街乗りの使い勝手の良さとSUVとしての機動力を両立させ新ジャンル、マツダCX-30 マツダ CX-30:その走りは本物か? シャシー評価のプロが辛口チェック「MAZDA3とCX-30の完成度」を比較する
- 2020/01/23
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瀨在 仁志
アクセラがMAZDA3となり、続いてクロスオーバーモデルとしてCX-30が投入された。マツダの第二世代として、世界で初めて実用化した圧縮着火(SPCCI)エンジンのSKYACTIV-Xの搭載も話題となっている。今回は取材日の関係でX搭載モデルに試乗できなかったが、そもそもMAZDA3とシャシーを同じくするCX-30の走りはどうか? 自動車評論家の瀬在仁志が試乗した。
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi) PHOTO:MF.jp
高い安定性と操縦性を実現したマツダのスカイアクティブ技術
マツダが2007年に発表した『サステイナブルZOOM-ZOOM宣言』のもと、スカイアクティブ技術が2012年2月、CX-5に初めてフル搭載された。そのときの想いをひと言で言えば『ひと皮むけた走りの良さ』にホッとした、というものだった。
というのもCX-5発表の数年前、マツダのテストコースで試乗したスカイアクティブ技術のパイロットモデルは、初代アテンザのボディを真ん中から切断して延長や幅広にし、フェンダーを大きく張り出させた、まさに開発初期段階の研究開発車両そのまま。
シャシーも全面改良されてサスペンションの取り付け位置も大きく変更するなど、従来のパッケージングを一新させた次世代モデルの試作車だった。それを我々に試乗させるという大胆な想いは、マツダが当時置かれていた窮地と、起死回生の大改革の表れだったに違いない。
実際にスカイアクティブ技術がフルパッケージングされた、鉄板むき出しのボディを持つ試作車は無骨であることは当然ながら、走りでは連続するコーナーでGを抱え込むことなくタイトなラインで通過できるし、ハードなブレーキングにおいてもボディ全体が路面に沈み込むような姿勢を保ち、ブレーキを残しながら高速コーナーへ遠慮なく飛び込めた。
なるほど、理想的なサスペンションレイアウトを採用すれば、高い安定性と、操縦性を両立することはやはり可能だったのだ。と、自分自身の経験にも大いに役立った。マツダのいうスカイアクティブ技術の高さを肌で実感でき、この技術のデビューを心待ちにしていたいっぽう、果たして実際に商品化することは可能なのだろうか、生産モデルになれば制約もあり、どこまで具体化できるか疑問に思ったのも事実だった。
第二世代として先陣を切ったのはマツダ3。CX-30がそれに続く
で、いよいよフルパッケージングされてデビューしたのがCX-5だった。背の高さからアテンザベースの試作車のようにヒラヒラと路面をなめるような感動こそ薄かったものの、粘り強い足腰や、姿勢の安定感に間違いはなかった。試乗会が行なわれたサーキットで背の高さを意識せずに走り続けられることがその表れで、しっかりと試作車の技術を反映してくれたのだ。マツダの新時代の幕開けと同時に、日本車を引っぱっていってくれるメーカーになってくれそうな期待に胸が膨らんだ。
その後の快進撃はすでにご承知のとおり、続々とニューモデルの投入とラインナップの整理などを行なうことで、セダン・HB系とSUV系の二本柱を中心に盤石な体制が構築された。
問題は次である。第二世代を迎えて、アクセラはMAZDA3となって先陣を切り、続いてクロスオーバーモデルとしてCX-30を投入。圧縮着火(SPCCI)エンジンのSKYACTIV-Xを世界で初めて実用化して、ともにラインアップに加えた。まさに第二世代の象徴的アイテムといえる。
残念ながら今回のCX-30の試乗では搭載モデルは用意できなかったものの、MAZDA3の流れを汲む魂動デザインはボディサイドにうねりのようなラインを持つ。インテリアに目を向ければ、やはり質感の高さに驚かされる。MAZDA3では価格設定が高めと言われているためか、我々の予想以上に販売台数はまだ出ていない様子だが、このCX-30に関してはデビュー3ヵ月での受注台数は1万2000台を超え、月間販売目標の2500台を大きく上回っている。
乗ってみるとその賢い選択理由がよくわかる。全高は1540mmとタワーパーキングに入るサイズながら、最低地上高はCX-3よりも15mmゆとりのある175mm。これに大径の215/55R18を履くことで、街乗りの使い勝手の良さに加えて、RVとしての機動力も両立。まさに従来のSUV路線に加えてクロスオーバー路線に向けての多様性を持っている点が持ち味。新ジャンルの開拓こそがCX-30の命題で、その使命をしっかりと市場が受け入れたといえるだろう。MAZDA3はこのとばっちりを受けているカタチとなってしまったともいえる。
シャシーはマツダ3と共有。では、その乗り味は?
