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艦隊防空、ミサイル防衛を担うイージス艦:海上自衛隊「こんごう」型護衛艦 自衛隊新戦力図鑑13

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「こんごう」型3番艦「みょうこう」(DDG-175)。写真/海上自衛隊

「こんごう」型が『実働』した事案が今から22年前にあった。1998年8月31日、北朝鮮は弾道ミサイル「テポドン1号」を発射。このミサイルは津軽海峡付近から日本列島を飛び越えるコースで飛び、第1段目が日本海へ、第2段目は太平洋三陸沖へ落下している。ミサイルは大気圏外とはいえ日本上空を飛び越えており大問題だった。北朝鮮の朝鮮中央通信社はこれを人工衛星の打ち上げと発表したが、そうした物体が地球周回軌道に乗ったことを裏付ける観測データはない。そしてこのテポドンミサイルの飛翔を、警戒のため日本海にいた「こんごう」型護衛艦3番艦「みょうこう」がイージス・レーダーを使った追尾に成功している。テポドンを撃ち落としてはいないが、追尾成功は画期的なことだった。

「こんごう」型4番艦「ちょうかい」(DDG-176)。写真/海上自衛隊

護衛艦「みょうこう」艦長の大谷三穂1等海佐。イージス艦の艦長に女性自衛官が就任するのは大谷1佐が初めてだ。彼女は練習艦艦長と護衛艦「やまぎり」艦長を歴任している。防大女子第1期生。乗員を自身の家族と捉え、国民と乗員を合わせた『大家族』を守るため任務に邁進するというのが大谷1佐のモットー。写真は2016年、護衛艦「やまぎり」艦長着任時のもの。
 これ以降、「こんごう」型イージス艦には弾道ミサイル対処のため、SM-3ミサイルを使った「イージス弾道ミサイル防衛システム(ABMD:AEGIS Ballistic Missile Defense)」が追加されてゆく。これはミッドコース段階という、弾道ミサイルの発射後、ロケットエンジンの燃焼が終了し、慣性運動によって宇宙空間(大気圏外)を飛行している段階をSM-3ミサイルで撃ち落とすものだ。米軍は弾体の改造開発やシステムの実射実験を重ね、成功率を上げている。「みょうこう」によるレーダー探知の実績も得たことで、北朝鮮のミサイルについては迎撃の態勢にあるといえる。しかし、完璧な「楯」ではない。成功率は100%ではないからだ。弾道ミサイル防衛は一発でも撃ち漏らせばそれは失敗である。
 海洋進出を止めない中国も、冷戦時代のソ連と同じように米空母艦隊を脅威と捉えており、その対抗手段として弾道対艦ミサイルや巡航ミサイルを大量に生産し、配備、飽和攻撃で米空母を沈める企てがあるという。
 この飽和攻撃に対して、イージス艦の「装弾数」である対空ミサイルの艦載数は、「こんごう」型1隻で90発前後とみられる。つまり、相手のミサイルを90発まで防いでも、91発目を防げなければ負けだ。現代の海上戦闘はこうした様相だという。極めて短時間に一方的な結果を生む戦闘だということがわかる。
 護衛艦「こんごう」型は現在4隻が就役中で、後続艦の「あたご」型が2隻、先ごろ就役した「まや」型が1隻、計7隻のイージス艦が日本にはある。米海軍はその駆逐艦と巡洋艦の全数がイージス艦だから、日米合わせ西太平洋には多数のイージス艦があることになる。  
 しかし、北朝鮮の弾道弾や中国の飽和攻撃への対処はともに「数量」のせめぎ合いだ。相手戦力の「質」や「量」を上回る態勢作りイコール抑止力だが、これは同時に双方に軍備拡張を促し結果的に緊張状態を高める「安全保障のジレンマ」も生む。

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