【美しすぎるクルマ・ベスト3(諸星陽一)】新型も気になるけれど、やっぱり心に残っているのは初代の日産フェアレディZ
- 2020/11/12
-
諸星 陽一
諸星陽一さんが選んだ3台の「美しすぎるクルマ」は、ランボルギーニ・ミウラ、プジョー406クーペ、そして日産・フェアレディZ。9月に新型のコンセプトモデルが発表されたばかりのフェアレディZだが、諸星さんの心に残っているのは初代Z。そのクルマをデザインした松尾良彦さんは、豪快な人柄だったようだ。
TEXT●諸星陽一(MOROHOSHI Yoichi)
またまた難題ですよ。美しいクルマ3台を選んでくれって言ったって、そんなもの3台に絞れるわけがない。そもそもクルマが誕生してから今まで、どれほどのデザインが絞り出されてきたのか? そのうちから3台を選ぶなんて地獄の作業です。そして気まぐれな私はそのときの気分によって感じ方が違います。幸い指示書には「ベスト3を選べ」と書いてありますが、ベスト3をランキングしろとは書いてありません(勝手な解釈)ので、3車を紹介します。
1台目:ランボルギーニ・ミウラ
「エキサイティングなのはカウンタックだが、美しさではミウラが上」
最初の1台はランボルギーニ・ミウラです。スーパーカー世代である私にとって、もっともエキサイティングなクルマはランボルギーニ・カウンタックなのですが、そんな私にとっても美しいという視点で見ると、やはりカウンタックよりもミウラが上です。
最大のポイントは曲面で構成されるパネルです。直線と平面をメインに構成されるカウンタックに対して、曲面が特徴的なミウラは生物的な魅力にあふれています。ミウラもカウンタックもデザインは、ベルトーネに所属していたマルチェロ・ガンディーニが行っているのはじつに不思議ですし、彼の多様性には頭が下がります。
ボディパネルでいえば、フロントフェンダーの盛り上がりがたまりません。私にとって、ボンネットよりも上にあるフェンダーラインは絶対領域なのです。そして、後端が持ち上がってポップアップするヘッドライトのギミックは髪の毛をかき上げてうなじを見せる女性のごとく美しい動きです。
現在のようにヘッドライトそのものをデザインできなかった時代、どう化粧し、どう動かすかは重要なポイントです。初期のP400、中期のP400Sに採用されたまつ毛状のお化粧も洒落っ気を感じます。
2台目:プジョー406クーペ
「各パートに主張があるのに、破綻していない。これぞ美人の条件」
次なるモデルはプジョー406クーペです。このクルマとの出会いは広報車でした。当時はまだインチケーブ・プジョー・ジャパンという会社が取り扱っていた時代です。
ひと目見て、なんとも言えない全体的なまとまり感と美しさに圧倒されました。どこがどう...ではないのです。どこかにインパクトがあるというデザインではないのですが、ひとつひとつのパートパートに主張があるのに、それが隣のパートをスポイルすることがない、全体のバランスを崩すことがないのはまさに美人の第一条件であり、それを満たしているのが406クーペだと私は信じています。
この406クーペのリヤフェンダー下側には、プジョーとは異なるエンブレムが装着されています。そのエンブレムに刻まれる文字は「pininfarina」。そう、多くのフェラーリ車のデザインを手がけたことで知られるイタリアのカロッツェリア、ピニンファリーナです。私はこのエンブレムに気付くよりも早く、406クーペの魅力にとりつかれました。エンブレムは確かな魅力のあとからついてきた、お墨付きような存在だったのです。
3台目:日産フェアレディZ(初代・S30型)
ヘッドライトの処理とボンネットのパワーバルジに目を奪われた
さて、最後の1台は国産車です。近頃、新型のデザインコンセプトが発表され話題になったクルマ...と言えば日産フェアレディZです。どのZ? そりゃあもちろん初代のフェアレディZです。
初代フェアレディZとの出会いは、子供のころ近所の車庫に駐まっていた赤いZです。当時、輸入車(当時は外車って呼び方でした)なんて見る機会が少なく、スポーツカーだってそんなに見かけることはありませんでした。そうしたなか、フェアレディZは割と目にすることが多かったスポーツカーです。でも、見るたびにワクワクし、駐まっていれば近づいてあちこちを見入ったクルマでした。
なによりも目を引いたのが、ヘッドライト部分の処理とボンネットのパワーバルジです。ウエッジシェイプのボディに対しどうヘッドライトを取り付けるかは、デザイン上の大きな課題と言えます。もっともそんなことは今だから思うことで、当時にしてみればカッコいいの一言に尽きます。そしてボンネットのパワーバルジも同じです。
当初のデザインではこのパワーバルジは存在しませんでした。ところがエンジンを載せようとしたら、ボンネットが閉まらない、そこでこのバルジを設けたという逸話が残っています。
