「ダイナミックトルクベクタリングAWD」がSUV離れした驚異の旋回性能を実現 トヨタRAV4アドベンチャー500km試乗インプレ…見た目だけではない本気のオフロード志向。だが荒れた舗装路では人間の方が先に参る【売れ筋国産SUV長距離実力テスト】
- 2020/04/14
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遠藤正賢
前述の通りオフロード志向を全面的に強めた新型RAV4ではあるが、それを長距離長時間、オンロードで走らせた場合はどうなのだろうか? 結論を先に言えば、オフロードなど過酷な走行環境でも走りやすい味付けと電子制御を備えるものの、本籍はやはり都会のオンロードだった。
オルガン式のアクセルペダルはハッキリと重く、またM20A-FKS型2.0L直4NAエンジンも最大トルク207Nmを4800rpmで発生する、SUVとしてはやや高回転型な性格。車重も1630kgに達するため、アクセルペダルを軽く踏んだだけでは緩慢な加速しか示さない。だがしっかりと踏み込めばその分だけのトルクが発生するため、速度の調節、何より維持は非常に容易だ。このような特性ならば、底が厚く硬いスノーブーツを履いていても、また雪道やオフロードを走行しても、過度にスリップさせることなく走れるだろう。
なお、ドライブモードは「NORMAL」のほかオンロード向けの「ECO」「SPORT」、オフロード向けの「ROCK & DIRT」「MUD & SAND」「SNOW」が用意されているが、いずれも極端にダル、あるいは過敏なスロットル特性にはなっていない。「ECO」モードで高速道路を走っても、加速時にストレスを感じることはなかった。
そして、今回約500kmを走った全行程の平均燃費は13.2km/Lと、車重とボディサイズを考えれば充分に低燃費。燃料タンク容量は55Lで、今回の場合は満タンから空まで726kmを走れる計算になる。やはり給油を途中で一回もせずに走りきれるというのは、長距離長時間ドライブでは大きな安心材料になるだろう。
乗り心地やハンドリングに関しては、細かな凹凸を綺麗にいなして車体をフラットに保つのが得意科目。GA-Kプラットフォームの重心の低さも手伝って操縦安定性は高く、高速コーナーの多い中央自動車道でも常に安心して走ることができた。
全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLTA(レーントレーシングアシスト)が備わった進化型「トヨタセーフティセンス」も、従来のものとは比較にならないほど制御が緻密かつ自然になり、高速道路での安全性・快適性向上に一役買っていた。
河口湖ICから一般道に降りて、本栖湖外周のワインディングへ。ここでは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」と、ブレーキによるトルクベクタリングも統合した「AIM」(AWD Integrated Management)がその本領を発揮する。
ターンインの際は後輪内側に多くブレーキをかけてアンダーステアを抑制。立ち上がりでアクセルペダルを踏み込んでいくと、今度は後輪外側に多く駆動力を配分しヨーを発生させることでニュートラルステアを維持する。さらにドライブモードを「SPORT」にしマニュアルモードを駆使すれば、変速時にややシフトショックはあるものの、より素早く緻密に加減速をコントロールするのも可能になる。そのおかげで、全高1690mm・車重1630kgとは思えないほど軽快にタイトコーナーを旋回できた。
なお、別の機会にはクローズドのダートコースで高速旋回を試せたが、ここではゼロカウンターステアを当ててのドリフトも自由自在。またモーグルやキャンバー路、20°の急斜面を持つオフロードも、「ROCK & DIRT」および「MUD & SAND」モード、また「ダウンヒルアシストコントロール」を駆使すれば、危なげなくクリアすることが可能だった。
しかし、ヒビ割れや大きな凹凸の多いアスファルトに差し掛かると、様子が一変する。ロードノイズや振動が急激に盛大になるとともに、強烈な突き上げを乗員にもたらすようになる。特に突き上げが、腰痛持ちの筆者には耐え難いレベルであり、今回の企画で試乗したSUV4台の中では、500km走行後の疲労が最も大きかったことを、ここに報告しておきたい。
これは恐らく、コンディションの悪い舗装路を走るには、235/55R19タイヤのエアボリュームも、ダンパーやブッシュ・マウント類の容量も、絶対的に不足しているのではないか。多少オンロードでの操縦安定性を犠牲にしてでも、他のグレードに設定されている225/60R18や225/65R17タイヤにインチダウンのうえマッドテレーン寄りの銘柄にし、かつダンパーやブッシュ・マウント類の容量をアップした方が、オフロード志向が強い「アドベンチャー」の性格によりマッチすると筆者は思う。
このように新型RAV4「アドベンチャー」は、少なくとも現状では、コンディションの良い舗装路をそこそこのペースで走るのが最も快適であり、その点では歴代モデルと変わらない。コンディションの悪い舗装路はもちろん、岩場を長時間走り続ければ、クルマよりも人間の方が先に参ってしまうだろう。
餅は餅屋。本気で悪路を走るならやはり、同じトヨタならランドクルーザー(プラド)のような本格オフローダーを選ぶべきだ。裏を返せば、走行距離の9割以上が町中や高速道路で、年に1~2回悪路を走る機会があるというユーザーには、RAV4「アドベンチャー」は最高の相棒となるに違いない。
■トヨタRAV4アドベンチャー
全長×全幅×全高:4610×1865×1690mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1630kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
総排気量:1986cc
最高出力:126kW(171ps)/6600rpm
最大トルク:207Nm/4800rpm
トランスミッション:CVT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:235/55R19
乗車定員:5名
WLTCモード燃費:15.2km/L
市街地モード燃費:11.5km/L
郊外モード燃費:15.3km/L
高速道路モード燃費:17.5km/L
車両価格:319万5500円
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