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熊倉重春のテクノロジー悲喜交々:第1回 熊倉重春の「チョー私的なプリウス談義」──ハイブリッドの登場

  • 2018/07/21
  • Motor Fan illustrated編集部
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時の流れは早いもので、「トヨタ・プリウス」の発売から、もう 21年にもなる。その間、実に多くの人たちが、このクルマを材料として議論してきたが、私の知る限り、まったく血が通っていないのが大半だ。たいていはカタログ・データをなぞって提灯を持つか、逆に知らない領域に迷い込んだあげく、ことさら違和感を強調するだけのものだったからだ。そこで私は、オーナーとして新車から正味10年・17万kmに及んだ体験を通じて、この歴史的「事件」車の素顔を紹介することにしよう。機構面で革命的であると同時に、ごく普通の小型セダンとして容易に扱えるばかりでなく、細かい部分まで常に改善の目を配っていたあたり、非常にトヨタ的なクルマだったというのが、プリウスの非凡さを表す平凡な結論だ。
TEXT:熊倉重春(KUMAKURA Shigeharu)

総平均燃費 16.45km/ℓ

 17万 kmをしめくくる総平均燃費は 16.45km/Lだった。初代プリウスのカタログ上の公式な 10・15モード燃費(当時)は 28km/ℓだったから、達成率 58.8%になる。普通はカタログ値の 65%程度になることが多いので、それに比べれば良くないように見える。しかし、 16.45km/ℓは常識破りの超低燃費だった。

 私なりの乗り方で長期間を過ごすと、1.5ℓ級のセダンなら12~13km/Lになる。その運転スタイルを根本的に変えて努力しても、15km/ℓを超えるのは非常に難しい。なのにプリウスは、何も工夫めいたこともせずに16.45km/ℓを記録したのだから凄い。

 この16.45km/ℓには、ほとんどあらゆる要素が含まれている。タイヤだって、1年の半分、11月から翌年4月はスタッドレスを履きっぱなしだった。近ごろはスタッドレスの進化も著しいが、それでもサマー・タイヤに対して7%ほど悪化する。それだけでなく、当時の私は飛ばしまくりだった。ネズミ取りにも何回かひっかかっって、「低公害車でこんなスピード出しちゃ、イカンねえ」とか説教を食らっていた。もう時効だから白状するが、長~い直線で180km/h出したこともあるし、峠の下りで生意気なポルシェ・ボクスターをやっつけたこともある。だから16.45km/ℓは、初代プリウスの最低実用燃費と言えるかもしれない。

5km/ℓ以下から40km/ℓ以上までのゲーム感覚

 もっとも、せっかくの半電半ガス車だから、そこを意識して走らせることも少なくなかった(常習的にカッ飛ばしていたわけじゃないという言い訳)。そこで楽しんだのが「オールグリーン作戦」だった。ダッシュ中央のモニター画面を切り替えると、5分間ごとの平均燃費をグリーンの棒グラフで表示することができる。1ページで1時間カバーできる。目盛りはゼロ~最大40km/L。道路環境(交通量や勾配など)に恵まれれば40km/ℓ以上を続けることも不可能ではないプリウスだけに、1時間続けると画面がグリーン一色になる。これは大変な達成感を伴うもので、私自身も1回だけ、深夜の東北縦貫道で経験できた。

 この5分刻みの燃費計を睨んでいると、いろいろなことがわかっておもしろい。極端な低燃費も痛快だが、その真逆も突きつけられたりする。プリウスを冷間始動すると、バッテリー残量が充分でも、ある程度の冷却水温になるまで、ほかの条件が整っても、エンジンは回り続ける。だから厳寒期の朝など、出かけてすぐ大渋滞にハマったりすると最悪だ。こういう状態では普通のクルマでも最悪に違いないが、プリウスの発電モードは普通のアイドリングより少し高回転なので、そのぶんガソリンを食う。グラフで見ると、2~3km/ℓまで落ちてしまうこともある。こういう細部に気配りしながらのプリウス・ドライビングには、けっこう凝ったゲーム感覚も伴うので、いくら乗っても飽きることがない。

二重三重に「いい子」のプリウス

初代プリウスに搭載されたTHS。エンジン出力とモーター出力を遊星歯車機構で動力分割するのが本システムの肝である。回生ブレーキという言葉も、プリウス登場で膾炙した。

 いや、いかん、ついつい燃費の話にばかりかまけてしまったが、実は驚くほどブレーキパッドが長持ちすることも報告しておかねばならない。けっしてブレーキを労るとは言えない私の運転なのに、な、な、なんと10年間、一度もパッドを交換しなかったのだ。それほど減らないということは、そのぶん世の中に摩耗粉を蒔きちらしていないことであり、ガソリンの燃焼に伴うCO2の排出が少ないことと、環境応援の二重唱ではないか。

 プリウスというか、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)には、ありがたい性格が具わっている。エンジンブレーキならぬモーターブレーキだ。普通の内燃機関自動車でもシフトダウンによる制動効果は得られるが、HVやEVではさらに顕著で、アクセルから足を放しただけでジワ~ッと減速感が伝わって来るし、ブレーキペダルを踏んでも、実際の停止の寸前まで液圧がローターにパッドを押しつけない。

 いくら私が飛ばし屋でも、プリウスに乗るからにはこの性質を意識せずにはいられない。だから、コーナーの進入ぎりぎりまで我慢したあげく突っ込んだりもしたけれど、はるか向こうの信号を読んで、早め早めに減速開始なんていうスタイルも多用した。その結果パッドが長持ちしたとも言える。

