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〈試乗記:トヨタ・ヤリス〉名前を変えた理由がここにある|コンパクトカー・インプレッション

  • 2020/02/02
  • ニューモデル速報
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G/Z/HYBRID Z

プラットフォームにパワートレーン、さらにトヨタ最先端の安全装備にコネクテッドサービス……。これでもか、というくらいイチから刷新された新型ヤリス。まさにトヨタの総力を挙げてつくられたコンパクトカーと呼ぶに相応しい。だからこそ、ヴィッツの名に代えてヤリスを名乗るに至ったのだ。

REPORT ●石井昌道(ISHI Masamichi)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)/中野幸次(NAKANO Koji)

※本稿は2019年12月発売の「トヨタ ヤリスのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

Bセグに一石を投じて20年───ヤリスが再び世に問う

 いまから20年前に登場した初代ヤリスは日本のコンパクトカー市場に結構な衝撃をもたらした。それまでのBセグメントといえば、リーズナブルではあるが、後席やラゲッジルームは余裕があるほどではなく、ルックスや質感もお値段なり。庶民のための道具といったところだったが、初代ヤリスはプラットフォームやパワートレーンを一新するとともにパッケージングも巧みになって大きく進化。

 それになんといってもギリシャ人デザイナー、ソティリス・コボスが手掛けたデザインは抜群にハイセンスで近年の名車のひとつに数えられるほど。Bセグメントにも、価格競争だけではなく魅力で選ばせる改革をもたらしたのだった。

 その後の20年でBセグメントはさらなる進化を果たしてきたが、ここのところ変化もみられる。日欧といった自動車成熟市場では「もっといいクルマ」を望む声が大きい一方で、成長が期待される新興国市場ではコストパフォーマンスの高さが求められる。Bセグメントはボリュームが期待できるだけに、自動車メーカーにとっては、どちらに照準を合わせていいものか悩みどころだ。

 コストパフォーマンス重視でASEAN生産とし、日本に輸入する日産マーチや三菱ミラージュがあまり存在感を示せていないという現実もある。コスト違いの2種類のプラットフォームを用意するのが手っ取り早いが、メーカーとしてさらなる大規模化が必要になる。ルノー日産に三菱が加わった現在ならばそれも現実的で、次世代はそうなる可能性が高い。

 その点、トヨタの戦略は明快で、コスパ重視はグループのダイハツが開発するDNGAプラットフォーム(軽自動車・Aセグメント・Bセグメントに対応)に担ってもらうことで、新型ヤリスが初出となるGA-B(グローバルアーキテクチャーBプラットフォーム)は、TNGAらしい「もっといいクルマ」に徹することができるのである。
 
 20年前と違うのはパッケージングに対する考え方だ。あの頃は狭かった後席やラゲッジルームを広げることが優先課題だったが、最近のモデルはファミリーカーとして十分なところまで拡大されてきたし、コスパ重視系なら〝もっと広く〟を望まれるかもしれないが、自動車成熟市場向けならば、むしろ快適で運転環境が最適な前席をつくり上げることが最優先なのだと見て取れる。

 先代モデルに比べると全長は5㎜短縮しつつ、フロントオーバーハングは±0㎜、リヤオーバーハングは45㎜減としてホイールベースが40㎜伸ばされている。以前だったらホイールベースの延長分は後席やラゲッジルームに振り分けられるところだが、ラゲッジルーム長は±0㎜で変わらず。前席は58㎜、後席は20㎜それぞれ後方移動している。それによって前後席間のタンデムディスタンスは37㎜短くなった。

 それでも前席よりも後席を低く座らせて頭上に余裕を持たせ、つま先スペースを十分に取ることなどで不満のない空間になっている。ドライバー及び前席は以前より少し後方寄りで低い配置となって広々とした。快適でのびのびと運転できる環境が整っているのだ。

 新型ヤリスはまだプロトタイプだったため公道を走ることは叶わず、サーキットでの試乗となった。こういったステージだと、つい目を三角にして攻めた走りをしてしまいがち。限界域の走りも一端として捉えることに意味はあるが、それだけではなく意識的に公道でのペースを想定しながら走らせることにした。

エンジンは3種類。写真の1.5ℓガソリンエンジンは新開発の3気筒で、トランスミッションには発進用ギヤを備えたダイレクトシフトCVTを採用し、リニアな加速感をもたらす。1.5ℓハイブリッドは新開発のバッテリーとPCUによりモーター出力30%アップ、伝達損失30%減を達成した。1.0ℓも型式こそ同じだが、中身は大幅な軽量化など大改良が施された。

スムーズで反応良く 加速していくハイブリッド

 まずは特に日本では人気が高いだろうハイブリッドから試乗。ピットロードからのゼロ発進は、街中を普通に走っている感覚で加速していったが、電気モーターのアシスト感が強く、1.5ℓハイブリッドとは思えないほどトルキーかつスムーズに加速していく。新世代ハイブリッドの電気モーターは出力が約30%向上したというが、一発で体感できるほどに力強いのだ。

 走り始めはハイブリッド用バッテリーがほぼ満充電状態だったこともあって、街なか想定の加速から50㎞/hでの巡航に移ってしばらく走り続けてもエンジンの稼働時間はごくわずかだった。そこからさらに加速しようとすればもちろんエンジン主体の走りになるが、一般道を普通に走るぐらいのペースならば2000rpm台以下が多く、エンジン音は静かで振動も少ないと言える。

 従来のヴィッツハイブリッドやアクアは電気モーターだけのEV走行時の静けさからブルルンッとエンジンが掛かった時のギャップが大きく、あまりアクセルを踏み込みたくないと思わせるほどだったが、新型ヤリスは切り替えがスムーズで自然。そういった際に発生しがちな前後Gの変動は微細なものまでよく抑え込まれていてハイブリッド開発陣の練度の高さを感じる。

 ペースが早めの郊外路では日常的に使うであろうちょっと強めの加速をするとエンジンは3000rpm台以上になる。ハイブリッド用パワーメーターが8割方はパワー側に振れている状態で、こうなってくるとエンジンの存在感が増してくる。当然音量も大きくなるが、同様に高まってくるロードノイズや風切り音と程良くバランスしているので耳につくほどではない。

 それよりも、この領域ではエンジンのレスポンスの良さとトルクの太さが印象的だ。アクセルを踏み込んだ瞬間から背中がシートバックに押しつけられる感覚があり、ドライバーの思いと加速がシンクロしている。いかにも効率良く吸気しそうなポート形状を持ち高速燃焼を実現しているダイナミックフォース・エンジンは、世界トップレベルの熱効率を持つとともに、全域で高トルクな上にレスポンスがいい。高出力化された電気モーターと相まってドライバビリティの向上と十分以上の動力性能を手に入れたのだ。従来のハイブリッドは走りの楽しさに期待は持てなかったが、新型ヤリスのそれははっきりとファン・トゥ・ドライブだと言える。

 高速道路で80から100㎞/h、あるいは120㎞/hまで速やかに持っていこうとすればパワーメーターはほぼ振り切れ、エンジン回転数も4000rpmを超える。こうなってくるとさすがに音量が大きく、音質的にも3気筒特有のものでやや雑味もある。もっとも公道でその領域を使うのは短時間だろうから、さほど気にする必要はないだろう。

柔らかな曲面とグッと前に突き出したモニターが印象的なインストゥルメントパネル。これまでシフトノブ の奥に位置していたドリンクホルダーは、左右シート間の拡大によりサイドブレーキ横に移動している。最大の特徴は小径ツインメーターを採用したことで、このおかげでメーターフードは低く抑えられている。

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