ジープ・レネゲードPHEV PHEV化されて、さまざまなモードで走れるが、結局のところ「さすがジープ、雪の上でも無敵」である
- 2021/03/20
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世良耕太
ジープブランド初のPHEVであるレネゲードを、雪上で試した。試乗日の北海道地方は、時ならぬ大雪で路面状況は刻々と変化し、また過酷だった。そんな状況でもレネゲードPHEVは、ジープらしくタフで、最新のPHEVモデルらしく多彩なドライブモードが楽しめた。
TEXT◎世良耕太(SERA Kota)PHOTO◎FCA Japan/Motor-Fan
ジープ(Jeep)の起源は1941年に生まれた軍用ジープだ。今年で誕生80周年を迎える。民間人のためのSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)になってからでさえ70年以上が経過している。その間、ジープと高いオフロード性能は切っても切れない関係になった。直系モデルはラングラー(Wrangler)だが、長い歴史を通じてチェロキー(Cherokee)やグランドチェロキー(Grand Cherokee)、コンパス(Compass)といった派生モデルが生まれた。
レネゲード(Renegade)もそのひとつだ。オリジナル・ジープの血統を受け継ぐことは、7スロットのフロントグリルや台形ホイールアーチを見ればわかる。ホイールアーチが台形なのは、タイヤチェーンを脱着したり、タイヤ交換をしたり、整備や修理をしやすくするためだ。タイヤとボディの間に手を入れやすくするためで、実利的な目的が形になっている。そんな思想で設計されているから、ホンモノ感が漂う。そこがジープの魅力だ。
レネゲード4xe(フォー・バイ・イー)もジープの例に漏れず四輪駆動(4WD)だ。だが、フロントに搭載したエンジンとリヤの車軸とは機械的につながっていない。フロントは主にエンジンで駆動し、リヤはモーターで駆動する。フロントのエンジンとリヤのモーターを両方駆動したときに4WDになる。
そして、駆動用のバッテリーをたくさん積んでいるのが特徴だ。容量は11.4kWh。エンジンとモーターを組み合わせているのでハイブリッドというわけだが、外部の電源で充電できるのでプラグインハイブリッド車(PHEV)ということになる。シフトレバーの前方には、「HYBRID(ハイブリッド)」「ELECTRIC(エレクトリック)」「E-SAVE(イー・セーブ)」の運転モード切り替えスイッチが並んでいる。
デフォルトはハイブリッドだ。「ELECTRIC」を選択するとモーターの動力のみで走行するモードになる。いわゆるEV走行だ。バッテリーがフル充電の状態なら、法定モード上は48km走行できる。バッテリーの電力を使い切るか、アクセルペダル深く踏み込んだ場合はエンジンが始動して、自動的にハイブリッドモードに切り替わる。「E-SAVE」はバッテリーの充電レベルを温存するモードだ。
バッテリー残量が充分にある状態なら、「ハイブリッド」モードを選択しても基本的にはEV走行を行なう。そうしてバッテリー残量がなくなると、ガソリンエンジンを主体とした走行に切り替わる。つまり、EV走行をしているときは後輪駆動。エンジン走行をしているときは前輪駆動になるわけだ。インパネ中央部のモニター表示をエネルギーフローに切り換えて観察していると、メーター表示上のバッテリー残量が残りわずかになった状態でも、発進時は基本的にモーターで駆動する。そのほうが反応はいいし、スムーズだし、静かだからだ。ではエンジンがかかると騒々しいかというと、そんなことはなく、遮音が効いており至って静かである。
雪道での感触を確かめるのが、今回の試乗の狙いだ。北海道中南部、札幌と帯広を結んだラインのやや帯広寄りに位置するトマム周辺の雪道を走った。富良野のちょっと(といっても数十キロ)南といったほうがイメージしやすいだろうか。ともかく、一面の雪景色だったし、試乗中に結構な勢いで雪が降ってきた。
レネゲード4xeは「Jeepセレクテレイン」システムを搭載している。路面状況やドライバーが挑もうとする状況に応じて、最適なドライブモードを選択できるシステムだ。デフォルトは「AUTO(オート)」。バッテリー残量が充分ある場合は、リヤに搭載するモーターを駆動するのが基本。この状態で雪の上を走り出したのだが、雪上走行性能の高いスタッドレイスタイヤ(ミシュランX-ICE3+を装着)を履いていたためか、写真のような雪道を苦もなく走る。
安心感が増すのは「SNOW(スノー)」だ。レネゲード4xeには「Limited(リミテッド)4xe」と「Trailhawk(トレイルホーク) 4xe」の2種類の仕様があり、1.3ℓ直4ターボエンジンの最高出力はTrailhawkのほうがLimitedより48ps(36kW)高い179ps(132kW)を発生する。最大トルクは同じで270Nmだ。組み合わせるトランスミッションは6速AT。リヤに搭載するモーターのスペックはどちらも同じで、最高出力60ps(44kW)、最大トルクは250Nmである。
LimitedとTrailhawkでは、エンジンの最高出力だけでなくドライブモードの設定も異なっている。「AUTO」「SPORT(スポーツ)」「SNOW」「SAND(砂)/MUD(泥)」の4モードはLimitedとTrailhawkに共通。Trailhawkには「ROCK(岩場)」が加わる。
「SNOW」を選択すると、連動して「4WD Lock」のボタンが点灯し、機能していることを知らせる。4WD Lockは、車速が15km/h以下の場合はリヤのモーターを常時駆動させて4WDで走る仕組み。それ以上の車速では(モニターで確認する限り)、基本的にはフロントのエンジンで走行し、必要に応じてリヤのモーターを駆動してトラクションを確保する仕組みだ。
モニターで駆動状態を確認しようと試みたのだが、途中で諦めた。2WD(前輪駆動)と4WDを緻密に切り換えるのだが、2WDの状態と4WDの状態で体感上に何か違いがあるかというと何もないし、2WDと4WDが切り替わる際にショックがあるわけでもない。ただ安心感があるのみだ(言い換えれば、不安感はない)。「さすがジープ、雪の上でも無敵」の感想が沸き起こるのみである。
バッテリーの充電レベルが低下した場合はモーターが駆動できなくなってしまうのではないか。すなわち4WDにならないのではと心配したくなるが、その心配は無用。エンジンで発電した電力をリヤのモーターに供給する「パワーループ」機能を自動的に作動させることで、バッテリーの充電量に関係なくモーターを駆動させる仕組みだ。
ドライバーは何も心配する必要はない。相手はジープなのだ。万事任せておけばいい。
ジープ・レネゲード Limited 4xe
全長×全幅×全高:4255×1805×1695mm
ホイールベース:2570mm
車重:1790kg
サスペンション:Fマクファーソン式 Rマクファーソン式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:直列4気筒SOHCターボ
型式:46337540
排気量:1331cc
ボア×ストローク:70.0×86.5mm
圧縮比:10.5
最高出力:131ps(96kW)/1850pm
最大トルク:270Nm/5000rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
モーター
フロント
型式:T型交流同期モーター
最高出力:45ps(33kW)
最大トルク:53Nm
リヤ
型式:46347218型交流同期モーター
最高出力:128ps(94kW)
最大トルク:250Nm
燃料タンク:36ℓ
燃費:ハイブリッドWLTCモード:17.3km/ℓ
市街地モード18.5km/ℓ
郊外モード15.1km/ℓ
高速道路モード18.5km/ℓ
充電電力使用時走行距離プラグインレンジWLTC:49.8km
EV走行換算距離WLTCモード:48km
トランスミッション:6速AT
車両本体価格:498万円
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