【トヨタ・カローラスポーツ試乗記】期待を超えた変貌
- 2019/07/12
- ニューモデル速報
「ワイドなボディとTNGAプラットフォームにより類い希な走りのポテンシャルを手に入れた」
日本国内専用という縛りから解放された十二代目カローラはワイドなハッチバックボディとともに「カローラスポーツ」の名を与えられた。そうした外面的な変化以上に、その走りは大きな変貌を遂げていた。
REPORT●石井昌道(ISHII Masamichi)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
5ナンバーの枠を取り払い堂々たるフォルムに
言わずと知れたビッグネームであり、その昔はスポーツクーペのレビンが名車の名を欲しいままにした時期もあったカローラだが、ここ最近では地味な存在に落ち着いていた。既存ユーザーの声に耳を傾け、無用なサイズアップを避けた日本専用車を用意していることはトヨタの親切心そのものだが、その裏返しで今どきの新規ユーザーは獲得しにくいというのも現実。代を追うごとにユーザーの年齢層が上がっていくのは自然な流れだった。セダンのアクシオやワゴンのフィールダーは、それはそれで存在意義があり、今でも販売台数は順調に推移しているが、日本人として悔しく思ったのは、たまに行くアメリカで見かけるカローラが妙にカッコいいことだった。日本仕様のカローラは全幅が5ナンバー枠に収まる1695㎜だが、北米仕様の全幅は1780㎜。日本仕様よりも100㎜近くワイドなボディにシャープな顔つきのキーンルックがマッチし、カリフォルニアの明るい陽光の中で見事に映えていたのだ。
そういった思いが届いたのだろうか? 新たに導入されることになったカローラスポーツは、2018年4月のニューヨーク国際自動車ショーでお披露目されたカローラハッチバックと基本は同じ。全長4370×全幅1790×全高1435㎜のボディサイズはCセグメントに属するもので、世界戦略車として強豪揃いの欧州勢とも真っ向勝負するかっこうとなる。堂々たる全幅になったことでエクステリアのイメージは5ナンバーのモデルとはまったく違う。ミニマムな全幅で然るべき室内空間を得ようとすればサイドの面などは平板的になるのは当たり前で、それもまたベーシックカーの清々しい姿ではあるが、やはりデザイン代(しろ)が取れることによる抑揚のあるボディは気分を上げてくれる。最近のトヨタデザインは攻めの姿勢をみせているが、リヤまわりの強烈な絞り込み、そこへ至る複雑なラインや面構成などはアグレッシブで鮮烈だ。あの頃のレビンのように、基本はベーシックカーだが若々しく、クルマにちょっとした夢を描く者にも訴えかける情熱が帰ってきたと言える。
フォルクスワーゲン・ゴルフやメルセデス・ベンツAクラスなど欧州のCセグメント・ハッチバックたちは走りや快適性などの実力が高く、世界中の自動車メーカーからベンチマークとされているが、カローラスポーツのハードウエアにもそれらと渡り合うポテンシャルは確かにある。もっといいクルマづくりを目指したTNGAによるGS-Cプラットフォームは、すでにプリウスやC-HRで侮りがたい実力をみせていたからだ。C-HRよりは背が低く、プリウスよりも走りに振れるカローラスポーツのキャラクターならば、相当にファンなドライビングが期待できる。プラットフォームは開発の経験を積むごとに改善が進むものでもあるから、カローラスポーツで3車種目というのも有利に働くはずだ。
その期待は、走り出してすぐに確信へと変わっていった。まだナンバープレートが付いていないプロトタイプのため、今回は富士スピードウェイのショートコースでの試乗となったが、ピットロードから本コースへ合流し、コーナーを二つ三つ抜けて半周したあたりで「これはいい!」と思えたのだ。
まだインプレッションするという段階ではないものの、ステアリングやペダルを操作したときの自然な感覚、それに伴うクルマの動きの素直さなどから、自分の手足のように御することができると直感。どこにもぎこちなさがなく滑らかなことに、新型車でありながら熟成感も見えた。それはビッグマイナーチェンジで走りに手を入れたモデルに乗ったときに似ているのだが、これこそGA-Cの3車種目である優位点だろう。
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