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四駆専門誌編集長が初代ダイハツ・タフト愛を語る好評企画 最後にタフト後継車ラガーのことを話そう 初代ダイハツ・タフト集中講座 最終回 さらばタフト、そしてラガーへ。カタログで辿る後継車ラガーの変遷

  • 2020/07/20
  • MotorFanアーカイブ編集部
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最期の時:短命に終わった“街乗りラガー”

 ラガーの変遷は、実直で不器用な山男が都会のアウトドアショップに転職し、イマドキ客の対応に疲弊して行くかのようだ。少数ながらも揺るがない支持層があった理由を、ダイハツの開発陣は把握できなかったのだろうか。山男は山小屋に居続けて欲しかった。

 平成5年(1993年)4月のビッグマイナーチェンジで「終わったな」と思ったのは私だけではなく、周囲のオフローダーも同じ反応だったことを憶えている。結果としてラガーは本当に終わってしまった。
 いささか滑稽なルックスにも落胆したが、前ダブルウィッシュボーン、後コイルリジッドの脚周りにも驚いた。いま考えれば充分に本格的なサスペンション形式だとしても、カタログで「譲れない・誇り」としていた形式を、あっけなく捨てるとはポリシー崩壊とも受け取れた。

 なにをしたところで、この小柄なボディ、4ドアもオートマもないラインナップでは、三菱パジェロやトヨタ サーフにはなれない。自らのファンを見捨てて世間の流行に迎合した結果、大掛かりな設計変更を行なったF73G/F78Gを最後にラガーの名は消えた。バンと幌を廃止して売り続け、2年半の命だった。
 もしこのとき、前足のリジッドアクスルを生かした「前後コイルリジッド式」としたり、極端なワイド化を控えたり、オートマを追加していたら、歴史は変わっていたのではないか。あるいはとんがった方向で、三菱パジェロJ-TOPのようなクロカン志向の機種を出していたなら、ラガーは2代目、3代目と続いたかもしれない。

 いすゞビッグホーンのような部門撤退という事情ではなく、ダイハツはその後もRV・SUVに力を入れていただけに、ラガーの存在意義を熟考し、生き長らえさせて欲しかったと思う。

「R&R DAIHATSU 4x4 BROTHERS」とは、RUGGERとROCKYのことだ。この最終型では、ターゲットや車の性格が似てしまったため、兄弟で食い合っている。ラガーが「デカいロッキー」になってしまった。
この図だけ見れば、一般的なRVの足といえる。これをラガーに搭載し、太いタイヤを巨大なオーバーフェンダーで覆ってしまうとなると、どうだろう。

試走インプレッション:ラガーレジントップ F75V

 ラガーの乗り味は、タフトの延長上にあり、それを静かにスムーズにした印象だ。ガッシリした剛性感はもとより完成されており、バネ自体がソフトにされたことで突き上げが減り、ホイールベース・トレッドが拡大されたことで路面のうねりに翻弄されなくなった。遮音も行き届いている。

 タフトのDG型、そしてDL型はディーゼルノックすら封じ込めるほど肉厚の鋳鉄ヘッドを持ち、騒音より振動として伝わる部分が大きかった。そのあたりのインシュレーションも考えられている。
 エンジン特性はモリモリトルクのトラック用にターボで伸びを加えたもの。滑らかさも加わっているから、悪かろうはずがない。

 視界良好なことは特筆すべきだ。低い位置から立ち上がるフロントガラスや大きなドアガラスで、開放的でもある。安全性に寄与する要素だから、スズキの現行ジムニーを含め、今の車たちに見習って欲しいところだ。

タフトとは隔世の感があるダッシュボード。ガラスの大きさも良い。
荒れ果てた林道を行く。まだ名義変更前で、当時物のナンバーが付いている。このF75Vはさる自動車修理工場のサービスカーとして30年近く大切に管理され、閉業のため売却された。
富士山麓のオフロードコースにて。足が浮く寸前。もう少し動けばさらに良い。
アプローチアングルを稼げる、俗に言うトツゲキ型のフロントシャックル配置。ストローク向上には逆効果でもあるが…。

 オフロードコースではタフトより大きいとはいえ、まだコンパクトで長細く、視界の良さもあって乗りやすい。調子に乗ると、2.5mに伸びたホイールベースのおかげで、出っ張り気味の臓物を引っ掛けて亀の子になる。腹下の処理の悪さは、上下方向に大きなトランスファケースと、ピボット類の突起や飛び出したヘルパースプリングのせい。詰めの甘さはタフト譲り(?)だ。
 トレッド拡大でサスペンションはよく動くはずだが、実際はあまり変わらない。前足にはハンドリングを重視して、リーフリジッドなのにラテラルロッドなど追加したものだから、足を捻る場面で制限されてしまうのだ。

 つまるところ「ラガーらしい走り」とは、持ち前のトルクでアクセルやクラッチに気を使わずドカドカと這い回ること。ここぞというところで踏んでやれば良く、乗り方としては重量級四駆に似ている。もう少しローギヤードであったなら速度も抑えられてなお良かった。

 このレジントップ車は自然で好バランスだ。タフトでは過剰な骨組みに重いエンジンを載せ、チープな車体をグイグイ引き廻すような印象があった。
 ホイールベースが長く少し重たいF75Vでは、昭和49年(1974年)に作られたフレームは「このためにあった」と思うほど、ちぐはぐ感が払拭されている。
 先代との比較のみならず、四輪駆動車を多く乗った方なら、癖がなく心地良い車だと思われることだろう。いつでもスムーズ、かつ頼もしい。かつてタフトに比べて中庸で馴染みやすい性格だったブリザードは、お株を奪われてしまう。
 
 ちょうどディフェンダー90の中古を入手した方が遊びに来られたので、その1割ほどの値札を掲げたF75Vのハンドルを預けてみた。
 しばらく運転して口をついて出た「こっちが良かったな……」のつぶやきが、ラガーの乗りやすさ、魅力を知られていない哀しさを示している。これは実話です。

主要諸元

ダイハツ ラガー レジントップEX 1988年
型式 S-F75V
寸法 全長3980mm×全幅1580mm×全高1840mm
ホイールベース 2530mm
トレッド 前/後 1320mm/1300mm
車両重量 1460kg
エンジン DL型 直列4気筒OHVディーゼル
総排気量 2765cc 
最高出力 94ps/3400rpm
最大トルク 23.0kg-m/2200rpm
トランスミッション 5速MT 2速副変速機付き
ブレーキ前 ディスク
ブレーキ後 2リーディング
タイヤサイズ H78-15-4PR

※寸法・重量はオプションのPTOウインチなし車の数値

おまけ:トヨタ ブリザード LD20系(2代目)

トヨタブリザードのバンDX。中尺ラガーのエンジンとシャーシのマッチングが良いために、精細を欠いて感じる2.4ℓOHCの2L型エンジンとの組み合わせ。ターボ付きの2L-T型も搭載された。
先代LD10系のL型より切れ味の鈍った感じはある。車重が1350kgとなると走破性が低いわけではなく、操る楽しさはある。キャブレター同様、アナログ・ディーゼルは二度と世に出ないだろう。味わえるうちに味わいたいものだ。

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