造形に見るトゥインゴの狙い、まさに「小生意気」さに歓喜 <ルノー・トゥインゴ長期レポートVol.13>
- 2020/11/29
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CAR STYLING編集部 松永 大演
トゥインゴで久々に登場したRRレイアウトだが、このパッケージはある種デメリットも持つことになったが、意外なメリットも産んでいると実感した。その話は後ほどとして、まずはこの3代目トゥインゴのデザインについてちょっと見ていこう。
動と静の形、その秘密
基本的には上から見ると前後を緩やかに絞った造形なのだが、タイヤをできるだけ外に出すようにフェンダーを膨らませた安定感ある造形となっている。1.5mを超える全高があるモデルなのだが、極めて安定感ある佇まいなのは、このどっしりと広いスタンスを見せるタイヤの存在感にある。
しかしそれだけでなく、絶妙の造形センスが、ともすると「ぼってり」と見えてしまうパッケージに小生意気で、俊敏さも漂う印象を与えることに成功している。サイドビューでは前傾するウエッジと、安定した水平基調がうまくバランスしているようだ。
まずは、RRレイアウトとして、前回解説したように見た目とは別に床下が20cmほどの二重構造になっていることのメリットとして、キャビンを広く取ることができている。かなり前方に移動しているのだが、それがわかるのがフロントドアの前側のオープニングラインだ。通常は垂直になるところがフロントフェンダーにのめり込むように湾曲している。コンパクトモデルにとってRRレイアウトの大きなメリットがここにある。さらにリヤピラーを大胆にバンパーレベルあたりまで前傾させることで、荷室はやや犠牲になるものの、クラウチングスタイルのフォルムを作り上げている。今まさに走り出す形だ。
短くてもどっしりとしたフロントセクション
高いフロアによって全高も高くなっているのだが、その結果サイドビューでドアの縦幅も長くなっている。ここを退屈に見せないために、大きく効いているのが、サイドプロテクターの太さとその位置だ。もちろん実用性ある箇所になければ意味がないが、あまり高い位置に来ないようにしながら太くして、重心を低く見せている。さらにこのプロテクターをきっかけにボディを外に出すことで、ドア上部の抑揚をつけやすくしている。ここにプロテクターがなければ、サイドシルまでの長い幅のなかで抑揚を演出しなければならないことを考えれば、かなりのグッドアイデアだろう。
そしてここで生まれる前後ドア面の抑揚は軽くボールを投げた弧のように、フロントホイルアーチからリヤホイールアーチへと流れる。あまり明確には見えないがこのことが、全体の安定性を感じさせる大きな要因だと思う。それでいて、ウインドウのアンダーラインは前傾、トップラインは後傾し、ルーフも後方に下がっていく形となっている。これが止まっていても走っているような動きを表現している。
前述した前後フェンダーの抑揚は、ドア上部の外に張り出すショルダー面につながる流れだが、この表現を写真ではピンストライプが見せてくれている部分になる。基本的にショルダー面も前傾造形となりながら、フェンダー張り出し部分をみるとリヤ部分の張り出しが大きく下がり、前と後ろの張り出しの頂点あたりが前後で水平となっている。これもまた安定要素として強く効いている。リヤドアハンドルが、サッシ部分に移動しているがフロントと同じようにドア部分にあったのならば、これだけわかりやすい面はできなかっただろう。
さらに前後共ホイールアーチ部分は、もうひととフェンダーとしての張り出しを造っている。ドア面からすればショルダー+前後フェンダー部分、そしてホイールアーチ部分とふたつの抑揚を持つことになった。
また、RRレイアウトのもうひとつのメリットが、フロントオーバーハングの短さで、FFでは絶対得られないものだ。トゥインゴもその恩恵を得て極めて短い造形となっている。そのためにボンネットは非常に短いのだが、あえて下げていないものポイント。力強さのある形をしっかり見せることと、サイドウインドウのアンダーラインの延長線上にヘッドライトのトップ部分が来ることで、ここでもまた安定の形を作っている。当然ながらボンネットはそれよりも上にあるので安心感も生まれている。
そして締めくくりとなるのが、15インチという現代では小さなタイヤだ。この小さなイメージが小生意気さを演出する。
このトゥインゴは全体を見たり、近寄って見たりと仔細に観察しパッケージを考えたりするごとに、よく考えられた造形にびっくりさせられる。RRレイアウトであること、フロアの高さ、ワイドスタンス、前後のショートオーバーハング、それらのディメンジョンの全てが、このデザインを育んでいるといって、いいんじゃないだろうか。
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