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連載コラム「酷道を奔り、険道を往く」Vol.8 酷道を知りたければ299を走れ!『酷道にして王道──国道299号線(酷道険道:埼玉県/長野県)』VWザ・ビートル

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魅惑の焼肉センター

 まぁとにかく狭いこと狭いこと。こんな道が長野県まで続くのかと思うと気が重くなる。さらにコンパクトと思って選んだフォルクスワーゲン・ザ・ビートルの全幅が1.8mを超えていることに今さらながら気づき、対向車が来たらどうしようかと不安になる。

 だが、その対向車が来ない。急に来ることもあるので油断は禁物だが、滅多にすれ違わないので狭さのわりにはストレスなく走れる。県境の志賀坂トンネルを越え、群馬県に入っても相変わらず道はクネクネだが、対向車は来ない。

 これなら酷道ビギナーにもオススメできそうだが、あまりに対向車に会わないと今度は孤独感が鎌首をもたげ始め、何かあっても誰も助けてくれないのではという不安に陥るのは酷道険道ならではの現象だ。

 だが、国道462号線と交わる神流町で、その孤独感も小休止だ。センターラインが現れ、対向車もちらほら姿を見せるようになる。そして左手に道の駅上野を発見すると、安堵感はクライマックスに達する。道の駅=食事にありつける、ということである。

 厳しい大自然の中に放り出されると、人間の行動は本能に支配される。その結果の安堵感であるが、同時にその本能はこうも言う。食えるときに食っておけ、と。当たり前だ。ここを逃したらいつ食事にありつけるかわかったものではない。それに、この道の駅のレストランはなかなかの味である。

 だが、もしもあなたがこの時点で猛烈な空腹に襲われていたら、あるいは大食漢だったら、もう少し待ってほしい。さらに5分ほど走った先に、農協が営む、その名も「焼肉センター」というすばらしい食事処があるのだ。実は何年か前の自分は道の駅で昼食をとったのだが、その直後に焼肉センターを発見し、次は必ずここで食べるぞと誓ったのだ。機は熟した。


 そんなわけで道の駅はスルーである。駐車場の出口にケータハム・スーパーセブンの鼻先が見えた。たぶんこのドライバーも本能に従って道の駅で食事をとったのだろう。ミラーを見ると、我々と同じ方向に曲がってくる。彼もまた酷道を楽しんでいるのか。

 そして焼肉センターに到着する。軽い足取りでザ・ビートルから降りるHカメラマンと筆者。すると先ほどのスーパーセブン氏が店の前で速度を落とし、焼肉センターの看板をまじまじと見つめている。まるでかつての自分を見ているかのようだ。おそらく彼も次回は焼肉センターまで我慢するはずだ。

 焼肉センターでいただけるのは、上野村の名物である猪豚料理だ。ふたりともトリプル定食を注文する。バラ、ロース、ホルモンがテンコ盛りで、ご飯は最初から大盛りだ。ちなみに下の写真は一人前である。

 よく見てほしいが、野菜はししとう一本しかない。男のメニューだ。さらに痛快なのは、こうした焼肉専門店でも、たいてい昼食セットは焼き上がった定食の形態で出てくることが多いが、この店は昼間っから客が自分で焼いて食べるのである。なんという幸せか。

 不思議なことに、あれだけ対向車を見かけなかったのに、ここにはけっこう客がいる。営業マンっぽい男、業務用冷蔵庫かなんかのメンテナンス担当者らしき男、作業着を着たガテン系の男......ようするに男しかおらず、我々以外はみんなおひとり様である。

 真っ昼間から強面の男たちが黙々と肉を焼き、喰らう食堂......。新橋の居酒屋だって、ここまで男臭くはない。ふと、映画スターウォーズのモスアイズリー空港の酒場を思い浮かべた。

随所に立ちはだかる「道路幅員狭小」の看板。思わず身構えてしまう人も多いだろうが、大型トラックや観光バスが通らないということは、それはそれでドライブルートとしての魅力にもなり得るのだ。
神流町の交差点を左折し、道の駅上野を過ぎて5分ほど走ると、名物の猪豚料理が堪能できる上野村農協直営の焼肉センターが見えてくる。写真はバラ、ロース、ホルモンが揃ったトリプル焼き肉定食だ。

大賑わい(?)の十石峠

群馬県と長野県の県境に位置する十石峠は、国道299号線のハイライトのひとつだ。標高は1351mで、普通車10台分ほどの駐車場と展望台がある。展望台からは北側に広がる妙義荒船佐久高原国定公園の風景を眺められる。
 ここから国道299号線はいよいよ険しさと狭隘さを増す。サイドウインドウに迫り来る岩壁、年季の入った石造りの橋、アスファルトの裂け目から生える、クルマの最低地上高よりも高く伸びた雑草など、酷道らしさは頂点に達する。そして焼肉センターから40分ほどで十石峠に到着する。

 十石峠は群馬県と長野県の県境に位置し、標高は1351mで、立派な展望塔からは北側に広がる妙義荒船佐久高原の眺望が楽しめる。驚いたのは、10台分ほどの駐車場に6台のクルマと2台のバイクが駐まっていたことだ。

 それまでほとんど他車を見かけなかったのに、いったいどこからやってきたのか? 観察してみると、そのほとんどが東京や埼玉のナンバーである。そしてみんな一様に、我々と同じように長野県側に向けて駐車場を出ていく。そして群馬県側から別のクルマがやってきて、駐車場に入っていく。

 このことから推測できることは、十石峠を通過するドライバーの多くはドライブそのものが目的であること。平日でもこんな感じなのだから、おそらく的外れではないだろう。そして群馬方面から長野方面に行く人ばかりなのは、そのほうが見慣れた都市部から情緒に溢れる山間部に向かっていくので気分が盛り上がるからではないだろうか。

 一方で長野側に住んでいる人は、そもそもこんな酷道に情緒を感じないのかも知れない。仕事で群馬や埼玉方面に用事がある人は、目的地が上野村や神流町でない限り、多少遠回りになっても上信越道や国道254号線を使う方が楽で速いということだ。

 と、対向車となかなかすれ違わないのに十石峠にはクルマがたくさん駐まっていた理由を分析するという、何の得にもならないことに考えを巡らしつつ、峠道を下っていく。

 しばらくはタイトでツイスティなクネクネ道が続くが、群馬県側よりも景色が開ける場面が多く、十石峠を越えた安堵感も相まって、心なしかリラックスした気分になってきた。ほどなくしてセンターラインが現れ、酷道としての国道299号線は終焉を迎える。

十石峠にある展望台からの眺め。
十石峠を越えれば、ここからは長野県だ。

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