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【難波 治のカーデザイナー的視点:連載コラム 2回目】Viva!小さなクルマたち! 傑作デザイン:ルノー・サンクとフィアット・ウーノ

  • 2019/06/30
  • Motor Fan illustrated編集部
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 具体的には人が車を見るときには車から50メートル離れて望遠レンズで撮影したような遠近感のない図面のようなベタなシルエットはなかなか見ることは出来ない。例えばクルマを真後ろから見るとしよう。普通に車を見る距離では人の目の幅の何倍もの広いモノを見るのであるから必ず視界の中で車は見切れてしまう。そのときにタイヤがいかにも外側にあるように見えれば良いのだ。

 だからFOH部とROH部におけるボディの“絞り込み方”がモノを言う。車体は基本的にストロークの長い大きな曲率を持ったカーブで構成されているが、それをさらにタイヤを越えたあたりからもうひとしぼりするのだ。そうすると後方からクルマを見ている人の目にはホイールアーチ部分が最も外側に位置しているように見えるから(カタチが見切れる部位が大体その辺りになるので)、タイヤがギリギリボディに張り付いていなくてもそこそこ安定したスタンスを表現することができる。

 ルノー5は全幅が1590ミリ。ウーノは1560ミリだ。最近のコンパクトカーは全幅が1650~1690ミリはあることを考えるとそれよりも100ミリ程度車体の幅が狭いのだが両車とも全くそう感じさせないほどスタンスが良い。しかもウーノはパッケージの効率を高めるために1420ミリの全高を持つのだが不安定に見える要素などまったくない。

 また、どちらの車も諸元値ギリギリまで寸法を使って室内スペースも確保しているのだ。これこそがスタイリングの構築方法の素晴らしい例であり基本中の基本、大原則であり、アーキテクチャのしっかりとしたデザインの例なのだ。

 これがキチンとできているとクルマをスリークォータービューで見たとき、フロントクォーターからはリヤタイヤ(リヤホイールアーチ)以降がスッと消えて見えなくなるし、リヤクォーターから見たときにはフロントタイヤ(フェンダー)から前はほぼ何も見えずタイヤが踏ん張っているように見えるのである(街を走るクルマをチェックしてみるのは楽しいですよ!)。

 クルマは物理の法則で運動しているので、前後車軸より外側(FOH/ROH)はできるだけ質量を持たない方が運動性が高い。その法則とカタチには通ずる部分があり、人はそれをなぜか直感的に感じ取るのである。

 5もウーノもこの優れたアーキテクチャをベースに徹底的にシンプルにデザインされていてとても気持ちが良い。着飾るための無用なモチーフも一切使用していない。目くらましの誤魔化しなしの極めて洗練度の高いデザインである。本当に必要なモチーフだけに研ぎ澄ませてデザインをしている。また両車ともにパネルドアを採用していて窓周りも非常にクリーンに仕上がっていてとても綺麗だ。そして両車ともとても良く売れた。

 大衆車は街中に溢れ活発に走り回るので、小さな車こそデザインが大事だと僕は常々考えている。街が綺麗に見えるか、大人びて見えるかはこういう日常使いのクルマのデザインレベルがいかに高いかにかかっているとつくづく思う。

 自動車デザイナーとして半人前以下の発展途上だった僕が「大いに衝撃を受けた」理由をわかっていただけただろうか。パッと見たカタチのイメージはサイドビューで表現するが、それを陰で支え立体として最大の効果をもたらすのがプランビューの計画なのである。だから平面図は面白い。独り言を呟きながら平面図を見ていたりするのである。

 小さいクルマの楽しさは、新しい造形のトライができることにある。寸法が短い・小さいのでもともと「愛らしい」可愛さのバランスをもっているからいろいろできる。一方で小さいクルマの難しさは(最近特にそうなのだが)‘’ 安全・安心‘’ に対する不安感をどうやって造形で払拭できるかだろう。ハイブリッドもEVも特別な選択ではない時代はそこまで来ている。日本車が世界に発信し生き残る部分がそこに集約されているとするならば、ぜひジャストサイズのセンスの良い洒落た自動車をデザインしてもらいたいと願う。日本が綺麗になり、世界が綺麗になる。

 ところでこの両車だが、ウーノがジウジアーロの作品であり5がガンディーニの作品である。それぞれの「らしさ」がとても良く出ている。僕はガンディーニの洗練されたエレガンスさが際立つルノー5が好きだが、読者の皆さんはどうだろうか。

 ナス紺色の5はとてもとても綺麗なのです。

FIAT UNO

フィアット初のジアコーサ式FF・128、その小型版127の大ヒットを受け、1983年に市場投入。直線基調でエッジを立てた新しい雰囲気のボディと、全高を多く取ったきわめて広いキャビンによって、先代の127に続き欧州COTYを授賞している。アルファロメオ・タクシー、ランチア・メガガンマなど、パッケージを追求した背高クルマの提案が多かったジウジアーロの新しい小型車を、市場が大いに歓迎したのだろう。フィアットは続いて、パンダを誕生させている。

■FIAT UNO 5door
全長×全幅×全高 3645×1560×1425mm
ホイールベース 2285mm
トレッド Ⓕ1340mm/Ⓡ1300mm
タイヤ 155/70R13

難波 治 (なんば・おさむ)
1956年生まれ。筑波大学芸術学群生産デザイン専攻卒業後、鈴木自動車(現スズキ自動車)入社。カロッツェリア ミケッロッティでランニングプロト車の研究、SEAT中央技術センターでVW世界戦略車としての小型車開発の手法研究プロジェクトにスズキ代表デザイナーとして参画。94年には個人事務所を設立して、国内外の自動車メーカーとのデザイン開発研究&コンサルタント業務を開始。08年に富士重工業のデザイン部長に就任。13年同CED(Chief Executive Designer)就任。15年10月からは首都大学東京トランスポーテーションデザイン准教授。

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