なんと重量700kgのスポーツカー! ダイハツと童夢がコラボ!! 第29回・東京モーターショー (1991年) 3/4話 【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】
- 2020/11/13
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荒川 健
史上まれにみる充実の1991年東京モーターショーも3回目、前回は当時を思い返し少々熱く語りすぎたが、今回はちょっと冷静にエポックメーキングな展示車のデザインはどうであったのか検証したい。
ダイハツと童夢が作り上げた最小スポーツ
第一番目はダイハツX-021だ。
数多くの参考展示車の中でコンセプトに際立った特徴が無かったこともあり、目立たなかったのが残念なライトウエイトスポーツである。
ニッポンのカロッツェリア、童夢との共同開発だ。すぐにも市販できそうな内容で伝統的なフロントミッドシップエンジンのFRPボディ、車体重量はなんと700kg ! 前後の重量配分は50対50という理想のディメンションをしている。1989年にデビューしたマツダ・ロードスターに刺激されたのは明らかだが、さらなる丸いデザインに挑戦したロングノーズ&ショートデッキのサイドビューは極めてカッコよかった。
しかしポルシェが長年培ってきた伝統の顔を彷彿とさせていたり、丸くしたかったのは理解できるが自動車デザインに欠かせないショルダーのハイライトラインやサイドの面の反射が揺らいでいたりなど造形の調整不足が気になった。どうせならFRPなのでフロント部分だけACコブラ風のバージョンも作り童夢から500台限定で発売になれば、ローンで購入したいなーと当時妄想したクルマだった。
トヨタと日産のコンセプトも興味津々に
次はトヨタのコンセプトカーAXV-4である。
ニッポン人離れしたセンスのコンパクト2シータークーペで、フィアットから発売されてもおかしくないデザインで可愛らしく好感が持てた。ボンネットがどのように開くのかは不明だが、パーティングラインがないとクルマはカッコよく見える貴重な参考例だ。
基本デザインが優しい雰囲気で、とんがったデザインのトヨタ車の中で私には魅力的に感じられたが、トヨタらしくないデザインをあえて提案してきた理由が気になったため印象に残ったクルマである。
ニッサンのコンセプトカーDUADもご紹介したい展示車だ。
風を切って走る4輪バイクみたいなコンセプトで、私も後年独立し会社を立ち上げた際、最初に受注した仕事でこのテーマを取り上げた。私にとってもいつかは実車を作ってみたい魅力的なアイテムなのである。
DUADは革のつなぎにヘルメットが似合うはずなのに、ステージ上にはクラブに似合いそうなドレスアップしたコンパニオンが何人も微笑んでいて、担当したデザイナーの方はものすごく違和感を感じているのではないかと、他人事なのにわが身に照らして心配してしまった。
今回改めて写真を見てみると、意外にボディが大きいのに気が付いた。細部まできめ細かくデザイン処理がなされ、ニッサンにとってメインテーマでは無いにもかかわらず力の入った展示車であった。予算がたっぷり有ったバブル期のモーターショーを彩る名わき役みたいな存在で、私にとって印象に残った1台なのである。
海外からも多数出品、まるで現在の中国のよう
次にメルセデス・ベンツのコンセプトカーF100も取り上げなければならない展示モデルである。
当時トヨタ・エスティマなどが発売され、ブームの兆しが見え始めたミニバンのカテゴリーに、メルセデス・ベンツが本気で取り組んだ最新技術満載のコンセプトモデルだ。
デザインも斬新で現代でも全く古さを感じさせない永続的なデザインは、ベンツの風格さえも感じさせるバランスの良さがカッコよかった。
ノーズの低いワゴン車の安定感にミニバン並みの居住性の両立を狙った新しいスタイルは、後のBクラスやFクラスに受け継がれている。
ドアの下部がシースルーになっているところがデザインの最大の特徴だ。
外の景色をリアルに楽しめるという異次元ドライブを提案していて、優れたハードウエアだけでなく新たなソフトウエアを提供したところを私は高く評価したい。
次回はいよいよ私が担当した第2弾、マツダ水素ロータリーエンジン車HR-Xをご紹介しよう。初公開の写真が見つかりました。実際に時速30km以上で走行できたのです! その現場に立ち会いました。お楽しみに。
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