覚えていますか?トヨタFT-HSコンセプト&アルファロメオ8Cコンペティツィオーネ 第40回東京モーターショー 3/3【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】
- 2021/02/12
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荒川 健
2007年 第40回東京モーターショーはスポーツカーデザインが凄かった!
前回は驚きのコンセプトカーをご紹介したが、前々回のレクサスLF-Aのように今後のデザインの方向を示した歴史に残る出展車を振り返ってみよう。
2007年は百花繚乱、ハイレベルなモデルの中からデザインのインパクト、斬新さ、美しさ、時代性といった評価軸でトップクラスだった2台を取り上げることにした。
現代のスープラに通じるFT-HSコンセプトがこの時代に!
まず第一番はトヨタのコンセプトカーFT-HSだ。
あれから14年、振り返ればその後発表されたモデルとのデザインの整合性が最も顕著であり、トヨタが一貫したポリシーの基でデザインを進化させている証拠となる重要なコンセプトモデルなのであった。
2019年に発売されたスープラはこのモデルをストレートに量産モデルにリデザインしている。なんと12年後に世に出るというのは前代未聞で、いかにFT-HSのデザインが先見性に富んでいたかを物語っているのだ。
異なるのはフロントフェンダーを量産しやすく変更したのと、なぜか旧型の丸い面造形を取り入れて、肉感的な力強さを強調していた点だ。
FT-HSはフラットな面造形なのにもかかわらず単純な段ボールカーではなく、そこに映り込む景色を見れば一目瞭然、平らに見えるボディーサイドの断面はちょうどよいニュアンスの緩やかなカーブをしているのだ。そうしたおおらかな面とシャープな稜線や僅かな凹面のディテールとの対比が、とても洗練されていて見事に美しかったのである。
当時私は、レクサスLF-Aをカメラに収めた後このモデルを見て、こちらのデザインのほうが若々しいと感じたことを思い出した。特筆すべきは、トヨタがターゲットとする顧客のわずかな年齢層の違いをきちんと差別化してデザインしている点で、これは世界中のどのメーカーにも真似の出来ない凄いことなのだ。
さて、もう少し詳しくデザインについて掘り下げてみよう。
まず第一番にお伝えしたいのはそのプロポーションが醸し出す潜在的躍動感である。
フロントウインドウをピークに後方にスロープするルーフラインは、ロングノーズ・ショートデッキという往年のフェラーリ250GTに代表されるパワフル・スポーツカーの象徴であり、それを視覚的にアピールしている重要なデザインポイントなのである。
それとともに四隅にふんばるタイヤを強調したデザイン処理のアイデアは個性的で運動性能の高さを十分に表現している。
ちなみに、最新型のアクア、ヤリス、カローラ、86と軒並みスポーツタイプ車のフロントデザインに、このFT-HSの特徴的アイデアや鋭さの雰囲気が取り入れられ、どうやら今後他のモデルにも展開されるのではないだろうか。
この文章を書きながら14年前のこのモデルが今のトヨタデザインのルーツであったことを思い返し、いまさらではあるが記念すべきコンセプトカーであったと再認識したのであった。
スポーツカーの真髄の造形はフルカーボンにより復活 アルファロメオ8Cコンペティツィオーネ
もう一台はアルファロメオ8Cコンペティツォーネだ。
実車を始めて見た私は、「クルマの躍動感とはこういう風に表現するのだ!」と戒められたような気がした。とにかく感動的な迫力で、スケッチならともかく量産車でここまで出来るのが不思議なほどであった。
ボディはフルカーボン製とのことで、こうした樹脂型はどんなに彫りの深い型でも、オス型を工夫して分割すれば基本的に瓢箪(ひょうたん)は別として抜けない形状はないのだ。したがって目障りなボディパネル間のパーティングラインがドアやボンネット以外には存在せず、したがって曲面造形に何の制約もない。
つまり、フェンダーやリヤサイドがどんなに膨らんだデザインでも樹脂成型ボディなら製作可能なのだ。
ちなみに1950年代初期のフェラーリやアルファロメオのボディはハンマー手たたきの板金加工で丸い形状が作り放題、必要なら溶接で繋ぎはんだで仕上げるという具合なので、めいっぱい美しい迫力あるスタイリングにチャレンジできたのだ。
今の板金プレス加工の制約の中で造る量産車では実現不可能なカタチであり、それと比べて昔のクルマがカッコいいとかカワイイのは当然で、そしてこのアルファロメオ8Cコンペティツォーネも同じなのである。
発表されたのは2003年のフランクフルトショーで、その後有名なコンクール・デレガンスでコンセプトカーショーを受賞するなどデザインは高く評価された。
こちらも発表から発売まで4年という異例の時間を要したが、逆に期待感を高める効果があったようだ。当時、世の中のハイテク化が急激に進み新しいモノや斬新なデザインがあふれ、こうした時代性に後押しされ、ノスタルジックでありながら最新技術によりクルマ本来の躍動感を追求したコンセプトが当時の人々の感性を刺激し共感を生んだのではないだろうか。
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