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ホンダNSX(初代)1990-2005 独自思想で作り上げ、世界をそれにならわせた新世代スーパースポーツ【週刊モーターファン・アーカイブ】

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1980年代、欧米などに遜色ない技術を持つようになった国内自動車メーカーは、圧倒的な好景気を背景に次は「ブランド」という得体の知れない領域に挑戦することになる。トヨタや日産が北米で独自のチャンネルを設けて「高級車ブランド」を確立しようとする中、ホンダはまったく違う方向でこのブランド確立に向かった。それは「スーパースポーツカーメーカー」としての立場の確立だ。NSXがその重い役を担うこととなる。

週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。ここでは当時NSXを購入した星島浩氏の「名調子」をお届けしたい。

解説●星島 浩(90年代国産車のすべて より 2012年刊)

 運輸省自動車局で説明図を画<孫請けアルバイトに就き、専門誌在籍からフリーに転じて計40年。折しもホンダがNSXを開発。事前試乗と組立工場見学を機に購入を決めた。

 アルミは骨格、ボディ内外板からシートパン、サスペンションまで広範囲に及び、部位に応じた合金数種と鋳造、押し出し、鍛造、プレスなど網羅。徹底した軽量設計と工法は後にも先にも「これしかない」と確信した。説明して下さったのは元本田技研社長の伊東孝紳さん。NSX開発総指揮とアルミ設計&組立を担当なさっていたと記憶する。 

 先行はアキュラNSX。新チャンネルの旗艦として北米で発売。お陰でLPL=上原繁さんに従いて仲間数人とアメリカ西海岸やラグナセカを走る機会に恵まれ、ニューモデル速報取材&執筆にも力が入った。

 納車は1990年秋。代金一千万円は「清水の舞台」だった。アルミボディにふさわしい明るいシルバ—カラーで、5速MTではなく4速ATとした訳は「私も運転したい」カミさんへの配慮。小気味よいレバーの動きにMT魅力を認めながらもポルシェ・ティプトロニクが変速機の将来を暗示していたこともある。正直いうと「エネセックス」と聞こえる車名は好きじゃなかったが、事前試乗で指摘したリヤウインドーは曇らない二重ガラスに改まっていた。
4430mm×1810mm×117mm。低さは直前まで愛乗したプレリュードで慣れていたが、視界はより良好。キャディバッグを選ぶ必要があるものの、2人でゴルフ遊びに行けるスポーツカーなんかない。

センタークラスターをかなり寝かせた設定であるために、オーディオ、エアコン関係の操作はややしづらい、尋常ではないアイポイントから得る優越感を凌駕するものではない。たとえば商店街のような場所に迷い込めば、子供より低い目線は動物に近く、むしろ何かを見落とすということが少ないように感じられる。

 上を見ればキリはないが、動力性能はV6自然給気で十分。発進&加速は1400kgを割る軽量と安定姿勢が物を言う。直進性に優れると同時に確かなハンドリングはカミさんにも「スポーツカーってこんなに運転しやすいの?」と言わしめた。湾岸道路などで内外の猛者に追われた際、悪い悪戯だが、先行車に近づいてブレーキをかけると、たいがい制動性能の違いに慌ててくれたのも軽量さと優れた安定性あればこそ。

 わがマイカー歴で鈴鹿や関西、東北ほかドライブ機会が最も多くなったのもNSX。ガソリン代は気にしなかったが、困ったのは傷ついたアルミボディの修復だ。駐車中、隣の車がドアをぶつけたり、幼児がフロントボンネットを滑り台にする都度、異常に時間とカネが掛かった。

 なにより、NSXにとっての不運はほどなくバブル崩壊に見舞われたこと。少量生産ゆえに多くのバックオ—ダ—を抱え、北米からの逆輸入も数えた超人気が下火に向かう。

 そもそも利益を度外視したNSX企画である。不況下、追い打ちをかけたのがタイプRだ。ホンダのワルい癖なのだが、より高性能版が喧伝されればオリジナルNSXオーナーは立場を失う。私も次なるマイカーはHVだと観念して、まだ高値で売れる内にとNSXを手放した。

第91弾 HONDANSXのすぺて(1990年9月発売)
号外 最新NSXのすべて(1993年4月発売)