 どれぐらい長持ちしたかというと、実際のところはわからない。交換の機会がなかったからだ。そこで、パッドの厚みが交換推奨限度になるまで使ったと仮定して計算すると、なんと19万5000km! あのころの私の乗り方だと、短いと2万5000km、長くてもせいぜい5万 kmだったはずだから、とんでもない長寿命だったことになる。

 フロントのパッドはそれとして、リアのライニングを見ると、17万 kmも走ったのに実質新品で、ごく一部分だけではあるが、まだ当たりついていないところさえあった。

バッテリー交換 40分

初代プリウスが搭載した二次電池。ニッケル水素式が用いられていた。容量は6.5Ah。

 10万kmの時に定期点検に出したら、サービスマンが困ったように首をひねっている。聞いてみると、バッテリー・セルのうち1個だけ、わずかに規定電圧を下回っている。それを 40個ほどまとめたのがバッテリー・パックだ。わざわざ換えるほどの症状でもないが、初代プリウスのハイブリッド関連部分は永久保証なので、そっくり換えても無料ですという。それなら、私も交換作業の写真を撮りたいので頼むと言ったのだが、実際には話が簡単すぎた。

 さすがトヨタというべきか、サービス工場にクルマを持ち込んだのが昼ごろだったのに、翌朝には交換部品(再生品だったけど)が届いて、すぐ積み替えるという。後席のバックレストを外すとバッテリーが現れる。そこに電車の吊り革のようなものを取り付け、重いので二人がかりで車外に出す。あとはいくつかの補機類を移し替え、また二人でポンと載せれば 40分で終了。なんかドラマチックな光景を期待していただけに、拍子抜けするほどの簡単さだった。整備するにも、工場のスペースを一台が何時間占拠するかまで計算し尽くした、いかにもトヨタらしい出来事だった。

 一事が万事で、ドライブシャフト・ジョイントのラバーブーツが切れた時も(タイヤが跳ね飛ばした石が当たったらしい)、錆びた排気管を交換した時も、あれよあれよという間に作業終了だった。

なめたら、いかんぜよ

 ところで、「走り」に関して、誰もプリウスの肩を持たないのは納得できない。たしかに、テストコースやサーキットで計測すれば鈍足の代表で、「でもまあ、低公害車だから仕方ないよな」みたいに片付けられていた。

 しかし、全開の絶対値ならともかく、エンジンとモーターが程よく力を合わせる一般的な走行状態では、まったく侮るべからざるダッシュ力を示すのがプリウスだった。瞬間ごとに最適の減速比を提供する CVT機能を具えた動力分割機構と、モーターならではの鋭いレスポンスのため、踏むと同時にスパッと飛び出すのなんざ、得意中の大得意。プリウス・ユーザーがみんな燃費を気にしておとなしく走っているから、なめられていたにすぎない。

 ハンドリングも、実はたいしたものだった。軽すぎると酷評されたパワーステアリングやブレーキも、特性を呑み込んで適切に扱えば、けっこう GT的(ちょっと褒めすぎ)にドライバーに応えてくれた。少なくとも、私には応えてくれた。パワーステアリングは往年のアメリカ車のフニャフニャとは違って動きが正確だし、ブレーキが軽いと言っても、デュオサーボ・ドラムブレーキのようなパッコン型ではなく、それぞれなりに入力と結果が正比例していた。そもそもクルマの運転に腕力や度胸など求められるべきではないと私は思っているから、そういう意味では初代プリウスこそ理想に近かった。もし違和感があったとしても、それが次世代なのだと思っていた。だから代を重ねるごとにプリウスが並みの感覚を具えてきたのに対しては、膨大な努力の結果として称賛すると当時に、どこか逆行してしまった哀しさも覚える。

トヨタらしい綿密さ

 ああ、そうだ。どうしても付け加えておかなければならないことがある。プリウスが自動車として広く受け入れられた裏には、信じられないほど細かい気配りがある。それが最も強く感じられるのは、初代の中期にマイナーチェンジが行われた時のことだ。エンジンやモーターに改良を施し、燃費を向上させただけでなく、たとえばドアミラーの遠隔操作スイッチも、左右の切り替えを使いづらいスライド式からシーソー式に変更したし、ウィンドウウォッシャー液のタンクも増量した。大きなところでは、後席の背後に立ててあったバッテリーをトランクの床下に移し、後席を折り畳んでラゲッジスペースを拡大した。HVとしてのシステムも根本的に変更された。それまではバッテリーをケチケチ使う方式だったのに対し、今度は「宵越しの銭は持たねえ」とばかり、パッと稼いで一気に使う方式になったのだ。外観の見た目はほとんど変わらず、前後バンパーから黒いプラスチックの保護板が消えた程度の違いだったが、世間の数え方と違って、これが本当の2代目だったと、私は思っている(混乱を招くから、普段は言わないが)。

 うーむ、すっかり長くなってしまったが、初代プリウスに関して、語るべきことはまだまだ残っている。それも当然、長いこと誰もが思い込んでいた自動車と化石燃料(ガソリン、軽油、LPGなど)の固定関係に、正面切って電力を持ち込んだのがプリウスだったからだ。すでにHVがなかったわけではないし、EVなら自動車の歴史と同じほど古い。しかし、それをまともな実用車に仕立て、ちょっと高い程度で誰でも買えるようにしたのはプリウスが初めてだった。まさに、自動車史上に燦然と輝く巨大な記念碑と呼ぶべきではあるまいか。

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