火曜カーデザイン特集:新型ホンダ・ヴェゼル 沈黙の美徳をあなたに 新型ホンダ・ヴェゼルの本性を見た
- 2021/02/23
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CAR STYLING編集部 松永 大演
2021年4月に発表される新型ホンダ・ヴェゼルが初公開された。ホンダにとってヴェゼルは、BセグメントのSUVという激戦区にあるモデルで、非常に好評を得たモデル。それだけに、キープコンセプトも予想されたが、実際のモデルはまさに刷新を受けた。
ますます注目のBセグメント派生SUV
ここのところ大人気を博しているBセグメント派生のSUVモデルは、大きな転換期にあるといえる。安全装備などをはじめとした先代モデルからの充実した装備は、さらに一般化することによってこのクラスのモデルたちの存在価値を大きく高めた。もはやこれ以上のクラスが必要ないほどに、不足のないモデルに成長した。それはヴェゼルだけでなく、世界的な同クラスの車たちの傾向でもあり、どう個性を出していくのかが問われる時代となったのだ。
ほぼ同時期に新型となっているプジョー2008、ルノー・キャプチャーなどのデザイナーに話を聞くと、ともに先代が大人気であったにも関わらず総じて「キープコンセプトではあるが、このままであってはいけない」と感じていた。より品質を高めるだけでなく、車としての本質の価値を高めることに躍起となっていた。
新型ヴェゼルにとっても、実はここに大きなテーマがあった。このクラスのモデルはBセグメント派生と言いながらもSUV化するにあたり、サイズがやや大きくなることでCセグメントに近づくモデルも少なくない。サイズ拡大が、居住空間や荷室スペースを拡大し、さらにはワイドトレッドが落ち着きのある走行性能をも実現することになっている。これらのことが、Bセグメント派生のモデルをより上質化させるにふさわしい素性と捉えられ、進化の方向性を見出させた。
ヴェゼルの見せる異なる狙いとは
実はその方向性は、世界的に見ても不思議なほどに同じベクトルにある。それは端的にいって、堂々と見せることだ。フロントノーズを下げずにボンネットの存在感を明確化し、堂々とした佇まいを見せる。これまではフィットなどBセグメントにプラスアルファの価値を与えたものだったのだが、全く独自のモデルとしての価値を高めた。
しかしヴェゼルの場合、ここからが違う。
求めたものは「信頼」「美しさ」「気軽な愉しさ」だという。
想定するユーザーに、ジャネレーションCというものを定めたというが、これは北米で分類されだした一つの集合で、基本的に年齢は限定しないヤングジェネレーションで、Computer(コンピューター)、Connected(接続)、Create(創造)、Community(共同体)、Change(変化)、Content(内容)、Communication(交流)、Collaboration(協力)、Contribute(貢献)、Casual(軽装)などの言葉が並べられる。
ホンダでは、とりわけ年代ではまとめられない、一つの方向性のある人たちと解釈しており、このCの言語を駆使する人たちを洗練された現代を代表する層としながらも、意外にも「控えめ」や「あえて強く自己主張しない」といった性格の人たちも少なくないとも捉えている。
このことが、新型ヴェゼルの方向性を劇的なまでに変えたといっていいだろう。垂直にそびえ立ちながらもボディ同色としたルーバーグリルは、力強い存在であるはずなのに、いたって控えめ。ボディサイドも力感という形容詞は、あまり使う余地がない。ボンネットのパーティングラインから伸びるキャラクターは、水平に後方へ伸びながらやがて緩やかに落ちてゆく。ホイールアーチ周囲に沿うブラックのガーニッシュも、力強さの象徴ではない。
その滑らかなボディは、穏やかな水面をセイリングするヨットのようでもある。言ってみれば、エクステリアからは、ガソリンや排ガス、馬力などのキーワードが思い浮かべられない。エレガントという色気よりも、むしろ清楚さを感じる。
雄弁な車が多い中、新型ヴェゼルが見せてくれるものは、沈黙の持つ美徳なのかもしれない。
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