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国会での審議が先送りされているのはなぜ? 青切符じゃ済まなくなる「携帯電話等運転中使用禁止条項(ながらスマホ)」罰則強化法案の前途多難な行方、とは?【交通取締情報】

  • 2018/09/28
  • 「東新宿交通取締情報局」
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※写真はイメージです。

今年の1月、通常国会(第196回)に提出され審議されると言われた、いわゆる「ながらスマホ」罰則強化法案。可決され、施行されれば「交通反則通告制度」(反則金制度)の対象から外され、捕まると赤切符を切られることもあるという大変な事態になるわけだが、何故か、国会で審議されたという話すら聞かない。法案自体、提出された気配もないのだ。一体、どうなっちゃたの?

厳罰化は、実はもろ刃の剣、なのだ!

まずは、現行法の概略をおさらいしておこう。運転中の携帯電話他の使用を規制する法律は、道路交通法71条にこう定められている。

道路交通法71条5-5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百二十条第一項第十一号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。第百二十条第一項第十一号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百二十条第一項第十一号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

警察庁もホームページで危険をアピール。
 罰則の方は、というと、まず、携帯電話他の使用により事故を起こした場合は、「3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」、あるいは6,000~12,000円の反則金及び基礎点数2点。保持や注視のみで検挙された場合は「5万円以下の罰金」、あるいは5000~7,000円の反則金及び基礎点数1点となっている。速度違反の反則金が6,000円~40,000円(基礎点数1~3点)だから、スピード違反に比べればかなり軽めの処分と言えるだろう。

が、年間の取り締まり件数が100万件を超え、事故死につながるケースも多発している今、世論では厳罰化の機運が高まっている。事実、昨年、内閣府政府広報室が実施した世論調査でも、50%以上の人が、厳罰化や違反点数の引き上げなど、ペナルティの強化を望んでいるという結果が出ている。警察も罰則強化の方向へ踏み出さざるを得ない状況だ。

  ちなみに、産経新聞によれば、その改正法案では、違反点数に関しては不明だが、罰則を「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」、「6月以下の懲役または10万円以下の罰金」にそれぞれ引き上げ、さらに、危険を生じさせたケースでは反則金制度の適用外となり、否が応でも相応の罰金を払わなければならなくなるということだ。 いままでは青切符を切られ反則金を支払えば済んでいたものが、前科となる罰金刑に処せられることになる。

 確かに、運転しながらスマホやカーナビゲーションを注視する、あるいは操作するというのは危険な行為であり、ひいては重大な事故につながる可能性があるということは間違いない。厳罰化はある意味、必要な措置といえるかもしれない。

 ただし、では、現状で、「ながらスマホ」で死傷事故を起こしたドライバーは、人身、物損に対する損害賠償は別として、行政処分上は反則金+基礎点数2点で済んでいるのか、というと、決してそんなことはない。何が理由だろうが警察は死傷事故には「過失運転致死傷罪」を適用し、厳罰を科しているからだ。こちらは懲役7年以下、罰金100万円と、「ながらスマホ」に比べて断然、重い。そういう意味ではこの罰則強化法案は、現実に即した法案とは言えないのではないだろうか。どちらかというと死傷につながる事故を未然に防ぐために「保持」の方の罰則を強化したほうが効果が高いのかもしれない。

 また、罰則強化というのは、司法当局の業務煩雑化にもつながるもの。お役人が煩雑化を避けるために反則金制度が生みだされたのはいまさら言うまでもないだろう。さらに、「交通反則通告制度」(反則金制度)の適用外になる、という点は、警察にとってあまりうれしくない話だ。なにしろ、従来の取り締まりによりドライバーが払った反則金=総務省経由で警察に入ってくる「交通安全対策特別交付金」が目減りしてしまう。逆に、反則金をアップさせた方が、すべては丸く収まるという意見もあるくらいだ。

 というように、いろいろと問題含みの「ながらスマホ」罰則強化法案。国会での審議が先送りされている理由は、そんなところにあるのかもしれないが、こうしている内に、心無い「ながらスマホ」という行為の犠牲者は増えるばかり。一刻も早く、取り締まりの原点に回帰した適切な施策を講じてほしい。

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