4気筒の松と6気筒の梅 ポルシェ同門対決! ケイマンGTSと911カレラを真剣に較べてみた
- 2018/08/18
- GENROQ編集部
ポルシェのエントリーモデル、718ケイマン。その718にトップグレードとなるGTSがラインナップされた。性能、出力などは一番ベーシックな911カレラに近い。そこで4気筒の松と6気筒の梅、2台を同時に連れ出して、その意義を考えてみた
REPORT◎高平高輝(TAKAHIRA Koki)
PHOTO◎篠原晃一(SHINOHARA Koichi)
新しい718ケイマンGTSの7速PDK仕様の価格は1053万2000円(6速MTは999万円)、最高出力は365㎰、一方スタンダードの911カレラは7速MTで1244万円(PDKは1309万1000円)、ピークパワーは370㎰。MTモデルの0→100㎞/h加速の公称値はともに4.6秒で同一だ。おや、およそ250万円も違うのに、これならケイマンGTSでいいんじゃないか、と思った時点でもう、ポルシェの“術中”にはまってしまっている。
4気筒と6気筒の決定的な違いとは
価格もエンジンのスペックも近いとなれば比べてみたいのはクルマ好きの当然の人情だが、ポルシェはそんなに甘くない。同じブランドの中で、いわば格上の911が格下モデルに取って代わられるようなことはしない。ミッドシップ2シーターのケイマンが本当に911の代わりになるのでは、911の存在意義が疑われてしまうからだ。
ある点では911に匹敵するかも、ということはあっても、先輩後輩、あるいは兄弟の長幼の序は崩さないのがポルシェの腕の見せ所、スポーツカーの魔術師たるポルシェは長年にわたって、もう少し金額を積めば、あるいはもうちょっとオプションを加えればさらに性能がある程度上乗せされます、というモデルを並べて顧客が思い悩むような巧妙緻密なモデルラインナップを構築してきたのは皆さんご存知の通りである。
そもそも「GTS」は911からマカンに至るまで、自然吸気モデルの中の最高性能版で豪華装備のトップグレードという位置づけだったが、今やポルシェのパワートレインは911GT3以外はすべてターボユニットに換装されてしまったから話はちょっとややこしくなる。ターボかNAかは関係なく、サーキット・オリエンテッドなスペシャルモデルを除いたトップグレードというのが現在のポジションだろう。
2年前に718ケイマンと同ボクスターに生まれ変わったシリーズに「GTS」が追加されたのは昨年のこと。例によってパワーをちょっと引き上げて、他のモデルではオプションとなるスポーツクロノパッケージなどの装備を標準化、さらに専用のパーツを盛り込んで出来上がったのが718ケイマンGTSである。
2.5ℓフラット4ターボエンジンの基本形はケイマンSと同じだが、GTSでは専用のインテークチャンバーを採用、ターボチャージャーのコンプレッサーも変更し、ケイマンSに比べて15㎰と10Nmアップの365㎰、430Nmを生み出す。このパワーアップよりも先に気づくのは、さらに野太くなったようなエンジン音だ。迫力は増したかもしれないが、精悍というよりもラフになったような印象で、外で聞くとボコボコというVツインバイクのようなアイドリング音がちょっと不安にさせる。
低回転から軽く踏み込んだ時のドロドロドロといういささか不機嫌そうなサウンドも何となく初代レガシィを思い起こさせるが、言うまでもなく一般道を流している時も、7000rpmを超えてトップエンドまで回した時も、まったく不足ないどころか容赦なく速い。
ただし、4気筒ターボの回転フィーリングとエンジン音についてはやはり気持ち良い種類のものではない。以前乗ったケイマンSのような回転落ちの悪さは感じられなかったものの、いかにライトサイジングユニットとはいえ、この音で良し、これが好きという人はいないのではないかと心配になる。
その点911カレラの6気筒ツインターボは通常走行時もスムーズで静かなうえ、軽やかでレスポンスにも優れ、詳しくない人が乗ったらターボエンジンとは気づかないのではないかと思うほど。しかも回せばいかにもスポーティなサウンドと清々しい吹け上がりを楽しめる。ケイマンGTSも爆発的に回るが“バシャーッ”と情け容赦なく力ずくでパワーを絞り出している感じである。
さらにMT仕様の911では発進時にアイドリングを持ち上げてスタートしやすくする制御や、スポーツモード以上ではシフトダウン時の自動ブリッピングなど、扱いやすさにも配慮してくれている。パワーユニットについてはNA時代よりも両者の違いは明らかである。
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