次世代への予感! マツダRX-01、ホンダ・ステップワゴン、そしてプリウスへ 第31回・東京モーターショー (1995年) 【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】
- 2020/12/11
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荒川 健
1995年、日本の自動車メーカーは足元を見据え、今後の目指すべき方向を明確に打ち出した。それぞれの得意分野でナンバーワンを目指したコンセプトカーが競い合い、自動車技術、文化の両面で確かな進歩が見られたのである。
オンリーワンの次世代スポーツ マツダMX-01
前回の第30回東京モーターショーで、マツダはバブル崩壊の後遺症としか思えない不思議なカタチのコンセプトカーを出品していたが、この1995年の第31回は地に足を付け、スポーツカーメーカーの誇りにかけた優れモノを出品した。
それがマツダRX-01だ。
アンフィニRX-7のモデルチェンジとして、より高い性能、そして所有の喜びと満足感を最大限に得られるオンリーワンのスポーツカーを目指し、新しい発想でゼロから開発したのであった。
エンジンがフロントにあるはずなのにまるでフェラーリのミッドシップエンジン車のごとくボンネットが極めて低い。当然ながら全高も1.245㎜、全幅1.730㎜、全長4.055㎜とスポーツカーの理想形をしているのだ。
このディメンションはロータリーエンジンのメリットを最大限に生かした、知恵を絞り練りに練った新構想なのである。ロータリーエンジンは2ローターで220馬力を出しながら普通のエンジンより10センチは重心の位置が低く、サイズ&重量も同等性能のレシプロよりもかなり小さく軽くできる可能性がある。それを生かしドライバーの足元にエンジンを置きミッションは膝ぐらいの位置、したがってデファレンシャルギヤまでのプロペラシャフトも極端に短くなる。こうして動力源と重量物をセンターに纏めることによって、自動車の運動性能に大きくかかわる慣性モーメントを小さく有利にすることが出来るのだ。
つまり、運転席より後ろにエンジンのある、いわゆるミッドシップエンジンレイアウトよりも理想形に近位とも考えられ、まさにリアル・ミッドシップエンジン車であるともいえる。
しかもエンジンの前部分の空いたスペースはラジエターを45度も傾斜させることが可能となり低いボンネットを実現、衝突安全上求められるクラッシャブルゾーンも無理なく確保しているのだ。
こうしたハード面のエポックメーキングな特徴をこれ見よがしに尖がったカタチにせず、ちょっと懐かしい1960年代のフォードGT40の面影を匂わせる柔らかな面造形は、クルマを知っている男の所有欲を強く刺激する。
しかも、これまでの完成度の高さが売りだったマツダデザインとは一味違って、アンバランスなところも見受けられ、そこが逆にコンペティションモデルみたいな「特別」という付加価値をも生み出しているのではないだろうか。
残念ながら量産されることはなく幻のような存在であったが、私はジャガーが1950年代のレーシングカー・Dタイプを当時のまま新たに生産したという話を聞き、復活したマツダの象徴としてこのRX-01も100台ぐらい造れば完売間違いないのでは? と当時の写真を見ながら妄想し勝手にときめいてしまった。
ホンダF-MX=初代ステップワゴンの登場
次に取り上げるべきは、時代のニーズを先取りしたようなスーパー・スペースユーティリティーヴィークル、ホンダF-MXである。
翌年の1996年に発売されたステップワゴンの事前お披露目モデルだ。
私はこの初代ステップワゴンが歴代の中で最も永続性があり飽きのこないグッドデザインだと思っている。現在ではミニバンがどんどん大きくなり、5ナンバーのニューモデルも大型を真似たギラギラしたデザインに変化してしまったが、初代のクルマらしいシンプルなデザインはアップル社の一連の造形テーマに近い純粋さを持っていたと思えるのだ。
派手に進化したい、といった強迫観念を捨て最近のi-phone流シンプル&高級素材で勝負といった路線にチャレンジできる良い素質を持っていたと思えるのだが、3代目以降あっさりデザインを方針転換してしまった。世のなか思い通りにはいかないものだ。
かなり以前になるが、友人が新車で購入後10年以上は乗っているこの初代ステップワゴンに乗せてもらって驚いた。とにかく床が低い。サイドの断面はカーブしているが垂直なため、リヤゲートの開口上下幅の差が少なく、したがって天井まで1段余計に段ボール箱を積み上げられ、これはよく考えたものだと大いに感心した。インパネデザインもヨーロッパの商用車的で機能的なカタチが気に入ったのであった。そんなわけで、冒頭で述べたように私にとって歴代ステップワゴンの中で最もグッドデザインなのである。
新時代の夜明け トヨタ・プリウス・コンセプト
トヨタ・プリウスも1995年第31回東京モーターショーのビッグニュースであった。
電気モーターがアシストして、リッター30㎞も走れる超低燃費車を実現したのだ。
トヨタが本気で売ろうとするクルマのコンセプトモデルは、他社とは違ってその時代の最先端ではなく必ずオーソドックスに抑えた穏やかなデザインである場合が多い。プリウスも無駄の無い小型車枠での合理的なスタイルで、キャビンを最大限広くした穏やかなデザインだ。
量産モデルでは、サイドにキャラクターラインを入れパネル強度を増したため、このコンセプトモデルのような未来的スッキリさが失われてしまったのが残念だ。しかし、インテリアは量産車のほうが未来的であり、特にインパネデザインはかなりな進化を見せていて、発売が1997年というタイムラグを全く感じさせていないのはさすがである。
ハイブリッド車の先駆けとしてその後のプリウスの絶対的な信頼を得るのに重要な役割を果たしたわけで、こうした見慣れたデザインからスタートさせたトヨタデザインの用心深さには感服させられるのである。
その後徐々に尖がり具合をプラスさせ、最新型はどこの惑星から飛来したかと思わせるカタチにまで進化させるに至っている。お客様の心を知り尽くし、新しいものを確実に浸透させるマーケティング術に長けたトヨタは、今後もコロナ禍かだろうが何だろうがますます存在感を増していくに違いない。
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