ルノー・カングー生誕20周年記念企画:その2「初代カングーを再考する」 いま、初代カングーってどうなの?『Renault Kangoo 1st Generation』
- 2018/07/05
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MotorFan編集部 小泉 建治
2018年の今年、デビュー20周年を迎えたルノー・カングー。
そろそろ次期型───三代目登場の噂も聞かれるが、
依然として根強い人気を誇っているのが初代カングーだ。
果たして今、初代カングーに乗るとどうなるのか?
あらためて稀代の名車の魅力を探る。
TEXT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
生誕20周年! フランスではどこにいっても見掛ける定番モデル
カングーがデビューしたのは1997年のフランクフルト・モーターショーだが、実際にデリバリーが本格化したのは翌98年からということで、ルノー本社としても2018年を20周年のアニバーサリーイヤーとして位置づけているようだ。
現行の二代目もすでにデビュー11年目を迎えて熟成の域に達しているが、本記事では名作との誉れ高い初代にスポットを当ててみようと思う。
古くは「キャトル・フルゴネット」、そしてその後継モデルの「エクスプレス」をルーツとするカングーだが、ハッチバックのボディ後半に角張った荷室を強引にくっつけたようなスタイル(それはそれで魅力的でありファンも多い)だった先祖たちと異なり、カングーはクリオ(日本名:ルーテシア)をベースとしつつも完全な専用ボディを与えられている。
02年に日本に導入された前期型は最高出力75psを発生する1.4Lのガソリン自然吸気で、4速ATと組み合わされる。そして03年に後期型へとマイナーチェンジされ、エンジンは95psの1.6Lガソリン自然吸気となり、5速MTもラインナップに加わった。このルノー・ジャポンが得意とする「スポーツモデルではないフツーのMT」の導入は、多くの好事家たちを唸らせた。
チープでコンパクトだけれど、その潔い割り切りが魅力
そんな初代カングーを今あらためて目の前にすると、まぁとにかくコンパクトである。とくに全幅は1675mmと5ナンバーサイズを余裕で下回り、そのくせ全高は1810mmもあるから、小さいというよりも「細い」。現行カングーの全幅は1830mmもあるから、並べてみればその差は一目瞭然だ。
運転席に乗り込んでみると、意外と開放感があることに驚かされる。頭上空間に余裕があるのは当然だが、肩回りも広々としているのだ。なぜか? クルマのキャビンというものは、正面から見るとたいてい台形になっていて、上にいくほど狭くタイトになっているものだが、カングーはほぼ正方形で、ボディ側面の上方にかけての絞り込みがほとんどない。だからタイトな全幅からは想像出来ないほどの空間が確保出来ているのだ。
鉄板がムキ出しのインテリアもカングーならではで、安っぽいと言えばそれまでだし、静粛性にも不利なはずだが、コストダウンと軽量化に貢献しているのは間違いない。それ以上に、ボディカラーを室内にも取り入れることで華やかな雰囲気を演出できていることに感心させられる。ボディカラーはオーナーの好みで選ぶのだから、その色がインテリアにもあったほうがうれしいではないか。
軽量ボディ+自然吸気+MTがもたらす恍惚のひととき
今回、試乗したのは後期型で、1.6Lエンジンと5速MTの組み合わせだ。
そろーとクラッチをつなぐと……意外とトルクがない。デビュー当初は、「トルクは十分。さすが実用車のエンジン!」などと持ち上げられていたような気がするが、さすがに現代のモノサシで計るとたいしたことはない。
だが1180kgしかない軽量ボディがもたらす軽快感は格別で、アクセルを踏み込んだ瞬間に一切のタメを感じさせることなくスッとボディが前に出る感覚は爽快だ。加えて自然吸気ならではのレスポンスも格別だ。いくら最新のダウンサイジング過給エンジンがターボラグを克服しているからといって、やはり自分の右足と駆動輪が直結したかのような自然吸気ならではの感覚にはかなわない。
それと、カングーの隠れた魅力のひとつとして、オフセットが一切ない完璧なペダルレイアウトが挙げられる。アップライトな乗車姿勢のためにホイールハウスの干渉を受けないのだろう。そして思わず声を上げてしまいたくなったのは、アクセルペダルが僅かに斜めにセットされ、下に行くほどブレーキペダルに近くなっていること。これ、ヒール・アンド・トーをやりやすくするためとしか思えないのだ!
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