充……といったところが明確な「ハイエース対策」といえるだろう。
加えて、自動ブレーキの事実上の全面展開やアラウンドビューモニター(AVM)とルームミラーディスプレイの導入など、従来からNV350の強みだったアドバンストセーフティ方面でハイエースをさらに圧倒的に引き離す狙いもある。また、AVMの副次効果として、それを装着すると無粋な補助ミラーを省略できて、これはデザイン面でも明確な利点となる……と日産は説明する。
というわけで、今回の取材に連れ出した宿敵ハイエースは個人ユースで圧倒的な人気を誇る「スーパーGL」である。対するNV350もスーパーGLに真っ向勝負する「プレミアムGX」で、エンジンはともによりパワフルで大荷重用途に適するディーゼル車を並べた。
NV350デビュー当時は、質感や安全装備面で明確に劣る部分が多かったハイエースだが、幾度もの改良を受けた最新モデルでは、パッと見でNV350に明確に劣る部分はほぼない。自動ブレーキが選べない点だけは今の時代にはハイエースの弱点だが、さすがに13年前の基本設計にそれを望むのは酷だろう。
ハイエースの水平基調のダッシュボードも、少しばかり古さは感じさせるが、各部の操作性はトヨタらしく繊細。エアコンは当然のごとくフルオートで、燃費や外気温を表示するマルチインフォメーションディスプレイも備わり、それはNV350のようなカラーではないが必要な情報はきちんと得られる。
シートクッションが前後ともNV350よりわずかに薄く感じられること、そしてドライバーの利便性や快適性に大きく影響するセンターコンソールが小ぶり……といった点では、さすがにハイエースの基本設計年次をうかがわせる。それでも、設計年次で8年も新しいNV350と直接並べても、致命的な古さを感じさせないのはさすがハイエース。ただ、そんな強敵のスキをついて新しさを主張するNV350にも同時に感心する。開閉可能なエアコンアウトレットも含めて、NV350には毎日使うほどに重宝する細かい工夫がハイエース以上に多い。
トヨタ・ハイエースバン スーパーGL
■3000ディーゼル 2WD
4速AT ロングバン・標準ルーフ
直列4気筒ディーゼルターボ/2982㏄
最高出力:144㎰/3400rpm
最大トルク:30.6㎏m/1200-3200rpm
JC08モード燃費:9.8㎞/ℓ
最小回転半径:5.0m
車両本体価格:338万914円
ドライビングプレジャーと「楽しさ」はNV350優位
エンジンの直上に座らせられるキャブオーバーだから、NV350もハイエースも前席は決して静かではない。まして、今回のようにディーゼルとなればなおさらだ。
どちらのディーゼルも4500rpm付近のリミットまでスムーズに回ることは回るが、ハイエースの3.0ℓは高回転域では少しばかり苦しげで耳ざわりな音質なのが欠点といえるだろう。対して、NV350はスペックから想像されるとおり、日常域でのピックアップは総じてハイエースより鋭く、体感的な動力性能ではよりパンチのある感触なのがうれしい。5速ATの健気な働きも含めて、ドライビングプレジャーは僅差だがNV350に軍配である。
ただ、日産の2.5ℓはリミット付近まで回しても音質はあまり不快ではないのはいいが、ディーゼル特有の振動は全域でハイエースより強め。計測上の音量はともかく、日常的な低回転で使うかぎり、ディーゼルならハイエースのほうが静かでスムーズと感じる人が多いだろう。
今回はあくまで乗用ドライバーズカー目線で、空荷状態に近い状態で試乗したが、そうしたシーンでの乗り心地や操縦安定性でも、ハイエースが明確に負けていないのは2年前のマイナーチェンジ効果だろう。整備された高速道での上下動の少ないフラットさは、設計が新しいNV350をしのぐ面もある。
それでも、サスペンションがより滑らかで積極的に働いている感触を如実に伝えてくるのはNV350。上屋の動きがハイエースより大きくなることもあるが、それもダンピングがきっちり効いたもので、荷重移動による自然でリニアな挙動だ。その結果として、タイヤの接地感がよりリアルに把握できるのがうれしい。
また、ステアリングホイールはNV350のほうが約20㎜小さく、ステアリングギヤボックスもNV350のほうが明確にクイックな設定である。独特のコツを体得すればハイエースの優しくスローな身のこなしもそれなりに快適だが、乗用車に慣れきった身体により素早くシンクロして、小気味よく取り回せるのはやはりNV350である。
エンジンが重いディーゼルでは、両車ともアンダーステア傾向が明確に強い。さらにドライバーがフロントオーバーハングに座っているので、アンダーステアに陥ると運転席ごと外に膨らんでいく。そんなキャブオーバーではタイヤのご機嫌が把握しやすいNV350の接地感は強い味方となる。路面を問わず、より安心して走れるのはNV350だろう。
たった2台がこれほど完全なガップリ四つで組みあって対峙するクラスはほかにない。まして、これらはあくまで商用車。「荷物を積む」とい
モーターファン別冊・ニューモデル速報 ニューモデル速報 Vol.553 新型NV350キャラバンのすべて
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