ポルシェ・タイカン ターボ | まるで『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲 心のセーフティロックを解除し、発射するつもりでアクセルペダルを強く踏み込むと弾けたように加速する
- 2021/01/10
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世良耕太
タイカンには「4S」と「ターボ」、「ターボS」の3種類の仕様がある。前後2基のモーターを合わせたパワーユニットの最高出力は、4Sが320kW(435ps)、ターボとターボSは共通で460kW(625ps)だ。ターボとターボSの違いはローンチコントロール選択時のオーバーブースト出力で、ターボは500kW(680ps)、ターボSは560kW(761ps)となる。日常的には460kWもあれば充分だ。いや、待ちなさい。つい先日発表になったばかりのポルシェ911 GT3 Cup(992)の最高出力は375kW(510ps)である。タイカンはとんでもない実力を備えていることになる。
試乗車はターボだった。ターボは20インチ、ターボSは21インチのタイヤ&ホイールを標準で装備するのが識別点のひとつなのだが、試乗車はオプションで21インチホイールを装着していた。「毎日の利便性を考えたスポーツカー」の言葉にうそ偽りはなく、都内の幹線道路で周囲の流れに乗って走るに際し、アクセルペダルのコントロールに一切気を遣う必要はない。静かで、スムーズで、極めて高い剛性「感」をシートに触れる皮膚やステアリングを握る手の感触、それに耳に届く音から伝えてくる。
一瞬「あれ?」と思ったのは、減速フェーズでのことだった。ステアリングの裏に回生ブレーキの減速度を調節するパドルが備わっていると思い込んでいたのだが、見事に空振りした。それではシフトセレクターを倒して、と思ったものの、そもそもタイカンにはそんな旧態依然とした部品はついておらず、小さなシフトセレクターはステアリングコラムの左脇についている。減速したければブレーキペダルを踏め、ということだ。
センターのタッチディスプレイで走行機能を切り替えることが可能で、「アクセレーター」のメニューを呼び出してオンにすれば、回生ブレーキを機能させることができる。それにしても一般的なDレンジとBレンジほどの違いはない。繰り返すが、減速したいときはブレーキを踏めということなのだ。
そのブレーキだが、2基合わせて460kWの高出力モーターを積んでいる恩恵で、基本的には減速Gが0.4G以下の場合は回生ブレーキでカバーしてしまう。油圧ブレーキの力を借りるのは、減速Gが0.4Gより大きい場合(相当な急減速だ)に限られる。「いまの回生? それとも油圧?」と探り当てようとしても無駄骨に終わるのでやめておいたほうがいいだろう。しっかりしたタッチと剛性感のある減速フィーリングを返してくれるだけだ。
走行機能の切り替え画面には、「E-Sport Sound」という項目がある。これを手動でオンにするか、ステアリングホイールの右下に備わる走行モード切り替えダイヤルで「Sport Plus」を選択すると、人工的に増幅したモーター音が響くようになる。ギミックに違いないが、そうバカにしたものでもない。ウワンウワンとSFチックにうなる音がなにかの準備をするように感じられたので、この感覚はなんだろうと思いを巡らせたところ、思い当たる節に行き当たった。
『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲である(世代限定の例えで恐縮です)。心のセーフティロックを解除し、発射するつもりでアクセルペダルを強く踏み込むと、タイカンはまるで弾けたように加速する。これが625psの実力かと実感する瞬間だ(床まで踏み込んだときは680psか)。遠のきかける意識をなんとか踏みとどまらせようとする行為は病みつきになる。一度でもタイカンの波動砲を体感した後では、このクルマを見る目が変わるはずだ。こんなに澄ました姿をしているのに、なんと激しい一面を持っているのかと。
ポルシェ・タイカンターボ
全長×全幅×全高:4963mm×1966mm×1381mm
ホイールベース:2900mm
車重:2305kg(DIN)
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式&マルチリンク式
駆動方式:ツインモーター4WD
パワーユニット
形式:永久磁石同期モーター
ポルシェ E-パフォーマンスパワートレーン
最高出力:625ps(460kW)
680ps(500kW)ローンチコントロール時
最大トルク:850Nm(ローンチコントロール時)
2速トランスミッション:リヤ
1速トランスミッション:フロント
リチウムイオン電池
総バッテリー容量:93.4kWh
バッテリー容量:83.7kWh
航続距離:383-452kmkm
電力消費率:26.0kWh/100km
車両本体価格:2023万1000円
試乗車はオプション321万9000円付き
21インチTaycan Exclusiveデザインホイール 56万4000円 ホイールジェットブラックメタリックペイント仕上げ19万8000円、リヤアクスルステアリング、パワーステアリングプラス38万9000円など
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