マツダRX-8に至る洗練モデルRXエボルブも登場そしてホンダ・スポーケット | 1999年 第33回東京モーターショー 中編【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】
- 2020/09/25
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荒川 健
前回は話題性重視で“世紀末を彩ったコンセプトカーをご紹介したが、今回はいよいよ
来るべき21世紀のクルマを大胆に提案したモデルを取り上げたい。
我が渾身のマツダ ユーノス・プレッソその裏側をお話ししましょう! 第29回・東京モーターショー 2/4話 【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】
荒川氏にとって1991年の第29回東京モーターショーは、実に感慨深いイベントだった。特に氏がチーフデザイナーとして手がけた...
デザイナー本田宗一郎の3つの要素
トップはホンダのスポーツユーティリティ・ギア、スポーケットだ。久しぶりに本田宗一郎が目指した「いいデザイン」の正統な後継車が現れた!
あのホンダ創成期の魅力的なカタチ。それを分析するとそこには三つの特徴が存在するのに私は気が付いた。まず第1は決して野暮なカッコは付けないこと。第2はいたってオーソドックスなスタイルだが、そのカテゴリーの中で一番まとまったバランスの良さが光っている。第3はディテールのどこかに頑固な設計者らしい無骨なデザインが存在する。
この3つが本田宗一郎が指揮を執っていたころのデザインの秘密なのだと私は考えている。
ホンダN360やS600、TN-360 、それからGPレーシング・モーターサイクルなどのすべてに当てはまるのだ。
スポーケットはデザインの基本中の基本、ディメンジョンが素晴らしい。
楽な運転姿勢を保証する全高1280㎜、ライトウェイトスポーツカーの定説に近い全長4270㎜と2750㎜のホイールベース、そして安定したコーナリングに必要な全幅1780㎜という具合にスポーツカーの黄金比的サイズを実現している。
また、アイデアのまとめ方も素晴らしい。リヤのルーフを移動式にしたことでコンパクト・スピードトラックという新しいスタイルが生まれた。
こうした提案からは、究極の実現のためには切り捨てることも必要という、ものづくりの哲学も感じられる。
最後に語るべきは何といってもシルエットが抜群に良いことだ。シャープなウエッジ感を強調したサイドの折れ線は力強く全体を引き締め、その配置もゆるぎない的確さである。そして、先ほど述べたホンダのオリジナルデザインの3つの法則がちゃんと守られている。
ということで第33回東京モーターショーの最優秀作品を私が勝手に決めるならスポーケットに間違いない。
驚きを持って迎えられた究極のコンパクト・スポーツセダン・パッケージ
次に取り上げるべきはマツダRX-エボルブだ。ホンダ・スポーケットはFF+リヤインホイールモータードライブという前提で夢のスタイリングを達成したが、こちらは世界で唯一の超コンパクトなロータリーエンジンによるマツダが考えるスポーツカーの未来形、量産予定のクルマであった。
4人乗りスポーツカーは今でこそアストンマーティン・ラピードSやポルシェ・パナメーラが登場しているが、4ドアクーペではない4人乗り&4ドアのリアル・ポーツカーの元祖はエボルブなのである。
コスモスポーツから始まる、マツダのスポーツカーメーカーとしてのプライドをかけた渾身のチャレンジであった。まず驚かされるのが超コンパクト化を実現した、新世代ロータリーエンジンの小ささだ。それによって、フロントミッドシップと呼ばれる前輪よりもかなり後方にエンジンを搭載したFRスポーツカーとして理想の重量バランスを実現している。
デザインも1990年から始まった、マツダのデザイン改革の伝統を踏襲したユニークで洗練された造形をしていた。とにかくボディのすべての面が美しい曲面で構成され、シャープな稜線がクルマの塊としての凝縮感をアピールしていて、優しいイメージなのに圧倒的な迫力があった。細部のアイデアも素晴らしく、特に小型高輝度LEDランプを稜線に沿わせ縦に配列したヘッドランプが斬新だった。個人的意見だが、このオリジナルのフロントデザインをぜひとも最終モデルでマイナーチェンジして実現してほしかった。残念である。
もう一つ残念なことは量産化するうえで避けられない安全基準への適合だ。普通の2ドアクーペ、またはセンターピラー(Bピラー)を残せば、水没などの非常事態でのリヤ席からの脱出やフロントシートベルトの根本がリヤドア上部に付く問題も避けられたはずだ。
両開き4ドアにこだわった設計者の頑固さが垣間見られ、将来ユニークさと優れたデザインで歴史に名を遺すに違いない。
こうした“渾身の開発”がマツダの伝統なのだから、お宝のロータリーエンジンから撤退せずに、発電に適した超小型軽量ロータリーエンジンによる高性能ハイブリッド車の開発などへのチャレンジを是非続けていただきたい。
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