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4コントロールがもたらす冷静と情熱の走り 〈試乗記:ルノー・メガーヌGT〉終始安定、しかし至極俊敏

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凄まじく高いボディ剛性が走りに如実に表れる

4コントロールの利点を実感してしまうと、もはやそれ以前の時代には戻れなくなる

 メガーヌGTの運転席に座って、走り出して最初に気づくのは、前席の肩口まわりがずいぶんと広々としたこととGT専用のスポーツシートのデキが素晴らしいこと、そして車内が印象的なほど静かなことだ。

 ルノーのスポーツシートが優秀なのはいつものことで、新型メガーヌGTも、拘束しすぎず肌触りも柔らかなのに、運転中は身体がピタリ安定……という絶妙な仕上がりだ。

 リクライニング角度がレバーによる段階調整になったのは賛否両論かもしれない。調整ステップは細かく刻まれるし、ワンタッチでシートを寝かせられる点を歓迎する向きもあろうが、微妙なリーチにもこだわる運転オタク目線で見ると、少しばかり残念な気もするのは事実である。

4コントロールはリヤホイールを60㎞/h以下では最大2.7°の逆位相として回頭性を、60㎞/h以上では最大1°の同位相として安定性を高める機構だ。スポーツモード時には切り替えポイントが80㎞/hとなり、かなりアグレッシブな特性に変貌する。

 前席ショルダールームの拡大と静粛性の向上は、新型メガーヌの開発で明確な目標とされたポイントらしい。静粛対策はフロント遮音ウインドウの全車標準化、その他のガラスの板厚アップ、ドアシールの全周化……と意外性のない正攻法だが、それゆえに効果も大きい。とくに高速ロードノイズの減少はあからさまで、それだけでクルマ全体の高級感が飛躍的に上がっている。

 ルノーによると、この静粛性にはボディ剛性の向上による効果も大きいというが、そのボディ剛性は走っても如実に感じ取れる。

 新型メガーヌGTのフットワークは、場合によってはゴルフGTIやプジョー308GTiあたりより硬質で、ロールもピッチングもほとんど感じ取れないほどビタッと水平姿勢を保つ。荒れた路面では時おり硬質すぎる感もなくはないが、それでもボディだけはビクリともミシリともしない。

 さらに、上屋の姿勢がほとんど変化しないのに、バネ下の動きは滑らかで、ササクレだった衝撃が皆無なのも、高精度なダンパーに加えて、ボディがいいのだろう。

最高出力205㎰と最大トルク280Nmを発生する直列4気筒1.6ℓターボ。ルーテシアR.S.と同じユニット(チューン違いによってスペックは異なる)ということもあって吹け上がりはかなり鋭く、メガーヌという車格から大人しい特性を想像していると、いい意味で裏切られる。

 しかし、新型メガーヌの走りにおいて、エンスージアスト最大の注目は、やはり「4コントロール」と名づけられた四輪操舵システムだろう。4コントロールは、一見すると操舵機構を組み込むのが困難そうなリヤのトーションビームをそのまま使いながら、逆位相と同位相を使いこなす本格的な後輪操舵なのが特徴だ。

 4コントロールは日本では今回が初である。また、RSを含む従来のルノーのスポーツ車の美点を「伝統的なアナログシャシー技術の究極的な洗練」と定義すると、今回のGTと四輪操舵の取り合わせに違和感を覚える向きもあるかもしれない。

 ただ、4コントロールはすでにリアルな市場で約10年も揉まれてきた技術であり、新型メガーヌの4コントロールは「満を持して」の投入ともいえる。しかも、このシステムの設計・開発を担当したのは、何を隠そうルノー・スポールである。先日公表された次期メガーヌRSともども、4コントロールは「ルノー・スポールが開発したGTが使わずにどうする?」というべき存在なのだ。

 4コントロールの詳細は別項に譲るが、それはスポーツ、ニュートラル、コンフォートのすべての走行モードで稼働して、多様なパラメーターを1/100秒ごとに演算しながら後輪舵角を制御する。

 これによって、4コントロール非装備のメガーヌ(たとえば、国内エントリーグレードのGTライン)と比較すると、実際の操舵量はスポーツモードで40%、それ以外のモードでは35%も減少するという。資料によると、スポーツモードで80㎞/h、それ以外で60㎞/hの車速を境に、低速側は逆位相で小回り性能とキビキビ感を演出、高速側は同位相でタビリティの安定性を引き上げる。

