【新型トヨタ・ランドクルーザー新旧比較】サイズは? エンジンは? 世界初公開の300系、200系と14年分の進化を比べてみた
- 2021/06/10
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MotorFan編集部 長野 達郎
トヨタは6月10日、新型ランドクルーザーを世界初公開した。先代モデルが2007年の登場だったので、じつに14年ぶりのフルモデルチェンジとなる。発売は2021年夏以降ということで、詳細な情報は未発表だが、ここでは2021年に300系となる新型の進化のポイントを、先代の200系と比較しながら探ってみよう。
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300系にフルモデルチェンジした新型トヨタ・ランドクルーザー。200系と徹底比較
【エクステリア】サイズは同等をキープしながらフロントフェイスはより力強く
【インテリア】ワイドディスプレイを最上部の見やすい場所に配置
【シャシー】TNGAに基づくラダーフレームを新開発して約200kgの軽量化
【パワートレーン】ガソリンとディーゼル、2種類のV6ツインターボを新開発
【セーフティ】交差点での対向車や右折時の横断歩行者を検知可能に
【GR SPORT】スポーツグレード「GR」を新設定。走りの違いは!?
【まとめ】2021年夏以降に世界各地で発売開始
300系にフルモデルチェンジした新型トヨタ・ランドクルーザー。200系と徹底比較
【エクステリア】サイズは同等をキープしながらフロントフェイスはより力強く
200系が登場したの2007年のこと。その後、15年にビッグマイナーチェンジを行い、内外装デザインに手が加えられた。特にイメージが変わったのがフロントマスクだ。塊感のあるフロントグリルには3本の極太グリルバーが配置され、陸の王者にふさわしい堂々とした顔つきに変貌を遂げた。
今回モデルチェンジした新型(300系)はフロントグリルが縦方向に拡大され、4本の横バーが力強さを演出する。LEDヘッドライトの下からグリルをぐるりと囲むようにブラックアウトされたダクトが設けられているのも特徴だ。
200系はグリルの一部がヘッドライトを貫くように伸びていたが、300系ではLEDヘッドライトのポジションランプとグリルの横バーとをつながるようにレイアウトすることで、200系からの系譜を表現している。
もちろん、ランドクルーザーであるからには、機能をおろそかにすることはできない。ライトの位置やバンパーの造形はオフロード走行時にダメージを受けにくいことを念頭に開発されている。
リヤスタイルも、新旧でイメージはよく似ている。が、注目はランドクルーザーの定番だった車名入りライセンスガーニッシュが300系ではなくなったこと。ランドクルーザーのエンブレムはボディに直付けとなった。テールレンズも300系ではより横長になったことがわかる。
リヤバンパーの左右端に設けられているのは、リヤフォグランプだろうか。クロームパーツで囲むことで、ロー&ワイド感の演出に一役買っているように見える。
また、リヤスタイルの写真を見る限りでは、テールゲートは200系同様、上下2分割式となっているようだ。
(2021年6月12日追記:「300系のテールゲートは上下2分割式から1枚ゲートに変更されたのでは?」という読者の方からの情報も編集部に寄せられました。どちらが正しいのか...詳しい情報が入り次第、続報をお届けします)
300系のボディサイズは未発表だが、悪路走破性を重視した結果、全長・全幅・ホイールベースやディパーチャーアングル・アプローチアングルなどは200系を踏襲しているという。特にホイールベースは80系から続くランクルの黄金比というべきもので、これは絶対に変えないと決めていたそうだ。
サイドから見ると、両車のシルエットはよく似ているが、300系のほうがよりダイナミックな印象を受ける。クォーターガラスは跳ね上がり、メッキモールも太くなっている。またフェンダーアーチが強調されているのも目を引く。ドアミラーがドア付けになったのも300系の特徴だ。
実は、300系の開発にあたって強く意識したのが80系だったという。1989年登場のモデルだが、今なお、歴代最高の悪路走破性を持つと言われているのだ。その悪路走破性を超えることが、300系の目標の一つだったのである。
そのほか、300系のエクステリアで気になったところをチェックしてみよう。灯火類はご覧の通り。チューブ状に光るポジションライトが今どきだ。
300系でもサンルーフ(トヨタはムーンルーフと呼ぶ)の設定があるのはうれしい限り。
【インテリア】ワイドディスプレイを最上部の見やすい場所に配置
続いて、激変したインテリアをご覧いただきたい。
クロカン4WDの場合、悪路を走破している際にクルマの姿勢を把握しやすいよう、水平基調のインパネを採用するのが定石だ。300系も水平の軸をしっかりとインパネに通した上で、最新モデルらしいデザインを採用している。
シフトレバーは200系がジグザグ式のゲートだったのに対して、300系はストレートタイプのゲートに変更されたようだ。シフトレバーを左(左ハンドルの場合)に倒すと、マニュアルモードに移行する。
メーターは200系も300系も速度計を右、回転計を左にレイアウトしたオーソドックスなタイプ。中央に液晶ディスプレイを置くのも両車で共通だが、300系は左右のメーターに隠れくらいまで大型化されており、より多彩な情報を表示できるようになっている。
