トヨタ・ヤリス HYBRID G 「走りを楽しみたい」という理由でヤリスを選択するのも、大いにアリだ。
- 2020/06/12
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世良耕太
トヨタ新型ヤリスには、さまざまな新技術が投入されている。「最適な慣性諸元」をキーワードに開発されたTNGAプラットフォームのGA-Bの第一弾として登場したヤリスの走りのレベルアップに貢献したテクノロジーを見ながら試乗してみた。新型ヤリスの魅力は驚異的な燃費性能だけではない。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
新型ヤリスは運動性能面の基本に忠実な設計を徹底した
新型ヤリスはスポーティな出で立ちをしている。どう見ても癒やし系ではない(人それぞれなので、断言はできないが)。日本だけでなくグローバルに展開し、ヨーロッパを主戦場とするモデルは、スポーティとか、アグレッシブといった表現が似合う、アクの強いエクステリアデザインを採用するケースが多い。目立ってナンボということなのだろう。新型ヤリスはその点、負けていない気がする。
新型ヤリスはコンパクトカー向けTNGAプラットフォームのGA-Bを採用した。GA-Bの採用はヤリスが初で、今後、展開が広がっていくことになる。このGA-Bの開発にあたっては、「最適な慣性諸元」を意識したという。重心高や前後左右の重量配分を意識し、それぞれ適正化するということだ。軽量化も必須である。
低重心かつセンター重心を徹底して設計すると、加減速した際や転舵した際の姿勢変化(ピッチ/ロール/ヨー)を小さく抑えることができる。すると、キビキビ走って気持ちいいし、乗員に不安や不快な思いをさせずに済む。キビキビ走ることに特化して最適な慣性諸元を追求するのがレーシングカーで、この点だけ取り上げればヤリスはレーシングカーと同じ設計思想で開発したことになる。
ボンネットフードを開けると、エンジンの前方にラジエーター類を支持するラジエーターコアサポートと呼ぶ部材が左右のヘッドライトを結ぶように配されているのが目に入る。このラジコアサポートを従来の(重たい)スチールから(軽い)樹脂製に変更したのは、最適な慣性諸元化の一環だ。エンジンを4気筒から3気筒にしたのは全長を短くしてパワートレーン全体を中央寄りに搭載するのに貢献する。エンジンは後傾させて搭載し、重心のセンター化に寄与している。ヤリスはエンジンやハイブリッドシステムの高効率化を徹底したいっぽうで、運動性能面の基本に忠実な設計を徹底した。
トヨタ・ヤリス HYBRID G 条件さえそろえばリアルな走りで40km/ℓ台!「燃費の破壊力に打ちのめされた」
ヴィッツ改めヤリスとなったトヨタのコンパクトカー。TNGAのGA-Bプラットフォームに新世代のエンジン+ハイブリッドシステム...
実質的にヤリス・ハイブリッドの源流にあたるアクア(2011年12月発売)で採用されていた技術だが、新型ヤリスには、ドアミラーを支える部分とリヤコンビネーションランプのサイド部に突起が確認できる。ドアミラー部分は、ウインドウ側だけでなく、ミラーのカバーにも突起を配する凝りようだ。
この突起をトヨタは「エアロスタビライジングフィン」と呼んでいるが、実態はボルテックスジェネレーター(渦発生装置)である。突起によって渦を発生させ、渦の引っ張り効果によって車両姿勢を安定させる狙いだ。アクア発売当時は「F1テクノロジー」と称していたが、いまならさしずめ「ル・マンカーのテクノロジー」か。
いやいや、ヤリスはWRC参戦車両のベースモデルだ。エアロスタビライジングフィンは「WRCのテクノロジー」としておこう。起源がなんであれ、新型ヤリスが走りを徹底的に意識しているのは間違いない。樹脂製のラジコアサポートといい、エアロスタビライジングフィンといい、走りに直結するこだわりのワザを目にすると、ヤリスへの好感度が増していく。
(空力処理のディテールは、画像ギャラリーで確認してください)
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