マツダMX-30「上品な見た目と触感と走りで統一されたMX-30には一度味わったら後戻りできない『良さ』がある」
- 2020/10/18
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世良耕太
マツダが新しいトライをするときに用いるモデル名「MX」。最新のクロスオーバーには、このMXが付けられた。MX-30である。新しい価値の創造にトライした新しいクルマ。マツダブランドの幅を拡げることを目標に開発されたMX-30。ファーストインプレッションをジャーナリスト、世良耕太が語る。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
MX-30はマツダの新しいクルマだ。「そんなこと言われなくてもわかっている」と反論されそうだが、これまでの路線と異なるという意味で新しい。デザイン面でマツダのメインストリームの先頭を走っているのは、MAZDA3であり、CX-30だ。新世代商品群の第1弾と第2弾である。
マツダは2010年に「魂動(こどう)デザイン」のテーマを設定し、CX-5やアテンザ(マツダ6)、アクセラ、デミオ(マツダ2)、ロードスター、CX-3などすべてのモデルを統一性のあるデザインで整えてきた。その魂動デザインの2巡目が、マツダ3とCX-30である。光の当たりかたによって表情が変わるエモーショナルなデザインに進化している。
MX-30は明らかに、マツダ3やCX-30と違うラインを走っている。それもそのはずで、開発責任者の竹内都美子主査には、「新しい価値を考えて作りなさい」というテーマが与えられたのだという。
「新しい価値とは技術や機能ではなく、その商品を手にとったときにどう感じるか。その商品と過ごしたときにどういう生活をもたらしてくれるのか。お客さまの心にフォーカスを当て、そのために技術を使おうと意識を切り換えました」
「自然体のプロダクトがいいね」という話にまとまったと、チーフデザイナーの松田陽一氏は補足した。気に入ったものがあったら買おうかな、という心持ちでセレクトショップに入り、思わず所有欲を刺激されるアイテムに出会う。そんな選ばれ方を想定しているのかなと勝手に想像した。
「これ欲しい」と思ってもらうためには、気を引くポイントがなければならない。そのひとつがフリースタイルドアであり、フローティングコンソールだ。エアコンの操作部は物理スイッチではなくタッチディスプレイにした。ドアグリップの手に触れる部分にコルクを用いているし、ドアトリムのアッパー部分にペットボトルのリサイクル原料を用いた繊維素材を使用。リサイクルファブリックを使ったシートも、所有欲を刺激するポイントだ。これらの素材は、「アピアランスの良し悪しだけではなく、裏にストーリーがある」ことが大事だという。
MX-30はCX-30と同様で空力も凝っているが、凝っていることを露骨に見せていない。技術や機能で訴えるクルマではないからだ。例えば、リヤのコンビネーションランプは、バックドアを降りてくる上からの流れとサイドからの流れがぶつかるポイントに位置しているが、シリンダー形状はただデザイン的にそうしただけではなく、流れをうまく整流させて抵抗(ドラッグ)を減らすのに役立てている。
バックドアの上部はルーフを通ってきた流れとボディサイドを通ってきた流れがぶつかるポイントで、凝った門型の樹脂パーツを取り付けて空気の流れを整えるのが一般的だ(CX-30を見るとよくわかる)。MX-30は門形の樹脂パーツを採用するかわりにバックドアの縁に折れ目をつけて空気が巻き込まないようにし(巻き込んで渦ができると、それが抵抗になる)、要求性能を満足させた。「技術が露骨に出る表現はしないようにしました。でないと、自然体な感じになりませんから」と、松田氏は説明した。
もうひとつ付け加えておくと、ルーフスポイラーの後端はわずかに跳ね上がったダックテール形状になっている。わずかな反りだが、これがハンドリングに効いているという。
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