細かいところだが、センターコンソールのドリンクホルダーは200系がふた付きだったのに対して、300系はふたなしとなっている。
300系で見逃せないのは、ダッシュボードの上部に配置された液晶ディスプレイだ。200系よりも位置が高く、いかにも視認しやすそうだ。サイズは不明だが、200系の9インチよりも大型化されているのは間違いない。ワイドタイプで、左右に異なる情報を表示することもできる。
その液晶ディスプレイの下には、エアコンの吹き出し口をはさんで、空調の操作パネルが置かれている。温度調整と風量調整はパドルスイッチになっており、ブラインド操作も容易であることがうかがえる。
300系のセンタークラスターのドライバー側には、走行時に使用するボタンが集約されている。リリースには情報がないのだが、写真からその使い方を類推してみたい。
一番上は、ドライブモードの切り替えスイッチ①だ。200系ではシフトレバー脇に「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ S/スポーツS +」の3つのボタンが用意されていたが、300系では1つのボタンに集約されたようだ。
一番下の「DAC・CRAWL」と書いてあるボタン②は、「クロールコントロール」用と思われる。クロールコントロールとは、アクセルやブレーキを操作しなくても、一定の低速度でスリップや空転を最小限に抑えながら走行できるというもの。ドライバーは操舵に集中することができるのだ。
中央の丸く大きいボタン③は「モードセレクト」、その下のMTSと書いてあるボタンは、「マルチテレインセレクト」用のスイッチ④だ。
200系のマルチテレインセレクトは、クロールコントロールがオンのとき、走行路面に応じて「ロック」「ロック&ダート」「モーグル」「ルーズロック」「マッド&サンド」といったモードを自動で選択し、最適な出力とブレーキ調整を行ってくれるもの。クロールコントロールがオフのときは、ロータリースイッチを操作してドライバーが任意に選択することも可能。このモード切替用のスイッチが300系ではプッシュボタンに変更されたようだ。
このテレインセレクトを低い速度域に設定しておけば、急な降坂も安全に降りることができる。ちなみに、この機能に特化したのが「DAC(ダウンヒルアシストコントロール)」で、トヨタではヤリスクロスなどにも装備されている。クロールコントロールは、降坂のみならず、岩場やモーグル、雪、ぬかるみ、砂利、草地などあらゆる路面に対応しているのが特徴だ。ちなみにクロールコントロールはオフロード走行時(L4モード時)のみで作動する。
300系ではマルチテレインセレクトがどのようなモードを備えているのか不明だが、クロールコントロールとともに相当な進化を遂げているのは間違いないだろう。
200系では機械式だったパーキングブレーキは電子式⑤となり、仰々しかったパーキングブレーキレバーが300系では姿を消し、小さなスイッチへと改められた。
その代わり、300系ではシフトレバーの横はトレーとなっている。どうやら、ここにスマホを置けばワイヤレス充電が可能なようだ。このあたりは、14年分の進化を尿実に感じさせる部分といえるだろう。
パーキングブレーキの操作スイッチの奥には、4WDのトランスファー切り替えスイッチ⑥が見える。200系ではロータリースイッチだったのが、300系ではパドルスイッチに変更された。誤操作しないよう、プッシュしながらでないと切り替えられないのは共通だ。
その奥には、ターンアシスト機能⑦(タイトコーナーを曲がる際、一定の低速度を維持しながら、ドライバーのハンドル操作に応じて回頭性を向上させる)とセンターデフロックスイッチ⑧(むかるみなどでスタックした際に使用)がある。
ちなみに、200系の最上級グレードであるZXには「4-Wheel AHC & AVS(4輪アクティブ・ハイト・コントロール・サスペンション&アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)」が標準で装備されている。エアサスではなくハイドロニューマチック式で、3段階で車高が調整できるほか、高速走行時にやL4モード走行時には自動で車高を調整してくれるというものだ。
提供された広報写真では、その車高制御スイッチが見当たらない。4-Wheel AHC & AVSが廃止されてしまったのか、それとも単に未装着なだけなのか。真偽のほどが気になる。
300系で機能が強化された装備の一つが、マルチテレインモニターだ。200系では車両下の状態を表示することが可能だった。300系では複数のカメラの映像を合成することで、まるでボンネットが透けているかのように車両前方の様子をモニターで確認することができる。タイヤを重ねて表示することで、悪路走行時に障害物を避けて走行することも容易だ。
ボディサイズもホイールベースもほぼ変更なしということなので、3列シートを備えた室内空間の広さは新旧で大きな違いはなさそうだ。
シート形状も300系では新しくなっている。どのような座り心地なのか、早く試してみたいものだ。
