三代目ポルシェ・カイエンの全グレードに試乗! 【初試乗】新型ポルシェ・カイエンは”地上の帝王”
- 2017/11/11
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MotorFan編集部
ポルシェ初のSUVとしてデビューしてから早くも今回で三代目。モデルチェンジ毎にヒットを飛ばし、そして世界中から高い評価を受けていたが、果たして新型は如何なる進化と乗り味になっているのだろうか? ギリシアのクレタ島からジャーナリストの藤原よしお氏がレポートする。
REPORT◎藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
最高速度286km/hは”ハッタリ”ではなさそうだ。
8月30日にシュトゥットガルトのポルシェ・ミュージアムでの発表会に立ち会ってから2ヶ月。ついに新型ポルシェ・カイエンに試乗することができた。試乗の舞台となったのは、ギリシア本土から南に下った地中海に浮かぶクレタ島。そこでスタンダードのカイエン、カイエンS、カイエン・ターボと、現在発表されている全てのモデルのステアリングを握ることができた。
まず試乗したのはカイエン・ターボ。パナメーラ・ターボとルーツを共にする550psの4ℓ V8ツインターボを搭載する現時点でのトップモデルだ。試乗車は今回のトピックのひとつであるリヤアクスルステアのほか、PDCC、PCCB、PTV Plus、スポールクロノパッケージなどのオプションをフル装備した仕様だった。
ポルシェが発表会や、その後のワークショップのプレゼンテーションなどでしきりに「ドライビング・ダイナミクスと快適性の改善」を強調してきたように、新型カイエンで度肝を抜かれるのは「かろやか」で「がっちり」として「しなやか」な走りだ。
スペック上では3代目カイエン・ターボの重量は、先代に比べ10kgしか軽くなっていないのだが、最初の転がり出しから軽く感じる。そう感じさせる要因のひとつが、1960rpmから770Nmという最大トルクを発生するフレキシブルな4ℓV8ツインターボと、新たに採用されたZF製の8速トルコンATだ。PDKを使わない理由を「オフロード走行を行ったり、トレーラーを牽引するなどの使用用途を考えると、1100Nmものトルクにまで耐えられるトルコンATが有効」とエンジニア氏が教えてくれたが、V8ターボのパワーとトルクを滑らかに伝達してくれる8速ATのマナーは、上質なサルーンのごとく、実に見事なものだった。
それでいて、いざアクセラレーターに力を込めると、2175kgという質量を忘れさせるほどの圧倒的な加速を見せる。その際にも8速ATは黒子に徹して、スムーズかつ素早くスピードを乗せていってくれる。もちろん実際に試すことはできなかったが、286km/hという最高速度は“ハッタリ”ではなさそうな雰囲気だ。
ワインディングでもダイレクトで軽快。
そんな新型カイエンの真価はワインディングで発揮される。ステアリングのロータリーダイヤルで走行モードを“スポーツプラス”にし、思い切って走らせてみてもカイエン・ターボはロールもせず、タイヤが滑るどころかスキール音さえ上げずに次々とコーナーをクリアしていく。もちろん、そうした挙動を実現できるのは、オプションの電子制御式ロール抑制システムであるPDCCだけではなく、PTV Plus、前後マルチリンクのサスペンション、前285/40ZR21、後315/35ZR21のミックスタイヤ、3チャンバーのエアサスペンション、そしてリヤアクスルステアといったすべての要素が噛み合ってもたらされるものなのだろう。2175kgという巨体を振り回しているとは思えないほどダイレクトで軽快なのである。
それでいながらノーマルモードで走っている限りには、まるでパナメーラのように乗り心地がよく静かなのだから、まったくもって不満の出る余地がない。しかもリヤのレッグスペースはマカンより遥かに広く、パナメーラより頭上の空間に余裕があるので“全天候型サルーン”としても十分に使うことができるはずだ。
一方ブレーキに関しては、低速域でのソフトタッチからハードブレーキングまで、あらゆる状況でも最適な制動力を提供してくれるPCCBとは別に、新型カイエンの新基軸のひとつである、曙ブレーキとの共同開発による鋳鉄製のブレーキディスクにタングステンカーバイト層をレーザー照射でコーティングしたことで高い制動力と高い耐磨耗性を実現したポルシェ・サーフェス・コーテッド・ブレーキ(PSCB)装着車(ターボでは標準装備)にも試乗することができた。
気になるその出来栄えだが、ハードブレーキングでこそ、さすがにPCCBの剛性感と制動力には及ばないものの、タッチ、制動力、コントロール性ともにノーマル・ブレーキ以上。また、かなり走り込んだあとでホイールに触れてみたのだが、まったく指先にブレーキダストが付かなかったことも合わせてご報告しておきたい。
リヤアクスルステアの効果はオフロードでも絶大。
