日本の峠道で愉しいのはどっち? ルノー・メガーヌR.S.トロフィーvsホンダ・シビック タイプR
- 2020/02/11
- ニューモデル速報
メガーヌR.S.トロフィーの最大のライバルとして真っ先に浮かぶのは、やはりホンダ・シビック・タイプRだろう。
メガーヌR.S.トロフィーRとのニュルブルクリンク北コースにおける量販FF車最速を賭けた熾烈な戦いではメガーヌが勝利しているが、日本の道をより速く愉しく走れるのは果たしてどちらだろうか?
TEXT : 斎藤慎輔 (SAITO Shinsuke)
PHOTO : 中野幸次 (NAKANO Koji)
※本稿は2020年1月発売の「ルノー・メガーヌR.S.トロフィーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。
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シビック・タイプRは2020年モデルの登場待ち
速さの上増し。これこそがルノー・スポールにとって求められ、そして自らも求めているもの。それは唐突でも突然でもなく、タイムスケジュールに則って、商品としての魅力と存在感を高めていく道筋ともなってきた。
量販FF車最速であることを証明する舞台となってきたニュルブルクリンク北コースにおけるセアト、VW、ホンダなどとのラップタイムバトルは、運動性能を鍛えあげることには大きく貢献するものの、ともするとレーシングカーの方向性にも近づきかねない。
それこそ、メガーヌRSトロフィーRは、日常性を投げ打ってでも最速のタイトル奪還に拘ったものだと捉えているが、メガーヌRSトロフィーは、本筋の量産FFスポーツとしての頂点を目指すものとして注目を集めている。
メガーヌRSのライバルの筆頭は、ホンダ・シビック・タイプRだが、実はすでに生産完了、販売終了となっており、2020年モデルの登場まで待ちといった状況である。
そのシビック・タイプRの開発は、当然としてメガーヌRSを強く意識して行われたはずだが、開発当時はまだメガーヌは先代モデル。ボクはシビック・タイプRの発売前に、ホンダの北海道・鷹栖プルービンググラウンドのワインディングコースでも試乗したが、ここは変化に富んだアンジュレーションと勾配を備え4速、5速全開のコーナーも配したニュルを模したコース。そこで、パワーはもちろん、圧倒的なスタビリティや、安定感を携えた旋回性能に感心させられた。開発陣からは「メガーヌRSではこう安定した動きは期待できないので、ドライバーのスキルも高く要求される」といった会話をした記憶がある。
先代のメガーヌRSではたしかにその傾向はあった。けれども新型が登場して、形勢は逆転したかもしれない、と思うようになっていた。それが、動力性能的にシビック・タイプRにより接近したRSトロフィーと乗り比べてみると、むしろ2車のとくにハンドリングの違いは明快に感じられ、なにより優れた車体性能、シャシー性能を備えた上でのメガーヌRSトロフィーの4コントロールの存在は、想像以上の効果をもたらすものと感じた。
ちなみに、RSトロフィーは、RSに対しては最高出力が21㎰向上した300㎰に、最大トルクは30Nm(EDC仕様同士において)向上の420Nmまで高められてきている。メガーヌRSのエンジンが、先代の2ℓから1.8ℓへと排気量ダウンしたのは、ルノー・スポールが望んだことではないはずで、開発時点でルノー及び日産が持つパワーユニットとコンポーネントの中での、今後の排ガス対策等を見越した上での選択であって、そこには量産車としての制約が見え隠れしている。
公道域での乗り心地に違いをみせる両者
足回りはRSのシャシースポールに対してシャシー・カップが標準となり、公表値ではスプリングレートをフロント23%、リヤ35%、ダンパーレートを25%、フロントスタビレートを7%高めたとなっている。これはサーキット域ではプラスとなるのは疑うまでもないが、心配は公道域での乗り心地に我慢を強いるようなことにならないかだった。
この点では、シビック・タイプRは電子制御アジャスタブルダンパーを標準装備しているので、ダンピングの自由度は高い。コンソール部にあるスイッチでコンフォートを選択すると、エンジンのスロットルや渦給の特性が穏やかになるとともに、足はバネレートに対して極端なくらいダンピングレートが下がる印象だ。突き上げ感や強い引き戻し感などが薄れるので乗り心地がキツい感覚にはならない。かつての、ひたすら耐える乗り心地のタイプRを知る身には、驚きですらある。
エンジンを始動した際のデフォルトとなるスポーツモードでは、少し引き締まり感が得られ、ワインディング等を駆け抜ける際でも姿勢コントロール的には十分だ。+R(プラスR)モードは、公道域で必要とすることはまずないが、その際のダンピングレートはより高められる。ステアリングの操舵力も反力もずっしりと重みを増して、フィードバックレベルも高いが、公道のワインディングでは時に手応え過多の感も生じる。
メガーヌRSトロフィーは、RSに対しては明確に足の硬さを感じさせ、とくに50㎞/hあたりより下の領域では、バネレートの高さとそれに合わせたダンピングレートゆえの、ピッチサイクルの細かい、そして軽い引き戻し感を伴う揺れは意識される。だが、ゴツゴツするとか、ガツンといった衝撃が伝わってくるものではない。スポーツモデルに乗り馴れた身には、むしろ頼もしさとして感じられるレベルのものではないかと思われた。ただし、気になったのは、路面状況により、主にタイヤのショルダー剛性に起因すると思われる強めのワンダリングが生じることである。
一方、高速域での安定感や本質的な直進性はどちらもまったく不満はない。シビック・タイプRは見るからに効果のありそうな、言い換えると、ちょっと気恥ずかしいほどの空力付加物を与えられているのに対して、メガーヌRSトロフィーがRSと何ら変わらず、仰々しさがないにもかかわらず、リヤ側もデンと座っている感が得られるのは、ボディ及びシャシー剛性の高さとともに、前後空力バランスが優れているということの証だろう。
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