航空自衛隊:『防衛百景』現場を見に行く 空自「F-35A戦闘機」を三沢基地で臨む 自衛隊新戦力図鑑2020
- 2020/08/22
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貝方士英樹
航空自衛隊が新たに導入した最新戦闘機がF-35Aである。8月上旬、青森県・三沢基地でF35-Aの訓練を見た。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)
最新鋭のステルス戦闘機F-35Aを運用する第302飛行隊は青森県・三沢基地に置かれている。302飛行隊はF-4EJ改から機種転換し、新しく導入したF-35Aの戦力化に邁進している最中だ。
同飛行隊と全体の流れを少し振り返ってみる。まず2017年、防衛省はF-4EJ改を運用し茨城県・百里基地に置かれていた302飛行隊を三沢基地へ移駐させ、運用機種をF-35Aへ変えると発表した。同年12月には三沢基地に臨時F-35A飛行隊が作られ、受け入れ準備が始まった。
翌2018年1月には1機目の機体が臨時飛行隊に配備され、2月24日には「F-35A配備記念式典」が三沢基地で行なわれた。報道陣等に対して「空自F-35A」としての機体を巨大な日の丸を背景に公開している。臨時飛行隊へは2018年度に12機が配備される予定とされた。
2019年3月、302飛行隊は百里基地でF-4EJ改のラストフライトを行ない、数日後には三沢基地でF-35Aを運用する飛行隊として部隊新編を行なった。航空自衛隊でF-35Aを飛ばす初めての飛行隊として立ち上がったわけだ。
しかし2019年4月9日、飛行訓練中のF-35Aの1機が結果的に墜落したとみられる事故が発生した。大規模な捜索が行なわれたのちの6月、当時の防衛大臣はパイロットは亡くなったとの判断を発表する。痛ましい事故のあと、新鋭機の戦力化に向けた飛行訓練などは再開され、今日に至る。
こうした302飛行隊の日常的な飛行訓練を見るため三沢基地へ向かった。三沢基地は空自と米空軍、米海軍航空部隊などが共同使用する航空作戦基地だ。民航の三沢空港も併設されている。
8月初旬、朝8時、三沢空港展望デッキが開かれるのと同時に臨んだ基地はもう動き出していた。米空軍のF-16、米海軍のP-8哨戒機などが次々と離陸して各々の訓練に向かっていく。午前も深まった時間帯に空自F-35Aが複数、格納庫を出て誘導路をゆっくりと走ってくる。キャノピーが太陽光を受け複雑な色で反射する。翼端で点滅する灯火はLED照明なのか光量が大きい。
計3機の空自F-35Aは滑走路東端で最終チェックを行ない、さきほど離陸し飛行訓練を終えた米空軍F-16飛行隊の全機着陸を待ってから滑走路へ進入、一時停止ののち滑走を始める。
排気音は腹に響く轟音だが、米空軍F-16の大音量や米海兵隊F/A-18の爆音とは異なる音質だ。そして充分滑走したのち離陸、西の空へ向かって緩やかに高度を上げていく。通常の離陸、上がり方は軽やかでも、鈍重でもない印象。たとえばF-4EJ改の離陸は空気の層を1枚ずつ踏み込みながら高度を増すように見える。F-15Jは有り余る力を見せつけるような感じだ。世代も設計も違うのだから当然だが、F-35Aの動きはこのどちらとも違う印象を受ける。
排気煙はほとんど見えず、響いていた轟音もすぐに聞こえなくなる。見た目がケシ粒大にまで離れると空の色に溶け込んで見えなくなった。訓練空域は太平洋上と日本海上にもあるが、どちらに向かったのかはわからない。
離陸から約1時間後。着陸は基地から少し離れた地点で待ち受けた。滑走路東端の延長上に立ち、高度を下げてくるF-35Aを捉えよう試みた。東の空に輝点が現れ、機影が大きくなる。主翼後縁のフラッペロンを下げ、前脚・主脚を出している。ヒューヒューという音が断続的に聞こえる。キャノピーの中でパイロットがまっすぐ前を見ている様子が見えた。筆者の目前をゆっくりと飛び去り、林の向こうの滑走路へ降りていった。
実際に飛んでいるF-35Aは意外にカッコいい。高度な検知能力と情報処理・通信能力を実装した軍事的合理性、スペック一点張りのステルスな外観は好みの分かれるところかもしれない。自動車でいうロングノーズ・ショートデッキの流麗なフォルム、旧来型のステキなクルマ的視点でのカッコよさを持っていない点は、かえって現代的だと思うがどうでしょう。
飛行訓練は午前に1回、午後に1回、ナイトと呼ばれる夜間飛行訓練がある場合には日没時間頃に飛び立っていった。1回の訓練は約1時間、1日あたり3回の訓練頻度だと見込める。練度を上げ、早期戦力化に努める物事とはこうした頻度を軸にさらに訓練を重ね達成されるものなのだろうし、そうあってほしい。なぜなら302飛行隊とF-35Aが置かれる三沢基地は、ロシア機や北朝鮮弾道弾の正面に位置することになる本州北方防空の要石だからだ。
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