そしてもうひとつ忘れてはならないのが、カイエンの本懐というべきオフロードの走破性である。実は試乗の途中で道を間違えて、“ケモノ道”のように狭く急な勾配の農道に紛れ込んでしまったのだが、とっさのことでオフロードモードに切り替えるのを忘れてノーマルモードのまま走っても、ガレ場のような不安定な路面にもかかわらず、グイグイと急な坂道を登っていってしまうのには驚いた。その後、改めて用意されたオフロードコースをオフロードモードに設定して走る機会もあったのだが、そこでの走りっぷりが何の不安も感じさせない素晴らしいものであったことは、改めて言うまでもないだろう。
そんな状況下で個人的に感動したのが、思わず尻込みしてしまうようなタイトな曲がり角でも想像以上の小回りをみせるリヤアクスルステアの存在だ。カタログ上では12.1mから11.5mに回転半径が小さくなったと謳われているが、実感ではそれ以上の効果に感じられた。もちろん高速走行時の直進性にも大きく寄与しおり、カイエンをオーダーするのならマストで選ぶべきオプション装備であると強く言っておきたい。
バランスの良さが際立つスタンダードモデルとカイエンS
このように“地上の帝王”というべき完璧な振る舞いをみせてくれたカイエン・ターボだが、悩ましいのは同時に試乗した440psを発揮する2.9ℓ V6ツインターボを搭載するカイエンSも、340psの3ℓ V6シングルターボを搭載するカイエンも甲乙つけがたい出来に仕上がっていたことだ。
今回はどれもターボと同様のフルオプション状態だったため、オンロードでのハンドリングやオフロードでの走破性はターボと遜色なし。でもさすがにパワー&トルクの差は隠しきれないだろうと思いきや、カイエンSで65kg、カイエンで55kgというダイエットの効果もあって、バランスという意味では決して侮れない走りをみせるのだ。
特にスタンダードのカイエンは340psというパワーもあり、あまり期待していなかったのだが、高速でもワインディングでも「遅い」と感じたことは一度もなかった。むしろ扱いやすい手頃なパワーと車重が2トンを切る軽快さで、ターボよりも気持ち良くリズミカルに走れたほどだ。
というわけで、3代目カイエンは50万台というセールスを記録した2代目の跡を継ぐにふさわしい、高い完成度とクオリティをもつスーパープレミアムSUVに仕上がっていた。
SPECIFICATIONS
ポルシェ・カイエン・ターボ
■ボディサイズ:全長4926×全幅1983×全高1673㎜ ホイールベース:2895㎜ ■車両重量:2175㎏ ■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 総排気量:3996cc ボア×ストローク:86×86㎜ 圧縮比:10.1 最高出力:404kW(550ps)/5750〜6000rpm 最大トルク:770Nm/1960〜4500rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:4WD ■サスペンション形式:F&Rマルチリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F285/40ZR21(9.5J) R315/35ZR21(11J) ■パフォーマンス 最高速度:286km/h 0→100km/h加速:3.9秒(スポーツ・プラスモード時) ■環境性能(EU複合) CO2排出量:272〜267g/km 燃料消費量:11.9〜11.7ℓ/100km ■車両本体価格:1855万円(税込)
SPECIFICATIONS
ポルシェ・カイエンS〈カイエン〉
■ボディサイズ:全長4918×全幅1983×全高1696㎜ ホイールベース:2895㎜ ■車両重量:2020〈1985〉㎏ ■エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ〈V型6気筒DOHCターボ〉 総排気量:2894〈2995〉cc 圧縮比:10.5〈11.2〉 最高出力:324kW(440ps)/5700〜6600rpm〈250kW(340ps)/5300〜6400rpm〉 最大トルク:550Nm/1800〜5500rpm〈450Nm/1340〜5300rpm〉 ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:4WD ■サスペンション形式:F&Rマルチリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F255/55ZR19(8.5J) R275/50ZR19(9.5J) ■パフォーマンス 最高速度:265〈245〉km/h 0→100km/h加速:4.9〈5.9〉秒(スポーツ・プラスモード時) ■環境性能(EU複合) CO2排出量:213〜209〈209〜205〉g/km 燃料消費量:9.4〜9.2〈9.2〜9.0〉ℓ/100km ■車両本体価格:1288〈976〉万円
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