「レーダーセーフティパッケージ」の洗練されたアシスト制御は隔世の感 新型ベンツ・Aクラス試乗!内外装のプレミア感とシャシー・ボディのポテンシャルも劇的アップ
- 2018/11/09
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遠藤正賢
10月18日に日本導入が発表された新型メルセデス・ベンツAクラス。12月以降の販売開始を前にいち早く、日本の市街地や高速道路で試乗する機会に恵まれた。なお、今回の試乗車は正式発売前にナンバーを取得した並行輸入モデル、プロトタイプという位置付けになるため、今後全方位的にアップデートされたものが日本仕様として導入される予定だ。本来の日本仕様とは細部が異なる可能性があることをご了承いただきたい。グレードは上級モデルの「A180スタイル」だ。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●モーターファン、遠藤正賢、メルセデス・ベンツ日本
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現行3代目CLSよりスタートしたメルセデス・ベンツの新たなデザイン言語「Sensual purity」を採用する新型Aクラスの実車を見て、最初に頭に浮かんだ単語は「洗練」だった。先代からのスポーティかつグラマラスなプロポーションを継承しつつ、切れ長の前後ランプをはじめとして個々の要素が主張しすぎず車両全体との調和が図られたことで、これまで以上にプレミアムブランドのコンパクトカーに相応しいデザインになったと言えよう。
また、ドアを開け閉めした際の操作感やサウンドに、先代で見られた悪い意味での軽さは皆無。多くのユーザーがドイツ車に期待する重厚感が備わったことも、細かい点ではあるが朗報だ。
だが、室内に乗り込むと、エクステリアとは真逆の印象を与えられる。個々の部品の質感は確実に向上しているがデザイン要素としての主張が強すぎる。しかも今回の車両にはオプションの10.25インチワイドディスプレイや、クラシックレッド/ブラック本革に64色アンビエントライト、アルミニウムインテリアトリムをセットにした「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」が装着されていたため、より一層アクの強い、乗る人を選ぶコーディネートになっていた。
ただし各部のインターフェイスは、ワイパーレバーと間違えそうなコラムシフトレバーと、メルセデス伝統のドアトリムに備わるシート調整スイッチさえ理解できれば慣れるのは容易。ナビやオーディオはスマートフォン的な操作ロジックのタッチインターフェイスとなり、予防安全装備のスイッチはステアリングの右側スポークに収められたことで、同様のシステムを他車で操作したことがあれば説明書なしでブラインドタッチできるようになっている。
新型Aクラスには自然言語認識機能が実装された新開発の対話型インフォテインメントシステム「MBUX」(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)がオプション設定されており、「暑い」と言えばエアコンの設定温度を下げ、「新宿まで急いで行きたい」と言えば新宿までの最速ルートを設定するなど、定型の言葉を使わずともエアコンやナビ・オーディオ・電話などの音声操作が可能となっている。だが、このシステムが認識できないほど声や方言、訛りのクセが強い人でも問題なく各機能を操作できるよう、新型Aクラスの操作ロジックは進化していた。
なお新型では、全長×全幅×全高が120×16×6mm拡大され4419×1796×1440mm、ホイールベースが30mm延長され2729mmに。室内のショルダールームは前席9mm/後席22mm、エルボールームは前席35mm/後席36mm、ヘッドルームは前席7mm/後席8mm拡大されている。
だが肝心の後席レッグルームが、前席をどれほど高く調節しても足先をきちんと伸ばせないほど狭く、身長176cm・座高90cmの筆者ではどう頑張っても膝裏どころか太股全体が座面から浮いてしまう。シートサイズに不足はなく、ヘッドクリアランスも10cm以上確保されているだけに、非常に惜しいと言わざるを得ない。
一方で荷室容積は29ℓ大きい370ℓとなり、フロア長は11.5cm、バックドア開口部は20cm拡大している。後席使用時でもフラットかつスクエアで、40:20:40分割可倒式の後席を倒せば若干傾斜はあるものの段差は極めて少ないため、見た目に反して荷物の積載性は高い。
さて、いよいよ試乗の時が来た。今回はモーターファン編集部のある東新宿から市街地を抜け、首都高速道路4号新宿線外苑ICからC1都心環状線外回り、1号横羽線、神奈川5号大黒線を通り、大黒PAでUターン。湾岸線東行きから11号台場線、C1外回り、4号新宿ICを通り三栄書房へ戻るルートを走行した。
地下駐車場内でスタートボタンを押しエンジンを始動しても、アイドリング時は低音がやや耳につく程度で、車内は至って静か。発進してもその傾向は何ら変わらず、サスペンションが路面の凹凸をしなやかにいなしながら、交差点を曲がってもロールの気配すら感じさせず粛々と走り続ける……ただし、キレイな路面をゆっくりと走っている間は。
粗粒路に一歩足を踏み入れると、それまでの圧倒的な静けさは一変。低速域でもロードノイズが急激に増大し、非常に耳障りな印象を室内の住人に与えてしまう。だがこの状態で、会話を想定して普通に声を出してみると、意外にもその声は良路走行中と変わらず車内に響き通るため、絶対的な音量は大きくないことが分かる。
新型Aクラスの開発にあたっては空力、ボディ、シャシー、パワートレインのあらゆる方面からNVHの低減に取り組んだとダイムラーは主張しているが、エンジン音もアイドリングにほど近い1500rpm以下の時に耳につきやすいことも考慮すると、低音域のみ極端に対策が抜け落ちているのではという疑念を拭えない。今後正式な日本仕様が導入されるまでの進化を考えるうえで、喫緊の課題はまず低音域のノイズ対策ということになりそうだ。
日本仕様に設定されるパワートレインは、高さは増すものの幅と重量を大幅に削減できるデルタ型シリンダーヘッドを採用したM282型1.3ℓ直4ガソリンターボエンジンと7速DCTの組み合わせのみとなっているが、1440kgの車重に対し絶対的に不足している排気量を、高めの過給圧と素早い変速、7速がクロスしたギヤレシオで辛うじてカバーしているのが、特に上り坂や高速道路での再加速時に伝わってくる。
このような状況でアクセルペダルを踏み込むと、低回転域に明確なターボラグが存在するためそこからは加速できず、たまらずに7速DCTはシフトダウン。そしてエンジン回転が高まると急激にブーストが立ち上がり、視覚で認識できるほどの深いスクウォートを伴って猛然と加速していく。「“ベンツ”らしい」と言えばそれまでだが、お世辞にも上品で扱いやすい性格の持ち主とは言えないだろう。
首都高に入ると、市街地と変わらず細かな凹凸をしなやかにいなしながら、“高速道路”の名にあるまじきタイトターンの数々も、やや軽すぎるきらいのあるステアリングの操作に対し俊敏に反応し、わずかなロールを伴いながら軽快にクリアしていく。ただし継ぎ目などの大きな凹凸ではサスペンションがすぐに底付きし、強烈なハーシュネスを乗員に見舞う。また、各部のマウント・ブッシュ類が柔らかいのか、速度を上げれば上げるほど路面の凹凸に対し車体が前後上下左右に揺すられやすくなる傾向が見られた。
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