街中での扱いやすさとスポーツカーのいい所取り

幅広いサイドシル、 ヒップポイントの極度の低いシー ト、 そして 1200mmに満たないルーフ高と乗り込むだけで難儀に思われるNSXだが、 サイドシルに手をつくことを覚えれば乗降は容易になる。 足を完全に投げ出して操作するペダルは、 むしろ現代では奇異に感じるかもしれない。 アイポイントもきわめて低いものの、圧迫感を与えない低いダッシュボードは周囲を見やすくしている。

ステアリング左には、ワイパーレバー。その奥にはハザードスイッチを設置。 その手前はリヤウインドゥの熱線用。
右側にはウインカーレバーとヘッドライトスイッチ。 その間にはクルーズコントロールのメインスイッチを設置。
シートスライドとリクライニングは電動式を採用。シートポジションの重要性を意識し無段階の調整を目指した結果でもある。
メインキーはアルミかと思いきや、やはり強度の確保されるチタン製。軽呈の象徴として設定。ちなみにスペアタイヤのホイールもアルミ製。
ホールド性の高いシート。とくに腰部分の細さが印象的。とりわけ、深いバケットシートになっていないところがポイントで、乗降の多い街乗りでも快適。

SPECIFICATIONS:NSX(初代標準)

全長(mm):4430
全幅(mm):1810
全高(mm):1170
ホイールベース(mm):2530
トレッド(mm) 前:1510
トレッド(mm)後:1530
車両重量(kg):1390

型式:C30A型3.0Q V6 DOHC VTEC
ポア×ストローク(mm):90.0×78.0
総排気量(cc):2977
庄縮比:10.2
最高出力(ps/rpm):280/7300
最大トルク(kgm/rpm):30.0/5400
燃料供給装置:電子燃料噴射式
燃料タンク容量(ℓ):70

1速:3.071
2速:1952
3速:1400
4速:1033
5速:0.771
後退:3.186
ファイナルレシオ:4.390

ステアリング:ラック&ピニオン
サスペンション前:ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション後:ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ前:205/50ZR15
タイヤサイズ後:225/50ZR16
馬力荷重(kg/ps):4.82
最小回転半径(m):5.8
10モード燃費(km/ℓ) :8.3
東京地区標準価格(万円): 800.0

フェラーリ/ポルシェと「ガチ」て戦うため、ライバルとは一線を画した設計が随所に見られる

写真左はフェラーリ348tb、右はは964型ポルシェ911。実はホンダ内部での開発中の仮想敵はいずれも一世代前のフェラーリ328と930型ポルシェとしていたのだが、NSXが量産されるころにいずれも一世代新しくなっていた。

ミッドエンジン車らしい、限界の高いコーナリング特性を持ちながらも、グランドツーリングカートとしての安楽な側面を持ち合わせているのNSXだ。

開発終盤にVTEC化されたエンジン

搭載されるエンジンはレジェンドに端を発するC系のV6·C30型。排気量3ℓのこのエンジンは、当初SOHCで開発が進んでいたが、開発終盤になってOOHC化が上層部より命じられ、さらにVTEC搭載も課せられたという経緯を持つ。

元社長も携わったオールアルミボディ

NSXの白眉はやはりオールアルミボディだろう。軽量化のための方策として採られたもので、これは世界初の試みとなった。尚、このアルミボディ開発には元代表取締役社長だった伊東孝紳も深く関わっている。
NSXの透視図。かなり密なパッケージであることがうかがえる。

4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション

NSXの足回りは前後ともダブルウィッシュボーン式。その開発過程には中嶋悟やアイルトン・セナらも関わっているが、最も大きくこの足を進化させたのは当時の日本車がほとんどテスト に使うことがなかったニュルブルクリンクだった。

”人間優先”。世界に類を見ないパッケージングが「その後」を変えた

NSXでは従来スーパースポーツとは異なり、まず最初に居住空間を大きく採ることからパッケージングを始めた。このため同車の室内は非常に広々としており、また、視界も非常にいい。さらにはデビュー当初からATを設定して、イージードライビングを「悪」とはしていなかった。それでいて限界性能はすこぶる高かったため、」スーオアースポーツにおいても快適性と速さが両立することが証明され、その後の同ジャンルの流れを大きく変えていくこととなる。

広大なトランクも理詰め

NSXではコルフバッグが2個搭載できる、と言われるほど大きなトランクルームを持つことも特徴的だった。ただしこれ、トランクルーム拡大だけが目的ではなく空力性能の向上、及びミッドシップエンジンによる熱対策を兼ねた一石二鳥のものだったと開発責任者は述懐している。

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