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〈マツダCX-30:オフロード試乗〉ズズッと滑ったその刹那、ゴリゴリとトラクションが掛かり始めた! |コンパクトSUVインプレッション

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SUVとはいえ都会派イメージの強いマツダのCXシリーズ。とりわけ最新のCX-3Oはクーペ的なシルエットが際立ち、全高も低く、オフローダーとしてのキャラクターは極めて希薄だ。そんなMAZDA CX-30で本気のオフロードコースを走るとどうなるのか?

REPORT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)

新開発のオフロード・トラクション・アシストを採用

 マツダのCXシリーズは徹底している。例えばカタログを見ても、それがCX-30であれ、CX-5であれ、CX-8であれ、未舗装路の写真が一切出てこない。使われているのはどれも都会の写真ばかりで、強いてアウトドアらしさを感じさせるものを挙げるとすれば、CX-8のカタログの中にボートを牽引している写真が一点あることくらいだ。

 それほど、マツダのブランド戦略は徹底している。

 だが、だからといってマツダのSUVが他メーカーのライバルと比べて悪路走破性に劣っているわけではない。

 マツダ自身もオフロード性能についてマーケットに誤解されていると感じているらしく、今回、本格オフロードコースを走る機会を用意してくれたというわけだ。

 テストドライブはCX-30、CX-5、CX-8で行われたが、本記事ではCX-30について報告したい。

 試乗に供されたのはディーゼルを搭載したXDの4WDだ。トランスミッションは6速ATのみの設定となる。

 まずは15分ほど、敷地外のオンロードコースを走ってみた。筆者がCX-30に乗るのは今回が初めてであったが、第一印象は「まるでマツダ3」というものだった。

 最近では珍しい話でもなくなってきたが、ドライビングポジションにも、コクピットからの眺めにも、そして実際の身のこなしにも、とにかくSUVっぽさがない。Cセグメントのハッチバックと同じような感覚で運転できてしまうのだ。

 それだけに、果たしてこれで本格的なオフロードコースなど走れるのか、という思いも募ってくる。

オフロード・トラクション・アシストのスイッチはステアリングコラム右側のスイッチ群の右上にある。クルマがデコボコ道を上っているようなイラストのボタンだ。

 ほどなくして拠点に戻り、いよいよオフロードコースに足を踏み入れる。

 CX-30用に設定されたコースは林道を模した周遊コースで、大きくえぐられたような谷間が一箇所あり、SUVでなければ躊躇するような登り坂と下り坂になっている。

 狭い林道のようなセクションでは、CX-30のコンパクトさがむしろ光った。一般的なCセグメントのハッチバックのように運転できることで過度な緊張感が抑えられ、大型SUVでの走行も前提に作られたであろう今回のコースでは道幅に気を遣う必要もなかった。大型化著しい最近のSUVのなかにあって、コンパクトSUVと呼ばれるこのクラスが相対的に優位であるのは言うまでもない。

 とはいえ壁のような登り坂と相対すると、さすがに不安が頭をもたげてくる。こんなフツーのハッチバックのような、クーペのようなクルマで未舗装の急坂を登れるのか?

 もちろん今回はマツダが用意したオフロードコースであり、登れるから設定したのだろう。それだけを心の拠りどころにズンズンと坂を駆け上がっていくと、意外とスムーズに行けるじゃないか……と思いきや、もう少しで頂点というところでザザザッと右前輪が空転! しかしその刹那、制御が入って空転が収まり、ほかの3輪にゴリゴリとトラクションが掛かって脱出! その間、1秒弱ほどだっただろうか? 傍からは、何ごともなく坂を登り切ったとしか見えなかっただろう。

CXシリーズのオフロード開発においては、ヤマハ発動機のクアッド(四輪バギー)の開発チームとの技術交流が行われた。写真は試乗会場にディスプレイされていた競技専用車両のヤマハYZ450FとYZ250F。

 CX-30の4WDモデルには、マツダの新しい悪路走破デバイスである「オフロード・トラクション・アシスト」が採用されている。

 これはトラクションコントロールの一種で、スリップしているタイヤに高いブレーキ圧を掛け、グリップしているタイヤに高いトルクをかけるもの。本格的なデフロック機構と比べると悪路走破性という点では確かに一歩譲るが、重量増、コスト、燃費の悪化などを抑え、オンロードにおける運動性能や快適性能を犠牲にすることはない。なによりCX-30のようなクーペ風SUVにはベストな選択肢と言って間違いない。

 この試乗の前にCX-5、そして後にCX-8に試乗し、それぞれオフロード・トラクション・アシストを体感したのだが、最もその効果を感じたというか、凄みを感じさせられたのはCX-30だった。ほかの2台は、そもそも見た目からしてCX-30よりもオフロード性能が高そうだし、実際にもロードクリアランスに余裕があり、クルマそのものが持って生まれた悪路走破性が高い。

 だが、何度も記しているとおりマツダ3に近いディメンションを持ち、同じように走れるCX-30は、ここまでダートを走れるとは想像しづらい。それだけに、マツダのAWDシステムとオフロード・トラクション・アシストの効果が強く印象に残るのだ。

 ディーラーでの試乗など、なかなか購入前に体感することは難しいかも知れないが、ともすると都会派のイメージばかりが先行しがちなCX-30にも、SUVの名に恥じない悪路走破性が備わっていることは知っておいた方がいいだろう。

CX-30 XD Lパッケージ 4WD
全長×全幅×全高:4395×1795×1540mm
ホイールベース:2655mm
最低地上高:175mm
車両重量:1530kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:1756cc
ボア×ストローク:79.0×89.6mm
圧縮比:14.8
最高出力:85kw〈116ps〉/4000rpm
最大トルク:270Nm/1600-2600rpm
燃料タンク容量:48L
トランスミッション:6速AT
駆動方式(エンジン・駆動輪):F・4WD
サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡトーションビーム
ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡドラム
乗車定員:5名
タイヤサイズ:215/65R16
WLTCモード燃費:18.4km/L
市街地モード燃費:15.5km/L
郊外モード燃費:18.5km/L
高速道路モード燃費:20.0km/L
車両価格:330万5500円

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