火曜カーデザイン特集:三代目ホンダ・アコードに見る挑戦 リトラクタブルヘッドランプがセダンにも付いた日!
- 2021/06/01
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CAR STYLING編集部 松永 大演
この車、覚えています? おお懐かしい! と思われる方も少なくないのではないだろうか。今から36年前、1985年に登場した3代目のホンダ・アコードだ。 何よりも特徴的なのが、セダンなのにリトラクタブルヘッドランプを採用していたことだ。
スポーツカーの定番からの波及
北米で異形ヘッドランプが認可される以前、サイズの決まったシールドビームのみが利用されていた。日本では独自の基準で異形ヘッドランプも採用されていたが、北米への輸出を考慮すると北米基準のシールドビームを採用するのが王道だった。
シールドビームとはヘッドランプ内を真空にシールドして内部にフィラメント直付けとなる構造。北米では丸型と角形の2種類。どんな田舎のガソリンスタンドでもストックも容易で交換も簡単という、消耗品の王道をいった製品だった。しかし問題はデザインの自由度の低さで、その中でより空力性能を高めようと考えられたのが、リトラクタブルヘッドランプだったのだ。
その後、北米で84年に電球交換式ヘッドランプが認可され、ヘッドランプ・デザインの自由度は飛躍的に高まり、リトラクタブル式の役割もまた、終わりとなった。
そんな変遷のさなかに誕生したのが3代目アコードだ。ヨーロッパ仕様では異形ヘッドランプが採用されたものの、日本と北米などではこのリトラクタブル式となった。部品の豊富さから、消耗品としては便利な仕様だった。
ここで注目したいリトラクタタブルヘッドランプ採用車としては、まずは1982年に2代目となるホンダ・プレリュード。デザイン的には賛否ありながらも市場では大人気に。そして83年にカローラ・レビン/スプリンター・トレノ、いわゆるAE86が発表されトレノに採用し市場は湧いた。そして85年、アコードの直前にはクイントインテグラの3ドアがリトラクタブル式で登場。これまでハイエンド・スポーツカーしか採用されなかったものが、プレリュードで比較的リーズナブルなクーペに、さらにトレノやインテグラでは大衆スポーツにまで及んだ。その後、リトラクタブル式は多く採用されているが、中でも驚いたのがアコード だった。何しろ4ドアセダンにリトラクタブルヘッドランプなのだから…。
「さすがアコード」と思わせていた製品づくり
今考えると、セダンにリトラクタブル式とは「違和感」でしかないかもしれないが、当時のアコードにとっては、「さすがアコード」という認識も少なからず存在した。
というのも、アコード自体が異色の存在として生まれたのだ。76年の初代モデルでは、1.6ℓにしてパワーステアリング、パワーウインドウ、フルオートエアコン、AM/FMオートチューナーなどを採用。ハッチバックから始まりセダンも加わったが、クラスとして異例の豪華さで格上のモデルをライバルとしていた。ここから、アコードはコンパクトながら上質、ちょっと異なるライフスタイルを持つ車としての認識がなされていった。
そして81年登場の2代目は、全車にクルーズコントロールを採用、世界初のカーナビ(ガスレート式)もメーカーオプションに。さらに途中からABSの採用モデルも設定という具合。とにかく、5ナンバーのフルサイズでもないのに、その装備は驚きのものだった。
そして85年に登場したのが3代目。プレリュードの造形をよりリファインした形でボンネットとノーズをできるだけ低くした。アコードはそれだけでなく、FFとして初の4輪ダブルウイッシュボーン式サスペンションも採用するなど、セダン派ならずとも自動車好きに「欲しい」と思わせる仕様となっていた。
さらに驚きなのがボディタイプで、4ドアセダンに加えて3ドアハッチバックを大きく進化させ、エアロデッキを名乗った。
2ドアにワゴンの荷室を持ち、長いリヤサイドウインドウを持っていた。それは欧州でスペシャルビルドされるような、シューティングブレークのスタイルで、ハッチバックやワゴンとは一線を画するおしゃれな存在となっていた。加えて88年には輸入車となる左ハンドルのクーペも登場させるなど、驚きの連続ともなったモデルだった。
リトラクタブルヘッドランプは決められたレギュレーションの中で、いかに性能を高めるかという技術だったのだが、それが極めてプレミアムで、象徴的に見えたという点ではデザインの勝利ともいえるアイデアだった。
3代目アコードには既存の常識を打ち破るアイデアが豊富で、デザインは形を作るというだけではなく問題を解決する手段でもあるということがよくわかる。
それも解決するだけではなく、魅力に変えるという点で大きな価値を生むのだといいうことが、大きく理解できるものだと思う。
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