スバルWRX STI搭載のEJ20 熟成の極み。28年目のスバルEJ20型水平対向4気筒ターボ
- 2017/07/18
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Motor Fan illustrated編集部 鈴木慎一
先頃マイナーチェンジしたスバルWRX STIが搭載するのは、もはや“伝統の”と言っていい、EJ20型水平対向4気筒DOHCターボだ。そのデビューは1989年。エンジンのモデルライフが短くなる傾向が強まっているなかで、28年目となる長寿ユニットだ。
EJ20型水平対向エンジンがデビューしたのは1989年。初代レガシィとともに登場し、永年スバルの主力エンジンとして第一線で活躍してきた。しかし、現在では、メインエンジンはロングストローク化されたFB型へ移行。スポーツエンジンとしてはスクエア(ボア×ストローク:86.0×86.0mm)のFA型だ。現在EJ型を国内で搭載するのは、WRX STIのみとなっている。
1980年代デビューのエンジンが2017年の現在でも継続採用されているのは、驚きだ。20世紀とはまったくレベルの違う環境規制・燃費規制のある現在なのだから。
マイナーチェンジしたWRX STIが積むEJ20型のボア×ストロークは、92.0×75.5mm。ビッグボア、ショートストロークという20世紀型高出力エンジンのフォーマットだ。
ボア・ストローク比0.82。
いまや、ここまでショートストークのエンジンを探すは、かなり難しい。
日産GT-RのVR38DETT型3.8ℓV6ターボが
ボア×ストローク:95.5×88.4mmでボア・ストローク比:0.926
同じく日産で1994年デビューのVQ型でフェアレディZが搭載するVQ37VHRが
ボア×ストローク:95.5×86.0mmでボア・ストローク比:0.90
新しいエンジンなると、たとえばホンダNSXが搭載するJNC型3.5ℓV10エンジンで
ボア×ストローク:91.0×89.5mmでボア・ストローク比:0.984とほぼスクエアに近づく。
現代のエンジンで、EJ20以上のショートストロークとなると、ポルシェの2.5ℓ水平対向4気筒ターボくらいだろうか。
ボア×ストローク:102.0×76.5mmでボア・ストローク比:0.75
あとは、
ランボルギーニ・アヴェンタドールが搭載する6.5ℓV12が
ボア×ストローク:95.0×76.0mmでボア・ストローク比が0.80
フェラーリの6.3ℓV12が
ボア×ストローク:94.0×75.2mmでボア・ストローク比が0.80
といった、いわゆるスーパーカー系のエンジンしかない。
EJ20ターボ
水平対向4気筒DOHC+ターボ
排気量:1994cc
ボア×ストローク:92.0×75.5mm
圧縮比:8.0
最高出力:227kW(308ps)/6400rpm
最大トルク:422Nm/4400rpm
ターボ:ツインスクロール
ブロック材料:アルミ合金
バルブ駆動方式:直接駆動
燃料供給:ポート噴射(PFI)
9.4km/ℓ
圧縮比は、8.0。
S4が搭載するFA20型直噴ターボの圧縮比が10.6だから、8.0の低さは、これまた現代では特別といえる。実際、EJ20ターボより低い(つまり圧縮比7台の)量産エンジンは、世界中見渡しても、いまや存在しない。
それでも、スバルがWRX STIでEJ20ターボを使い続けるのは、スポーツエンジンとしての素性の良さからだろう。高出力に耐えるシリンダーブロック、高回転に向くショートストローク、そして、周辺パーツの継続性も重要なポイントだという。EJ20型は、モデルライフが長い故に周辺パーツが充実している。新型WRX STIでエンジンが変わってしまったら、これまでのユーザーが新型に買い換える際に、保有するパーツ類が使えない。またサードパーティを含む周辺のパーツも使えなくなってしまう。WRX STIがEJ20を使い続ける理由はその性能だけではないので。
実際、WRX STIがマイナーチェンジを受けてもEJ20ターボに大きく手は加わっていない。言い換えれば、もう熟成の極みに達しているから、とも言える。出力・耐久性・フィーリングのバランスは、これ以上向上させるのは困難なほど突き詰められている。
と言っても、乗ってみれば、「長寿ユニットで古くさーいエンジン」ではない。「齢28歳の老年エンジン」でもない。エンジンは非常に気持ちよく回り、MTとの組み合わせではレスポンスも優れていて極上のフィールを味わわせてくれる。「EJ20ってこんなに気持ち良いエンジンだったっけ?」とエンジニア氏に聞くと「そうですよ。ここのところ大きくては入れてないので、ずっと気持ち良いエンジンですよ(笑)」と言い返された。
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