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ホンダS500-800(1963)きわめてユニークなDOHCモデル【週刊モーターファン ・アーカイブ】

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1966年発表のS800。これがシリーズ最終グレードとなった。グリルのデザイン変更などもあるが、大きな違いはボンネット上のパワーバルジ。大きくなった排気量を象徴した。

4気筒のDOHCエンジンに4キャブレター。小さなボディにハイスペックを凝縮したSシリーズは、まさにホンダを代表する存在。短期間で性能を進化させたことにも注目したい。

週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。

解説●渡辺 陽一郎(60年代国産車のすべて より 2012年刊)

S600クーペは1965年の発表。これまでもデタッチャブルのハードトップはあったが、クローズドのモデルは初めて。

ホンダが最初に手がけた4輪乗用車は63年発売のS500であった。事の起点は62年の東京モーターショーでのS360とS500のプロトタイプの出品だ。そして実際には、S500のみが発売されることになった。しかしS360のその内容については、業界関係者には伝えられていたようだ。

S360とS500は、エンジンの排気盤は異なるが、メカニズムは基本的に共通。直列4気筒のDOHCエンジンに、4つのキャブレターを備える凝った造りであった。

エンジン性能は、S360は最高出力が33ps(9000rpm)、最大トルクが2.7kgm(7000rpm)とされる。市販されたS500は、44ps(8000rpm)/4.6kgm(4500rpm)。いずれも際立って高回転指向だ。

1964年発表のS600。S500よりボア、ストロークとも拡大した606ccで、57ps/8500rpm、5.2kgm/5500rpmのパーフォーマンスを得ている。

ちなみにショーモデルで終わったS360は、軽自動車規格に収めるためにボディ後部を切り詰め、ユニークな外観を呈していた。同じ成り立ちのエンジンが、軽トラックのT360に搭載されて63年にデビュー。DOHCエンジンと4キャブレターという、きわめて贅沢なトラックだった。

駆動方式も個性的。駆動力はプロペラシャフトによってデファレンシャルギヤに伝えられるが、デフケースは車両の前寄りに備わり、ボディ下まわりの骨格に固定されている。

そこから伸びたドライブシャフトの先端にギヤを装着。チェーンを使って後輪を駆動した。チェーンが収まるケースは、後輪を支えるトレーリングアームの役目も担い、独立懸架を成立させている。

1962年12月8日のプロトタイプ撮影会でのカット。右奥がS360で、リヤオーバーハングが短く切り詰められている。手前と左がS500だが、量産モデルはサイズが変更されたため、幻のボディとなった。

S500のボディはオープンのみ。全長は3300mm、全幅は1430mmだから、全長は今日の軽自動車とほぼ同じ。全幅は45mmほど狭くなる。世界的にも最小サイズのスポーツカーであった。

64年にはS600に発展。最高出力は13馬力高まって57ps、最大トルクは0.6kgm上まわる5.2kgmになる。65年にはファストバックスタイルのボディを持つS600クーペも加えた。

そして66年には791ccの排気量を持つオープンボディのS800とクローズドのS800クーペを追加。最高出力は70ps(8000rpm)、最大トルクは6.7kgmに達した。

手元にある当時の雑誌公告を見ると、「本格的100マイルカー誕生!」というキャッチコピーと併せて、「最高速度160km/h・加速性能16.9秒/0~400m」という記載がある。ホンダのクルマ造りも本格的になっていた。

62年の東京モーターショーのプロトタイプ展示後、1963年に発売されたS500。
プロトタイプとはサイズ、重量ともに増加した。

コンバクトな幻のS360

最も注目されていたのは、やはりS360。軽スペックのスポーツカーとして大いなる期待を受けた。しかし、実際販売されたのは大きく仕様変更を受けたS500のみ。重量も大幅に増加せざるを得なかった。それらのことからも、軽パッケージでのスポーツカーの実現はかなり難しかったものと思われる。

こちらはS360のインパネ周り。コンセプトカーらしく、その作りの精細さに驚く。きっと量産モデルもこうしたかったのだろう。

SPECIFICATIONS:S500市販モデル(S360ショーモデル)1963

〈寸法重量〉
全長×全幅×全高:3300×1430×1200mm(2990×1295×1146mm)
ホイールベース:2000mm
トレッド前/後:1203/1160mm
車両重量:675(510)kg
乗車定員:2人
〈エンジン〉
直列4気筒DOHC
ボア×ストローク:52.0×57.0mm
総排気量:492(356)cc
最高出力:47(33)ps/8500(9000)rpm
最大トルク:4.6(2.7)kgm/4500(7000)rpm
燃料供給装置:4キャブ
〈トランスミッション〉
5MT
〈駆動方式〉
RWD
〈ステアリング型式〉
ラック&ピニオン
〈サスペンション〉
前・ダブルウイッシュボーン式、後・トレーリングアーム〔チェーン駆動兼用〕
〈ブレーキ〉
前・リーティングトレーリング式ドラム、後・リーディングトレーリング式ドラム
〈タイヤサイズ〉
5.20-13-4PR(5.20-12-2PR)
〈最高速度〉
142(120)km/h以
〈価格・当時〉
45.9万円

モーターファン別冊 その他のシリーズ 60年代国産車のすべて

「00年代国産車のすべて」「90年代国産車のすべて」「80年代国産車のすべて」「70年代国産車のすべて」と10年刻みで製作してきた雑誌ですが、こちらは60年代版。60年代とは日本車がオリジナルに目覚めた時代といってもいいでしょう。トヨタ2000GTを頂点として、いすゞ117クーペや日産スカイラインGT-R、日野コンテッサ、日産ブルーバード410,510そして2代目、3代目コロナと、様々な名が生まれたのも60年代です。これらのクルマを60年代のモーターファン誌の写真と記事をベースとして紹介しています。知らなかった事実に出会えるかもしれません。

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