フェラーリ Roma(ローマ)「フェラーリってブランド自体が、フェラーリらしさを見つめ直したんじゃないかなぁ」難波治教授がデザインを分析する
- 2020/06/17
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MotorFan編集部
スバルの前デザイン部長で現在は、東京都立大学で教鞭をとる難波治教授が、MFスタッフとともにデザインチェックする「難波 治のデザインウォッチング」。今回は、非常事態宣言が解除された6月初頭、徹底したコロナ対策が取られた渋谷・神宮前のスタジオお披露目されたフェラーリの新型クーペ「Roma(ローマ)」をチェック。そのデザインを教授はどう見たか。
COMMENT◎難波 治(NAMBA Osamu/首都大学東京教授) まとめ&PHOTO◎MotorFan.jp編集部
デザインは環境でも左右される
難波教授(以下、教授):今日はとっても楽しみにしてきたんですよ。フェラーリの最新スポーツカー、Roma(ローマ)ですから。まだ写真しか見てなかったので実物を見るのを初めてです。
MF:そもそもフェラーリ Romaは3.9ℓV8エンジンをフロントに搭載するFRレイアウトのスポーツカーです。フロントエンジン搭載モデルは、V12の「812スーパーファスト」「GTC4ルッソ」があるんですけど、V8搭載のFRは「GTC4ルッソT」とカブリオレの「ポルトフィーノ」があるんですよ。今回のローマは、ポルトフィーノのクーペ版という位置づけですけど、だいぶデザインテイストが違いますね。
渋谷区神宮前のスタジオに置かれたフェラーリ・ローマと対面した教授。
教授:第一印象は。久しぶりに「情緒感」でデザインしてきたクルマに感じました。でもね(と声のトーンをやや下げて)このスタジオは、クルマを見せる場所として、狭い。ライティングもいまひとつです。だから、たぶんちゃんとデザインを見られていないかもしれない。本当は外光で見たいですね。狭いし、暗いので少しぼーっと緩い感じが先にきてしまうのですが、外の光の中で見たら、ボリューム感がもっとしっかり感じられるかなっていう期待感があります。
MF:そんなに狭くないですけどねぇ。それにしても、きれいなボディカラーだな。
教授:いい色ですね、ボディカラーで惑わされないで済みますね。でもいかんせん照明を含めたこの環境はクルマのデザインを見るにはちょっと見づらいですね。
走りを考えたデザインなのか?
教授:Romaのボディサイズはどのくらいですか?
MF:全長×全幅×全高は4656mm×1974mm×1301mmでホイールベースは2670mmです。
教授:いま、階段を3段くらい上がって少し上から見ているのですが、思ったほど大きく感じない。もっとでかく見えちゃうのかなと思っていたのですが。悪くないですね。これは前後のオーバーハング部分がしっかりと絞られているからですね。キャビンもすごく締まった感じに見える。2+2に見えない。見えない方がかっこいいんですよ。プラス2にしてもらいたくないですもんね。
教授:クルマ全体がやや後ろに沈んでいるように感じる。なんでかな……。ノーズがちょっと浮き気味に見えるところもちょっと気になるかな。もしかすると走ってるときの姿を考えてるかもしれない。あと、ボディのピークの線はフロントのフェンダーからずっとリヤに流れているのだけれど、フェンダーのピークがAピラーに繋がるように向かって消えていく、そのボリュームの動きが、フロントのカウルからサイドのウインドウのラインに繋がるサーフェイスの動きと交差するんだけど、そのあたりがちょっと整理できていない感じがしますね。あぁやっぱり、フロントから見たときにフロントフェンダーとAピラーを過ぎていく斜めの面とちょっとギクシャクしているな。そこがちょっと残念だなぁ。それから、全体の非常にふくよかなボリューム感があるなかで、フードがちょっと味がないかなぁ。クォーターから見たときにフロントフェンダーからドアにかけての光の動きが揺れる。というかドアにもう一度リフレクションの山があります。スムーズにリヤのボリュームに繋がっていかないところがありますね。でもね、こういう情景そのものが、僕は好きなので、うん、いいですね、Roma。変にスポイラーとか空力パーツとかエアロダイナミクスを強調したりフィーチャーせずに、とげとげしくしていないところも、いいな。
MF:教授、これ可動式リヤスポイラーらしいですよ。ちょっと乗り込んでみましょう。
教授:ドアを開けた状態で車内を見たときの、そうだな、中へ誘ってくれる感じ、いいですね。シート、内装はまず質感もよく、最初写真で見ているときはタイトで狭いかなと思った「デュアルコックピット・コンセプト」も、意外と悪くないかもしれないな。今度は助手席に乗ってみましょう。メーター周りは僕の背の高さでは、ややボリュームを感じます。デザインは「それらしさ」と先進装備がちょうど良い感じでバランスしてますね。