デザイナーは日産自動車に所属していた松尾良彦氏。松尾氏は惜しくも2020年7月に鬼籍に入られました。日産を退社してからは、フリーのジャーナリストとしても活躍しておられ、私の所属するAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)の会員でもありました。
松尾氏と出張でご一緒した際、大きなカバンをもつ私に「なんで1泊なのに君はそんなにカバンが大きいんだ?」と聞かれました。「寝相が悪くて、ホテルの浴衣じゃだめでスエットの上下がないと寝られないんですよ」と答えた私に松尾氏は「面倒だねー。オレなんてパンツ1枚あれば十分だよ」と。“すごいデザインする人は、けっこう豪快なんだなー”と印象に残っています。
追伸:フェラーリ246GTディーノ、フェラーリ356GTB/4デイトナ、ACコブラ、ロータス・セブン、ジャガーEタイプ、トヨタ200GT、フォードGT40、メルセデス・ベンツ300SL、マツダ787……あー、、、悩む。
『美しすぎるクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
どんなに走りが楽しくても、どんなに乗り心地が良くても、ブサイクなクルマには乗りたくない。そう、デザインはクルマの命。ということで、これまで出会ったクルマの中からもっとも美しいと思ったベスト3を毎日、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費...
- 2021/03/26
- インプレッション
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形...
- 2021/04/03
- インプレッション
日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に...
- 2021/02/20
- インプレッション
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこ...
- 2019/08/11
- インプレッション
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4と...
- 2021/06/28
- インプレッション
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計って...
- 2019/08/09
- インプレッション
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ
フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chap...
- 2018/08/28
- 新車情報
マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善...
- 2020/04/26
- コラム・連載記事
マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエン...
- 2019/07/15
- テクノロジー
ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態
- 2020/04/19
- テクノロジー
林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えて...
- 2020/02/24
- テクノロジー
マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレイ...
- 2019/07/27
- テクノロジー
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報
日産 フェアレディZ
3.0バージョンST 6MT V型6気筒DOHCツインターボ Bモニタ インテリジェントエマージ...
中古価格 721.9万円
日産 フェアレディZ
バージョンST 【即納!新車未登録!】内装レッド 6速MT BOSEサウンド 9型ニッサンコネク...
中古価格 748万円
日産 フェアレディZ
バージョンST 6速マニュアル/BOSEサウンド/メーカーナビ/フルセグTV/Bluetooth...
中古価格 711.9万円
日産 フェアレディZ
ベースグレード 禁煙車/純正ナビ/Bカメラ/ETC/TV/純正フロアマット/HIDヘッド/スマー...
中古価格 299.1万円
日産 フェアレディZ
バージョンS ニスモ仕様/20インチニスモアルミ/社外マフラー/車高調/カーウィングスナビ/バッ...
中古価格 359.8万円
日産 フェアレディZ
ベースグレード 純正HDDナビ 禁煙車 メーカーオプションHDDナビ フルセグ CD CD録音機...
中古価格 224.3万円