燃料タンクが小さく高負荷時の燃費悪化が大きいため航続距離は短め ダイハツ・ロッキー500km試乗インプレ…良くも悪くも新型タントの相似形。細かな不満はあるものの長時間ドライブ後の疲労は望外に少ない【売れ筋国産SUV長距離実力テスト】
- 2020/04/12
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遠藤正賢
一部でやや沈静化の動きは見られるものの、SUVは依然として日本を含め全世界的に人気が高く、その裾野も徐々に広がりつつある。
「売れ筋国産SUV長距離実力テスト」と題したこの企画では、2020年1~3月の販売台数ランキングで上位につけた国産SUV4台をピックアップ。SUVユーザーに多いであろうアウトドアレジャーや帰省での使用を想定し、各車とも約500kmを走行して長距離長時間での疲労度を測るとともに、都心の町中や高速道路、郊外の一般道やアウトドアスポット近隣の荒れた路面で走りの実力をチェックする。
1本目は2019年11月の発売以来、OEM車のトヨタ・ライズが登録車販売台数トップ10にランクインし続けている、ダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」。都内の首都高速道路から京葉道路を経由し千葉市内から銚子港、九十九里浜までの一般道を経て、千葉東金道路から東関東自動車道、首都高速道路へと戻るルートなどを走行した。
なお、今回テストしたのは、上から2番目のグレード「G」の4WD車。メーカーオプションのブラインドスポットモニターとパノラマモニターパック、ディーラーオプションの9インチスタンダードメモリーナビなどに加え、スタッドレスタイヤのブリヂストン・ブリザックVRX2を装着していた。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、ダイハツ工業、トヨタ自動車
ライズとロッキーの快進撃が止まらない。自販連の「乗用車ブランド通称名別順位」を見ると、
【トヨタ・ライズ】
2019年11月… 7,484台(4位)
2019年12月… 9,117台(2位)
2020年 1月…10,220台(1位)
2020年 2月… 9,979台(1位)
2020年 3月…12,009台(4位)
総計 …48,809台
【ダイハツ・ロッキー】
2019年11月… 4,294台(16位)
2019年12月… 3,514台(16位)
2020年 1月… 3,153台(21位)
2020年 2月… 3,411台(24位)
2020年 3月… 5,011台(22位)
総計 …19,383台
ライズは登録車トップの座に2回つき、ロッキーもダイハツの登録車としては非常に好調に推移している。
このロッキーとライズは、2019年7月発売の新型ダイハツ・タントに続き、新世代の「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」プラットフォームを採用。これにより「取り回しのよいコンパクトな5ナンバーサイズながら、広い室内空間と大容量ラゲージに加え、17インチの大径タイヤを採用した力強いデザインを実現した」とダイハツは主張している。
〈試乗記:新型ダイハツ・タントカスタムRS〉DNGAの高い潜在能力を感じさせるハンドリングとシートの一体感。だがパワートレインと快適性、ADASの制御には今後の洗練を期待
ダイハツの最量販車種へと成長した、左側Bピラーレスボディが特徴の超背高軽ワゴン「タント」が2019年7月、車種横断的な一括...
確かに、DNGAが採り入れられたことで、タントでは室内空間が一段と広くなり、旋回性能も劇的に向上した。その一方で内外装の質感に明確な割り切りが見られ、乗り心地や静粛性、新開発の「D-CVT」や「次世代スマートアシスト」に関しては熟成不足が目に付いた。
また、売れているクルマ=良いクルマ、とは限らないのが、特に登録車ではよくある話。そのため今回ロッキーに試乗する前、筆者は少なからず不安を抱いていた。
【ダイハツ・ロッキーG 4WD】全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm ホイールベース:2525mm トレッド:前1475mm/後1470mm 最低地上高:185mm アプローチアングル:20° デパーチャーアングル:32°
ともあれ実車を目の前にすると、全長4m以下の5ナンバーサイズながら、そうとは思えない迫力と存在感が、ロッキーのエクステリアには備わっている。その方向性は流行のクロスオーバーとは真逆の、SUVらしさを強調したものだが、要素過多で煩わしいと感じさせないギリギリの所でシンプルにまとめているあたり、ダイハツデザイナー陣の力量の高さを実感させる。
トヨタ・ライズZ 2WDの三面図。兄貴分のRAV4と共通イメージのフロントマスクが与えられている
なお、OEM車のトヨタ・ライズとの違いは、フロントマスクと17インチアルミホイールのデザイン、エンブレム類とグレード構成(ロッキーにはファブリック×ソフトレザー調シートの最上級グレード「プレミアム」があり、ライズにはスマートアシストレスの廉価グレード「X」がある)に集約される。が、RAV4と共通のモチーフを持つライズのフロントマスクはロッキーに対し要素が増え、そのボディサイズの許容量を超えてしまっているため、筆者としてはロッキーの方が好ましく感じられた。
室内に目を移すと、インパネはやはりタントと同様に質感の高さを追求せず、安っぽく見られるのを巧みな表面処理で避けている印象。Aピラーが細くヒップポイントが高いことで圧迫感は少なく、かつエンジンフードの左右前端が見えるため車両感覚は掴みやすい。だが、インパネに分割線もデザイン要素も多く、フロントガラスが天地方向に狭いうえ9インチモニターがインパネ上部中央に鎮座するため、少々煩わしく感じられる。
しかもこのクルマ、センターコンソールの形状に少々難がある。コンソール本体と加飾パネルとの境目が最も出っ張っており、しかもこの部分が膝の高さとほぼ同じになるため、旋回中などにニーレスト代わりにしようとすると、膝の急所にこの出っ張りが当たりやすい。その時の不快感は言語に絶するため、ダイハツは早急に設計を見直してほしい。またステアリングにテレスコピック(前後調節)機構が一切設定されておらず、筆者のように腕の短いドライバーが脚に合わせてポジションを決めると手長猿になりやすいのも、要改善点だろう。
前後シートの感触もタントと同様に、クッションのフィット感こそ悪くないものの絶対的なサイズが不足しており、身長176cm・座高90cmの筆者が座るにはやや心許ない。なお後席はニールームに20cmほどの余裕があり、AセグメントのSUVとは思えないほど広々としているのだが、着座位置が高めに設定されているためヘッドクリアランスは5cm程度。さりとて見晴らしが良いかといえば、前述の通りフロントガラスが天地方向に狭いため、視覚的には閉塞感が強いというのが率直な感想だ。
ロッキーは荷室の広さもセールスポイントの一つに掲げているが、絶対的な容量(後席使用時・デッキボード下段時369L)だけではなく使い勝手の良さも大きな美点と言えるだろう。デッキボードは上下二段可変式となっており、これを上側に配置すれば、後席を倒しても段差がほぼなくなる。また下段でもボードの下に筆者のビジネスバッグとカメラバッグ、A4正寸のカタログが綺麗に収まる空間が得られるうえ、さらにボードを外せば2WD車なら高さ1mほどの荷物も積載できる。またバックドアが樹脂製で軽く、開閉が容易なのも好印象だった。
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