マツダの制御技術によるアップデートは体感できるか? MAZDA3のSKYACTIV-X&D1.8のアップデート版に試乗
- 2021/02/18
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世良耕太
前記2.の「車両ダイナミクス性能の進化」は以下の4つの項目で成り立っている。
1. GVCアクティブエアシャッター協調制御の追加(SKYACTIV-X)
2. スポーツモードにGVC追加(SKYACTIV-X)
3. エンジン出力向上に伴うi-ACTIV AWDの進化(SKYACTIV-X)
4. サスペンション前後バランスの見直しによるフラット感の向上(全車)
MAZDA3は空気抵抗の低減とエンジンの熱マネジメントを両立するためにフロントグリル内にエアシャッターを装備している。SKYACTIV-X搭載車ではエンジンの熱効率のためにシャッターの開閉を緻密に制御するが、開閉状態に応じてリフト特性が微小ながらも変化する。その変化に合わせてGVC(Gベクタリングコントロール)を協調制御するようにしたのだ。シャッターが閉まっているときはリフトが小さいので(フロントタイヤに充分荷重が乗っているため)、エンジンのトルクを制御することによって行なうGVCは弱めに制御する。反対にシャッターを開くときは、フロントリフトの増加に応じて(フロントタイヤの荷重が減り加減なので)GVCのゲインを増やしていく。
「(シャッターが開いていると)リフトが出て接地荷重が減り、タイヤが出せる横力が減っていきます。その減った荷重を補うためにGVCのゲインを上げていきます。直進時だとエンジントルクで2〜3Nmの差にしかなりませんが、そうした細かなトルクを制御できるくらい、エンジンのポテンシャルが上がりました」
SKYACTIV-XはEGRの予測精度が上がったため、より緻密にトルクの制御を行なうことができるようになった。そのおかげで、車両運動制御の能力を引き上げることができるようになったのだ。
AT車に設定されるドライブモードの場合、従来のスポーツモードではエンジンの応答性とATのシフトパターンを変化させることでドライバーのアクティブな運転操作に対してリズミカルな応答を提供してきた。今回の商品改良では、GVCの制御量を変化させることで、よりダイレクトなステアフィールを実現し、リズミカルな走りの一体感を高めている。
i-ACTIV AWDの進化はエンジンの出力/トルクの向上に合わせたものだ。駆動トルク配分自体は変わっていないが、原資が大きくなったのでリヤに配分されるトルクの絶対値が上がり、4WDとしてのポテンシャルが上がったということだ。「ニュートラルにできる範囲を少し拡大することができた」と開発担当者は説明する。ここでも、エンジンの応答性が向上しているのが効き、ドライバーのアクセル操作に対して素早くリヤにトルクを伝えることができるようになっているという。そのため、回頭性も上がる方向だ。
サスペンションに関しては、車両フラット感の向上を狙った。フロントはコイルスプリングのばね定数をアップし、ダンパーの減衰特性を変更。さらに、バンプストッパーの特性を変更し、初期ばね定数をダウンした。いっぽうリヤはダンパーの減衰特性を変更している。
「リヤのダンパーは微調整。フロントのダンパーはメインバルブの1枚目を厚いものに換えています。微低速の領域ではバルブの剛性をじゃっかん上げて、縮み側をしっかりさせる方向。(定数を上げた)ばねと縮み側の減衰力がしっかり効くことで、路面からの入力に対してサスペンションがしっかりする。その結果、タイヤがうまい具合につぶれてくれると考えています」
フロントダンパーの伸び側はバルブ域と呼ばれる中速域の剛性を下げている。マツダがMAZDA3に行なった商品改良についてはエンジンだけが主役でないことは、運転してみるとわかる。タイヤがひと転がりし、路面の補修跡のような小さな突起を乗り越えた瞬間に「あれ?」っとなる。「なんだか、いなしかたが気持ちいいぞ」と。周囲の流れに合わせてアクセルペダルの動きだけで車速をコントロールし、遅いクルマに引っかかったので車線変更をしたり、首都高速に入るために上り勾配を駆け上がったり、合流と分岐でタイトなコーナーをクリアしたりするうちに、運転それ自体を楽しんでいる自分に気づく。
その気持ち良さの由来は、思いどおりにクルマが反応してくれることにある。それに、ドライバーがステアリング、アクセル、ブレーキを操作した際のリアクションが心地良い。マツダはクルマづくりの哲学を示す表現として「Be a driver.」という表現を用いているが、言い得て妙である。MAZDA3は今回の商品改良により、以前にも増してドライバーの気持ちにフィットするクルマになった。クルマを運転することの楽しさを再認識させてくれる。
なお、予防安全性能の進化については、追従走行機能とステアリングアシスト機能で車線の中央を走行するCTS(クルージング&トラフィックサポート)の作動を高速域まで広げた(商品改良前は60km/hまで)。「ステアリングを積極的に握ってもらいたい」という考えで高速域に対応していなかったが、「ロングドライブでの疲労軽減につなげてもらいたい」という考えに改め、ソフトウェアの変更で対応したものだ(MX-30で適用した内容と同じ)。MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)と合わせて進化している。
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