 低速(=逆位相)で走る新型メガーヌGTのステアリングは、まさに超強力かつビンビンに効く。なるほほど舵角は大幅に減少しており、交差点も手首の返し(のプラスアルファ程度)でグイッと曲がりきる。

 その姿勢変化極小のレーシングカート的俊敏さは、少なくともルノーでは初体験に近い。それにしても、このステアリングとボディの剛結感には、四輪操舵だけでなく、大幅に向上したボディ剛性やゴムブッシュを排したサブフレームの相乗効果もあると思われる。さらに、ステアリングの切り始めから敏感なだけでなく、そこから切り増すと、さらにクルリと曲がりこもうとするのは、逆位相特有の挙動だろう。

F1も開催されていたフランス中部のサーキット「マニクール」の名が冠された18インチアロイホイールを標準装備する。タイヤサイズは225/40R18。ブレーキディスクはフロントが320㎜、リヤが290㎜となる。

 新型メガーヌGTは高速になっても緊密なステアリングはそのままだが、動きは一転。路面にグッと噛みついた落ち着きを披露する。この領域では中立付近を意図的に重くするパワステ制御もあってか、ズシッと矢のように直進する。

 4コントロールが過渡域でいかに制御しているか、あるいは走行モードによって同位相と逆位相の切り替え速度以外になにが変わるか……の厳密な情報はよく分からない。

 ただ、確実にいえるのは、スポーツモードのほうが、全体にマイルドでグリップ感も増すことだ。ダンパーは固定減衰なので、乗り心地が悪化するわけではない。低速でよりクルクルかつ軽々と曲がっていくニュートラルモードのほうが肉体的には楽だが、私のような旧世代のクルマ好きになじみやすいのはスポーツモードである。ただ、普通のスポーツモードはパワートレイン特性も激しくなる(スロットルだけでなく、変速スピードも上がって変速ショックも強まる)ので、個別設定可能な「ペルソ」モードを使って、日常的にもシャシーだけはスポーツモード……という手はアリだと思われる。

 ルノーに限らず逆位相のフィーリングには賛否両論があるし、それを思いどおり操るには、独特のコツや慣れも必要だ。ただ、高速の同位相については、限界性能を飛躍的に引き上げる効果があり、新型メガーヌGTの高速ワインディングでの戦闘力は、従来比で1〜2ランク、グレードアップしたのは間違いない。

 いずれにしても、4コントロールを思いのままに走らせるには、これまでの運転のスタイルや意識を少し変える必要はあるだろう。

 逆位相のターンインでは、来たるべきコーナー曲率を予測して舵角決め打ちで突っ込む……という古典スタイルは似合わない。ターンインでもクルマと対話しながら、いや、意識としては自分で曲がっていくクルマを追い合わせるように操舵すると、新しい意味での一体感が味わえる。

 また、これまでのようにフロント優先でリヤを滑らすように振り回す運転は4コントロールでは逆効果である。飛躍的に限界が高まったリヤグリップを最大限に活かして、過度に振り回さず、オンザレールで走らせてこそ、新型メガーヌGTは異次元の旋回性能を発揮する。

 4コントロールはこのように、ルノーにおけるドライビングファンのの概念を進化……というか、変革する歴史的な出来事かもしれない。仮に最初のうちは馴染めなくても、絶対的な性能は間違いなく飛躍的に上がって、それを「らしく」走らせた時の肉体的な負担は確実に減っている。そんな4コントロールの利点を実感してしまうと、もはやそれ以前の時代には戻れなくなるのだろう。

スロットルレスポンス、変速プログラム、4コントロール特性、排気サウンドなどをドライバーの好みに応じて変更できる「ルノー マルチセンス」。「コンフォート」「ニュートラル」「スポーツ」「ペルソ(個別カスタマイズ)」の4モードを用意する。

モーターファン別冊 インポートシリーズ ルノー・メガーヌのすべて

RENAULT MEGANE

Hatchback & Sport Tourer
ふたつのボディタイプが同時に日本上陸!

官能性と快適性が高次元で融合
本気のフレンチGT

Mechanism:4CONTROLが生む走りの新境地
Technology:先進の運転支援システムを搭載
Design:パリが生んだ前衛芸術の色香

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