Cセグメント上級セダンとしてのコンセプトがライバル車との比較によって浮き彫りになる! ホンダ・インサイトをプリウス、リーフ、パサートと同時試乗! 【ライバル比較インプレッション】
- 2019/03/31
- ニューモデル速報
群雄割拠のCセグメントに独自の個性で対峙する
ソフトパッドやステッチ入りレザーパッドを多用した新型インサイトの内装調度の質感は、さらに精緻な金属加飾部品を使うパサートには及ばない部分もあるものの、大半の人はプリウスよりは高級に感じるだろう。また、やけに立派なセンターコンソールも、FF車らしい空間効率をスポイルしてはいるが、新型インサイトの場合はこの下に12Vバッテリーがあるのでただの飾りではないし、FR車を思わせる高級感を醸し出す一助になっているのも事実だ。
インサイトも含めた国産3台はホイールベースも共通なので後席空間には大差ない。インサイトは全高が明らかに低いスポーツクーペ風デザインだが、低床設計がそれをうまくカバーしており、ヘッドルームもプリウスやリーフに大きく負けることはなく、しかもシートのつくりも2台より立派である。そんな3台を横目に、サイズがひとまわり大きい上に今回唯一の非電動化パワートレーンとなるパサートがスペース面で一頭地抜くのは当然である。しかし、そのボディサイズ差以上に明確なパサートの広さを見せつけられると、やはり「電動車のパッケージは大変だなあ」と改めて思い知る。
ボディサイズやパワートレーン技術といった客観的事実で、新型インサイトと正面から対峙するのはプリウスである。しかし、Cセグメントど真ん中より上級感を漂わせるプリウスと比較しても、内外装の仕立て品質と質感、乗り心地、走行姿勢のフラットネス、快適性……といったほぼすべての面で、新型インサイトはさらに高級なクルマと感じさせる。
新型インサイトで特に印象的なのは静粛性だ。まあ、今回の4台で最も静かなのが内燃機関を持たないリーフであり、最も賑やかなのがディーゼルのパサートTDIなのは言うまでもない。パサートTDIの2.0ℓディーゼルターボは日本仕様ではトゥーランやティグアンが積むものと基本的に共通ながら、それらより明らかにパワフルなチューンで、それゆえにパサートTDIは数ある最新ディーゼル乗用車の中でもディーゼル感がかなり高い。
それはともかく、新型インサイトは同じガソリンハイブリッドのプリウスより明らかに静かである。プリウスも単独ではとても静かで滑らかなのだが、同じ条件下で新型インサイトに乗った後だと、エンジンのオンオフや駆動の出入りの瞬間がやけに気になってしまうのだ。
新型インサイトはそんな静粛性に加えて、純EVのリーフに次ぐ強力な加速ピックアップが体感的にはプリウスよりも力強い。さらに加速・減速ともに右足のわずかな動きにきっちり追従するリニアリティともども、この1.5ℓi-MMDには美点が多い。リーフ自慢のe-ペダルほど大袈裟な設定ではないものの、右足ひとつで速度を合わせやすい以心伝心感はなかなかのものだ。「静粛性とリニアリティには徹底的にこだわりました。自信作です」との新型インサイト開発陣の言葉にウソはない。
ただ、新型インサイトのエネルギー源はあくまで1.5ℓガソリンなので、バッテリーを使い切ってしまう高負荷走行や長い登り勾配では、一転して1.8ℓのプリウスにじわじわと引き離されていくし、高速道追い越し加速や全開域での伸びでは、当たり前だがパサートTDIには敵わない。しかし、この立派なボディを1.5ℓでこれだけ力強く上品に走らせる動力性能は、必要にして十分……のさらに上をいく。
ホンダのシャシーというと、ハリのあるスポーティ仕立てを売りにすることが多いが、新型インサイトはその限りではない。今回の4台では、路面からの肌触りは新型インサイトが最も柔らかく、ストローク感もたっぷり。路面の凹凸をゆったりと吸収していく高速クルーズでの挙動など、いい意味でひと昔前のフランス車を想起するほどである。それでいて実際にはボディはほとんど上下せず、ロール剛性が高く旋回時も水平姿勢を保ち、ステアリングの利きは強力かつ正確……なところはホンダテイストというか、いかにも最新設計らしいところだ。
シビックにも使われる新型インサイトの骨格はアコードクラスまで想定したプラットフォームだそうだから、設計思想としてはプリウスのTNGA-Cより、パサートのMQBの方に近そうだ。トヨタではDセグメント用プラットフォームとして別のTNGA-Kを用意するが、フォルクスワーゲンのMQBはBからDまで幅広いセグメントに適用される骨格モジュールである。
実際、新型インサイトに乗ると、動力性能にしてもボディサイズにしても「まだまだ……」の余裕感が漂っている。路面に吸いつくような低重心感ではEVのリーフにも大きく劣らず、剛性感や重厚感ではプリウスより上級感を醸し出す。絶対的な重厚感ではパサートには一歩譲るものの、ストローク感を生かした乗り心地は新型インサイトの方が快適で、パサートとはクラス違いのCセグメント本来の軽快感を、ドライバーズカーとしては美点と捉える向きも少なくないはずである。
TOYOTA PRIUS
熟成極まるトヨタ独自ハイブリッドシステムのTHS-Ⅱは、独自技術に磨きが掛けられ、良好な燃費と洗練された走りを250万円台という価格から享受できるのも魅力。少々先を行き過ぎた感のあったエクステリアデザインは、2018年12月のマイナーチェンジによるフェイスリフトで親しみやすさを増した(写真は改良前)。
■TOYOTA PRIUS A“Touring Selection”(FF)
直列4気筒DOHC/1797㏄
エンジン最高出力:98㎰/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5㎏m/3600rpm
モーター最高出力:72㎰
モーター最大トルク:16.6㎏m
JC08モード燃費:37.2㎞/ℓ
車両本体価格:292万6800円
NISSAN LEAF
エンジンを搭載しないリーフは、当然ながらエンジンに起因するネガ要素を持たず、静粛性や俊敏な高トルクなどモーター駆動の良さを体感できる。逆に問題視される航続距離も、システムの仕様の向上によりJC08モードで400㎞へと延長された。アクセルペダルのみで減速、停止も行なえるe-pedal機能も先進的。
NISSAN LEAF G
モーター定格出力/85kW
モーター最高出力:150㎰/3283-9795rpm
モーター最大トルク:32.6㎏m/0-3283rpm
JC08モード燃費:400㎞(充電走行距離)
車両本体価格:399万600円
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