火曜カーデザイン特集:レガシィから生まれたスバル・レヴォーグのデザインを繙く スバル・レヴォーグはもはやステーションワゴンの枠を超えた
- 2020/10/20
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CAR STYLING編集部 松永 大演
レヴォーグのデザインを語る上において、レガシィの存在を無視することはできない。それはスバルにとって、車のあり方を大きく変えたキーとなるモデルでもあるからだ。また、その時代なりのスバル的セダン&ワゴンにあり方を定義したと言ってもいいのが、レガシィであるように思えてならないからだ。
ここではその歴代レガシィのワゴンとレヴォーグのプロポーションを見て行くことで、そのデザインの進化について見ていこう。
レオーネのメカから洗練された新型車レガシィが登場
1989年にレガシィという車が誕生したこと。これがスバルの運命を変えたと言っていいのだと思う。それ以前、レオーネで得ていた技術である、4輪駆動、そしてその時代にブームとなったターボチャージャー。この掛け合わせは、多くのメーカーで行なわれていた。しかし、それを単なるブームと捉えずに、常に朴訥に技術を追求し続けたのがスバルだったのでなないか。
デザイン上の特徴は、その後のレガシィ&レヴォーグに大きな影響を与えるものでもある。それはワゴン前提の開発を行ったことから、セダンであってもリヤピラー周りを絞り込まない造形としたことだ。これによってワゴンとセダンの印象を大きく異ならないものとできた。さらに後席の広さや後方視界のよさを確保できている。
その反面、リヤピラーを絞り込まない造形は、ともすると安定感のない形となりやすい。その打開策ともなっているのが、各ピラーをブラックアウト化する、ヒドゥン(隠された)・ピラーという手法だ。これによって飛行機のキャノピーのようなキャビンを実現した。これによって、広いキャビンとスタイリッシュな造形を両立させた。
2代目レガシィでは、大人気となった初代のデザインを継承するものの、さらなるスタイリッシュな方向を模索している。フロントピラーをボディ同色で隠さない形として、安定感あるプロポーションとしている。それでもサイドウインドウラインは、フロントからリヤまで水平に引き、ワゴンとしての機能がわかりやすい形としている。
3代目レガシィでは、周囲が3ナンバー化する中でも5ナンバーを堅持。全高を高めて居住性を向上。さらに全体のボリウム感も高まることで、安心感のある造形を実現した。セダンはB4と呼ばれ、発表時期が後になったこともあって、レガシィはワゴンがメインというイメージも強くなった。
そして「レガシィかくあるべき」を確定させたのが4代目だ。全幅を1730mmとして、とうとう3ナンバー化してしまったがファンにとっては許せるものとなった。というのも、ワイドになったボディ以外では、この4代目はレガシィらしさの集大成と言えるものとなったためだ。低いノーズと併せて、サイドではショルダーを明確にして、キャビンを小さく見せるスタイリッシュさを実現。それでいて後方までしっかりと続くウインドウグラフィックなど、ワゴンとしての造形もしっかりと保っていた。さらに、全体のプロポーションとしてスポーティに見えるもう一つの要素として、ルーフを後方に向けてなだらかに下げている造形とした。ステーションワゴンとしては背反することだが、そのさじ加減によって、実用性を犠牲にせずに流麗さを実現した。
レガシィとの決別が新たな価値を生む
そして、日本での賛否を分けたのが5代目だ。レオーネ時代からのサッシレスドアの採用をやめたことも注目だが、何よりも北米での要請にこたえてサイズを大きくした。実際、その開発にあたっては、その存在感が問題となっていた。日本ではともかく、北米の交通の中での見え方を調査してみるとこれまでのサイズではどうしても貧弱に見えてしまう。そこで、1780mmの全幅を基本として北米ではさらにオーバーフェンダーで拡幅化、全高も1500mmオーバーとした上、全長は4775mmというビッグサイズとなった。この結果、北米では狙い通りの大人気を得ることとなったが、日本では大きすぎる存在となってしまった。
このことがレヴォーグの誕生に大きく関係していることは明らかだ。この時点は、日本と北米の双方の市場を同じレガシィ1台で賄うのは難しく、これまでのレガシィに代わるモデルが必要となった。それによって、6代目レガシィは、さらに大型化が可能ともなったのだ。
レヴォーグは造語だが、その語源はレガシィ・レボリューション(革命)・ツーリングから。レガシィ・ツーリングの革命とも読みとることもできる。
そして生まれたのが初代レヴォーグだ。サッシレスドアは使われなかったものの、スタイリングのエッセンスは日本に向けたレガシィのスピリッツを重んじたものとして生まれた。
とはいえ…ここにレガシィの要素はあるのだろうか? プロポーションでいえば全面に回り込むウインドウイメージはまったくない。さらにいえば、全幅は1780mmと5代目レガシィと同一だった。しかし全長は4690mm、全高は1490mm。すでにクラスを示すのは全長であり、全幅1700mm基準という認識はなくなったといってもいい。
もはや、サイズは安全性能と、現在の日本の一般的なサイズ感から生まれるものとなっている。むしろ注目なのは、レガシィとはなんだったのか? の再構築だ。
スタイルから読み取れるのは、絶対的に大きな荷室が必要なのではなく、ある程度の上下&奥行きを利用できることがマストでありながらも、必要なのは移動の価値を得ることだ。人+荷物、そして快適で安心に楽しめるロングラン性能。まさにそれらの要素は、4代目レガシィから魅力のエッセンスを抽出したように見える。
俊敏さと安心感を見せるリヤピラー、力強さをみせるフェンダーやしっかりと造形されたグリル、そして俊敏さはエッジの鋭い造形などだ。フロントピラーの付け根を前進させるのは、レガシィファンに向けては大きな冒険となったが、フロント周りとのバランスによって、むしろマッシブな印象が新しさを加えた。
これらの成功を受けて、2代目レヴォーグへと進化。こちらは、全長4755mm全幅1795mm、全高1500mmと大型化するものの、むしろシェイプアップしたように見える。フロントグリルが独立化していくのは大きなポイントだが、サイドウインドウではリヤセクションがさらに小さくなり、フェンダーのフォルムとともに前傾姿勢を強める。
軽快な印象を強めているのは、フロントバンパー下端部分を後退させて見せていることと、リヤフェンダー周りを絞り込んでいることなどによるだろう。もはや、デザインを見るとスポーツカーを選ぶような気持ちで選んでいるような気にもなる。
気がつくと、レヴォーグはステーションワゴンであったことを忘れさせてしまっている。もちろんその機能はありながらも、レヴォーグが気になるということであって、ワゴンの中から選ぶという存在ではなくなっているように感じる。それは、すでにレヴォーグという個性が明確に一人立ちして歩き始めているということの証なのだと思う。
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