教授:これは助手席、気持ちいいですよ。助手席、いいな。うーん、なるほど。これは乗せてもらうほうがうれしいかも。ステアリングやクラスターが相当圧迫感がありましたから、僕がドライバーズに座ったときに。スポーツカーに乗っているって感じがとっても高まるんですよ。
MF:せっかくだからボンネットも開けていただきましょう。
意味もなく開けたくなりますよ
MF:きれいなエンジンルームですね。デザイナーが見せ方を考えたエンジンルームですよね。これなら、意味もなく時々ボンネットを開けたくなりますよ。
教授::エンジンルーム内もしっかりやってますね。外観と同じようにボリュームをうまくコントロールしている。パーツの数も減らして、うまいですね。きれいなボンネットの中ですね。フロントバンパーの網がちょっと網っぽくて気になるなと思って見てます。ま、グリルは、ちょっと単調というか、面白くないかな。
教授:(Romaを斜めに見ながら)だけど、脇が締まった感じっていうのかな、ボディのサイドシルに向かってぎゅっと締まっている感じがいいです。サイズを感じさせないのはこのあたりの絞り肉づけがうまいからだと思います。
MF:確かに脇が締まった感じがしますね。
教授:スポーツカーにとって「脇がぐっと締まった感じ」はとても大事なんですよ。それがこのRomaには出ているじゃないですか。最近のクルマってここが意外とフラットなんですよ。逆に横から衝突されても強いくらい。どーんときた強さ、厚みを感じさせるようになっているんですよ。でも、Romaは脇がしまっています。だからこそタイヤの存在が明確になるし、接地感が強まります。
教授::Romaはオーソドックスと言えばオーソドックスですね、とっても。もう文句なくスポーツカーらしい感じ。このところエアロダイナミクスを最大限にスタイリングに取り込んでパフォーマンス演出に偏りつつあったんですけど、今回はとても表現力に視点を置いています。今日最初に情緒感って言いましたけど、流れるような、でもボリュームも強調する。その造形がキャラクターラインで感じるのではなく、光のグラデーションで感じる。新しい感じじゃないですよ。気持ちよくデザインしたらこういうふうになるという感じです。フェラーリに望まれているのはこういう世界だと思うんですけどね、僕は。
フェラーリからのメッセージを感じられた
MF::FRスポーツカー、オーソドックスで誰が見ても美しいとなるとアストンマーティンっていうのもありますよね。アストンと比べたらどうですか?
教授::Romaの方がなんかボリュームの扱い方とかカーブとかが、少したおやかな感じがするかな。アストンマーティンの方がもう少しカチッとした感じがありますね。スキのない感じっていうのかな。
教授::フェラーリっていうブランド自身がもう一度フェラーリが持っていたフェラーリらしさを見つめ直したんじゃないかなあと今日は感じました。ライバルがあることなのでパフォーマンスで引けを取ることはもちろん出来ない。このところどうもそっちに偏ってた感じがして、デザイン屋としてはどうも物足りなかったんですけど、ミッドシップではないFRレイアウトだからこそ、ドライビングが楽しくなるような世界観を創ってくれたように思うんですね。そういうフェラーリからのメッセージを感じたように思って、個人的にはとてもうれしく感じました。
教授::いろいろ言ってきましたが、フェラーリ Roma、かなりバランスが良く、造形も練り込まれ、魅力的な塊になってますよ。早く路上で見たい! 外光で見たいです!
画像ギャラリーには、たくさんのディテールの写真を掲載しています。そちらもご覧ください。
フェラーリ ローマ
全長×全幅×全高:4656mm×1974mm×1301mm
ホイールベース:2670mm
トレッド:1652mm×1679mm
車重:1472kg
駆動方式:
エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3855cc
ボア×ストローク:86.5×82mm
圧縮比:9.45
最高出力:456kW(620ps)/5750〜7500rpm
最大トルク:760Nm/3000〜5750rpm
最高速度:320km/h
0→100km/h加速:3.4秒
0→200km/h加速:9.3秒
燃料タンク容量:80ℓ
トランスミッション:8速DCT
タイヤ(リム幅):
F| 245/35ZR20(8J)
R|285/35ZR20(10J)
トランク容量:272〜345リットル
車両本体価格:2682万円(税込)
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