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陸上自衛隊:操縦台がふたつある、闘うブルドーザー「75式ドーザ」モノ凄いメカニズムに注目!

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装甲化された操縦室を持つ「75式ドーザ」。ドーザブレードは2分割式で、これは内側へ屈曲させた状態。

陸上自衛隊に配備されている「75式ドーザ」は、操縦室に装甲が施されているうえに、作業時と走行時で進行方向を変えることができるモノ凄いメカニズムを誇るブルドーザーなのだ。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

75式ドーザの後ろ姿。装甲化された操縦室の外観はこんな具合で、操縦室の覗き窓には開閉式の防弾装甲板が取り付けられている。走行時にはこの後部を前として走る。だからヘッドライトも装備され、サイドミラーも取り付けられている。

いわゆるブルドーザーの操縦区画とエンジンに装甲が施されたものが「75式ドーザ」だ。装甲は小銃弾や砲弾の破片などを食い止める能力のあるものだという。製造を担当するのは小松製作所だ。

山間部での土木作業のようす。定格出力は約160ps、登坂能力は約30度だ。写真/陸上自衛隊

75式ドーザは陸上自衛隊の施設科に配備され、戦闘職種を機動支援する目的で開発されている。施設科とは、諸外国軍では「工兵(エンジニア)」などと呼ばれる職種で、土木や架橋作業、地雷処理など多様な活動を戦闘下でも行なう。歩兵部隊である普通科、野砲やミサイル部隊の特科、戦車部隊の機甲科、これら戦闘職種と施設科は行動を共にする。地雷処理では戦闘職種よりも前に出て作業する。

75式ドーザは、この戦闘部隊が進もうとする道が塞がれていたり、損傷していた場合などに投入され、危険地域で進路を整備したり、新たなルートを切りひらくなどのために使われる。そのほか陣地構築や大規模土木作業などでも能力を発揮し、これはつまり災害派遣でも有用なことを示している。

75式ドーザが土木作業を行なうときは当然、ドーザブレード(排土板)の設置された方を前方として作業する。一方、作業地域を移るなど、ある程度長い距離を移動する走行時には、車体後部を前方(車首)として走るのだ。運転台は装甲操縦室の前と後ろに設置されていて、土木作業時はドーザ側を見て作業し、走行時は逆に後ろ側を見るように操縦者が位置を変え、運転する。だからヘッドライトは前後に2組取り付けられており、サイドミラーは車体後部にある。これは大きなドーザが移動・走行時に必要な視界の妨げになることから考えられた仕組みで、戦闘下での運用を想定した設計ということになる。

演習場内を走行中の75式ドーザ。長い距離の移動時には車体後部を「前」にして走る。本車の後ろには92式地雷原処理車、91式戦車橋が続いている。写真/陸上自衛隊

ドーザブレードは2分割式で、中央部を支点に内外へ屈曲させ角度を変えることができる。排土する方向を細かく調整することができ、効率的な作業が可能だ。本車の輸送時にはブレードを内側へ曲げ、幅を小さくして運ぶそうだ。

本車はカンボジアPKOに投入された実績があり、危険地域での有用性も確認済み。装甲操縦室を備えた土木車両ということで雲仙普賢岳など火山噴火災害での派遣対応を行なうなど、その特性を光らせた災害派遣実績も持っている。

大型ブルドーザーだから災害時の復旧作業にも役立つ。国内での災害派遣や海外PKO活動でも実績を重ねてきている。写真/陸上自衛隊

ブルドーザーとパワーショベルの機能を併せ持つ戦闘工兵車両というものは諸外国軍も装備しており、陸自でも施設作業車として保有している。施設作業車は装甲も強力で、作業の自動化も進んでいるが、調達と配備が遅く、75式ドーザを全数更新することができていない。75式ドーザはいましばらく現役を続けるのだろう。

作業時と走行時で進行方向を変え、操縦室に装甲を施したブルドーザーという、あらためてみるとモノ凄いメカニズムである本車は、おそらく、後にも先にもこれだけで、しかも日本にしか存在しないのではないかと感じる。

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