【連載①新車で買える名車】 VWゴルフGTIこそスーパーカー?7代目ゴルフGTIに見る、ちょうどいい高性能。
- 2017/10/15
- MotorFan編集部 野口 優
フォルクスワーゲンを代表するゴルフ。その中でも”GTI”は、特別な存在であると同時に、確実な選択肢となる1台だ。7代目ゴルフGTIのマイナーチェンジ版を通じて、今一度その完成度と印象をレポートし、その価値をお伝えしたい。
REPORT◎野口 優(Masaru NOGUCHI)
PHOTO◎市 健治(Kenji ICHI)
ホットハッチと聞いて“ピン”とくる人は、基本クルマ好きで、かつ40代後半以降だと思う。この語源は、フォルクスワーゲンの代表的存在である「ゴルフGTI」にほかならない。小さなボディに強力なエンジンを搭載し、ワンクラス上の車両を相手にしても同等どころか、さらにその上をいくパフォーマンスを見せたことから、その昔はよく話題になったものだ。
そのゴルフも今や7代目。当然、GTIもラインアップされるが、さらにその上を行く「ゴルフR」を用意するなど、最近のパワー競争は過剰すぎるくらいに激化している。それでもGTIの存在が薄れているかと言えば、答えはNO! やはりGTIは、実に上手いところをついてくると思わせるほど、その完成度は見事である。
と、結論から入ってしまったが、7代目ゴルフGTIは、今年になってマイナーチェンジが実施されている。フェイスリフトされたエクステリアはよりスポーティになり、インフォテイメントシステムも一新され、装備類も充実するなど買い得感の高い内容が特徴だが、しかし何よりも期待したいのは、同じ7代目でも後期型となったことによる“熟成度”である。つまり、この手のモデルのマイナーチェンジというのは、実のところその熟成こそ肝で、ファイスリフトや装備類の追加などはあくまでも表向き。本筋はそれである。
エンジンは、前期型同様の2ℓ直列4気筒ターボを搭載する。パワーは10psほど引き上げられ、この後期型では230psに達した。トルクは同じ350Nmだから劇的な違いは見いだせないものの、それでも十分に速い! 久しぶりに乗ったGTIの第一印象はそんな期待を裏切らない見事な完成度から入ることとなった。
何しろ、まず驚くのは、やはりそのボディ剛性。相変わらず強靭である。それでいて足まわりの出来がいいから、不快感は無い。バンプ・リバンプ共に実に良い仕事をする印象だ。特に4リンク式のリヤサスペンションのセッティングはお見事。マクファーソンストラット式のフロントサスとのバランスも巧みで、高速道をそれなりの速度で飛ばしていても、やや硬さを伴うものの、安心かつ快適に移動できる。だが、高揚感があるというわけではない。いたって“フツーに速い”という印象だ。
しかし、これはあくまでもノーマルモードまでの話。いつもテストするワインディングに到着し、ドライブモードを“スポーツ”に選択すると、車体全体が“シャキッ”と変化。足まわりは締め上げられ、スロットルレスポンスも激変、さらにハンドルの重さにも変化が見られ、それまでの“フツーに速い”から今度は“確実に速い”ことを匂わせた。
面白い! やっぱりGTIはこうでなくちゃ!が受け継がれている。それでいて前期型よりも安定感が高く、攻め込んでも破綻しそうな気配すらない。トルクの出方もターボ効果により扱いやすいからコーナー出口で一気にアクセルを踏んでも素早く立ち上がる。数あるフロントエンジン&フロント駆動車の中でも、ゴルフGTIほど素直にコーナーをクリアしていくクルマはないだろう。極度なトルクステアもなければ、キックバックが強いわけでもない。
ハンドリングも抜群だ! 電動パワーステアリングを装備するだけに、タウンユースでは取り回し重視となる一方、こうしたワインディングではクイックに可変して対応、狙ったラインをトレースしやすいからコーナーを攻めやすい。ましてやフォルクスワーゲン自慢の電子制御デファレンシャルロック”XDS”を備えるとあって、グリップ不足を検知すると内輪の空転を制御してアンダーステアを回避するから攻めていても安心感すら伴い。
それに加えてインフォメーション性が高いのが何よりもドライブしていて楽しい。フロントタイヤのグリップを感じながら攻められるのは快感だ。しかも今回の試乗車は6速DSG(もちろん6速マニュアルもラインアップする)。ステアリングに設けられたパドルを使えば、電光石火のごとく瞬時に変速するどころか、ダウンシフトの際は、その素早いシフトのおかげでマニュアル車では不可能なほどギリギリのところまで踏んで行けるから楽しさが止まらない。このアダプティブ・シャシーコントロールは本当に素晴らしい。確かに攻めれば責めるほど前期型との違いを見出せるほどの進化を体感できる。
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