走りに関してはエアボリュームがあるタイヤのおかげか、マツダ3とシャシーを共有していながら、カドを感じにくく、乗り心地の第一印象はいい。コツコツとした入力が緩和されたおかげで、剛性感の高いボディが生かされ、静粛性の高さがようやく実感しやすくなった。
一方、この大径タイヤのためか街中では不満がなかったものの、高速道路ではゴムまりの上に乗っているような長周期的な上下動を繰り返し、タイヤのダンピングの弱さが気になった。リヤ周りからの振動を発生源とするノイズの侵入は抑えられていることから、HBモデルとしての違和感は少なく、上質に感じられるだけに、ボディの動きは少々残念だ。
エンジンはMAZDA3と同じ156ps/199Nmの出力を発揮する2.0ℓ自然吸気のSKYACTIV-G2.0。やはり噴け上がりの擦れたようなサウンドは、か弱さを意識させる。しかし、意外や、巡航速度に入ってからは力強い。MAZDA3より同グレードで約100キロ重いにもかかわらず、中間加速で不満に思うことは少なかった。
もっともMT仕様ゆえに、アクセル操作に対してダイレクト感があり、ロックアップを行なっているATともひと味違う走りを見せてくれた。100km/h走行時は2300rpmだから、決してギヤ比が低いわけではないが、スッと流れに乗ってくれるスムースさがある。特に3000rpm弱くらいからの伸びの良さは、いままでのマツダのNAエンジンで一番の扱いやすさがあった。シャシーやトランスミッションを含めてロスなくパワーが路面に伝えられている証と言えるかもしれない。
その優れたシャシーと思われている点のひとつに剛性感の高さと無駄な動きを廃したすっきりとした乗り味があるいっぽうで、MAZDA3では路面からの入力が明確すぎた。CX-30ではその点、タイヤなどに助けられてずいぶんとしっとり感がでて、ノイズもさらに緩和され上質な乗り味が感じられる。
普通のドライブに関しては、これまでのウイークポイントは改善され、第二世代に向けての軌道修正は確実に行なわれつつある。
ワインディングに持ち込んでみると、ひとつひとつの機能の磨き込みがよくわかる。FFベースでありながら6MTはゲート感がしっかりとしていて、横Gを抱えている状況でもスムーズにシンクロ乗越えができているし、振動や手応えの軽さもなく落ちついている。ブレーキやステアフィールも適度な重さを維持しながらも正確さにこだわり、反力も感じられることでドライバーは遠慮なく操作できる。
ただ、ボディに関しては残念ながら従来のマツダ車の走りの良さは薄い。もちろん路面をしっかり掴み足元の安定感はある。操作系の気持ちよさによって、減速、旋回と一連と操作をしていくと、ボディは前後左右によく動く。上下の動きに一体感がなく、移動量も大きい。残念ながら現行レイアウトのウイークポイント解消とのトレードオフで、挙動が大きくなってしまっている。
スタイルにこだわった結果、物足りなさも……
第二世代に入って。マツダの新技術は確かに進化し、洗練され、大きなステップを踏むに違いない。それは実際の市場が表しているように確かな進化だ。しかし、窮地に追い込まれた時に、こだわりを持って作られたパイロットモデルのような走りの良さとは徐々に遠ざかりつつあるように思う。一般の人の満足が得られたとしても、志の高さだけは見失ってほしくないように思う。MAZDA3ではそこまで気にはならなかったものの、背が高く、上質さにこだわった結果、走りの本質に関して物足りなさが浮き彫りになってしまったのは皮肉だ。
今後は今一度原点回帰して、上質さと走りの良さの両立を目指してほしいものである。
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マツダCX-30 20S PROACTIVE Touring Selection(4WD/6MT)
全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1540mm
ホイールベース:2655mm
車重:1440kg
サスペンション:
F|マクファーソンストラット式
R|トーションビーム式
タイヤ&ホイール:215/55R18/18×7Jインチアルミホイール
駆動方式:4WD
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
型式:PE-VPS型(SKYACTIV-G 2.0)
最小回転半径:5.3m
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.5×91.2mm
圧縮比:13.0
最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
最大トルク:199Nm/4000rpm
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
燃料:レギュラー
燃料タンク:48ℓ
燃費:
WLTCモード燃費 15.6km/ℓ
市街地モード 12.5km/ℓ
郊外モード 15.9km/ℓ
高速道路モード 17.2km/ℓ
トランスミッション:6速MT
車両本体価格:297万円
※試乗車はオプション込み305万6880円
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