大きく変わった(ように見える)のは3列目の格納方法だ。200系では背もたれを前倒しした後、シート全体を左右に跳ね上げる方式だった。最上級グレードのZXは電動だったが、それ以外のグレードは手動で操作しなくてはならず、ZXでもシートを戻すのは手動だった。また、跳ね上げたシートが荷室の左右の空間を邪魔してしまうのもウィークポイントだった。
一方、写真を見ると、300系の3列目は背もたれを前に倒す方式に変わっている模様。荷室の側面には、その操作用のスイッチも配置されているようだ。格納が簡便になったのはいいことだが、床面が高いように見えるのがちょっと気になる。
センターコンソール後端は、2列目用の「おもてなし」スペース。200系も機能は充実していたが、300系ではデザインがだいぶモダナイズされたのがわかる。
エアコン操作パネル、USBポートにHDMIポート、12Vソケット、ヘッドフォンジャックがずらりと並ぶ。2列目用のシートヒーター&ベンチレーションもここから操作が可能だ。
300系のオーディオにはJBLのサウンドシステムが設定されているようだ。
300系の天井にはヘルプネットの通報ボタン、サンルーフの操作スイッチ、照明スイッチが並ぶ。
【シャシー】TNGAに基づくラダーフレームを新開発して約200kgの軽量化
基本メカニズムも、300系は刷新された。ターゲットとして掲げられたのは、徹底的な軽量化だ。
その達成のため、300系は初めてラダーフレームにTNGAの思想を取り入れた「新GA-Fプラットフォーム」を採用した。フレームには世界初の溶接技術も用いられている。そのおかげで余分な重ね合わせが不要となり、大幅な軽量化が実現。車体全体では200kgものウェイトダウンに成功した。
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤはリジッドアクスルで、200系から変更はないが、基本性能(ホイールアーティキュレーション:タイヤの浮きづらさ)を向上させたという。
特にリヤサスペンションはジオメトリーが改善された。200系は後ろから見るとショックアブソーバーがハの字に配置されており、タイヤがストロークする方向とずれがあった。これがリヤが横方向に動きやすく安定しない要因の一つだったと判明。300系ではフレームに曲げを入れることで、理想的な配置とすることができたそうだ。
そんなサスペンションに組み合わされるのが、世界初となるE-KDSS(Electronic Kinetic Dynamic Suspension System)だ。
KDSS自体は200系の当初から採用されているメカニズムで、前後のスタビライザーを油圧でリンクさせ、走行状況に応じて作動・非作動を自動で制御する。例えばオンロード走行時はスタビの機能が働いてロールを抑える一方、障害物を乗り越えるような状況ではスタビの動きはフリーとなり、ホイールストロークを稼ぐのだ。
300系のE-KDSSはこのKDSSの進化版だろうが、「接地性向上」という謳い文句以外の詳細は不明だ。
チーフエンジニアの横尾貴己さんは、オーストラリアで200系をドライブした際、「疲れる」と思ったそうだ。オーストラリアには世界の80%の路面があるといわれており、延々と続くコルゲーションやダート路面、スチュアートハイウェイでクルマの挙動に逐一注意を払う必要があったという。
そこで、300系の開発にあたっては社内の熟練テストドライバーやダカールラリー出場ドライバーがテスト走行を重ね、オンロードとオフロードの両ステージで運転しやすく、疲れにくいクルマを目指したそうだ。
今回発表された車両のホイールは20インチ。タイヤは265/55サイズを履いている。一方、200系も最上級グレードのZXは20インチだったが、285/50と300系よりもワイドなタイヤを組み合わせている。
【パワートレーン】ガソリンとディーゼル、2種類のV6ツインターボを新開発
300系はパワートレーンにも注目だ。
200系の日本仕様はV型8気筒4.7L自然吸気ガソリンエンジン(2UZ-FE)を搭載してデビュー、09年には早々に4.6L自然吸気ガソリンエンジン(1UR-FE)に置き換えられた。トランスミッションは当初の5速ATから09年のエンジン変更時に6速ATに変更された。
300系は、2種類のV6ツインターボエンジンを搭載する。3.5Lガソリンと3.3Lディーゼルで、いずれも新開発だという。一部地域ではV6自然吸気ガソリンと6速ATの仕様もあるようだ。
トランスミッションも新開発のダイレクトシフト-10AT(10速AT)が組み合わされる。燃費性能も大幅に向上し、各地域の販売計画と燃費モードを加重平均し行ったトヨタの試算では、車両使用時の年間CO2排出量を、グローバルの全台数分で約10%低減できる見込みとなっている。
新パワートレーンは重量配分の適正化にも貢献している。V8からV6になってエンジン自体の長さが短くなったことに加えて、搭載位置を下方向に28mm、後ろ方向に70mm移動させることができた。それにより、前後重量配分は200系の前55.1%:後44.9%に対して、300系は前53.5%:後46.5%となり、フロントヘビーさが大幅に改善されたのだ。
ちなみに300系が搭載するV6ツインターボエンジンは、ひょっとすると、LSで初出しされた「V35A-FTS」と同じかもしれない。このV35A-FTS、LS仕様は最高出力422ps/最大トルク600Nmというスペック。ボア×ストロークが85.5mm×100.0mmというロングストローク設計で、37%と過給エンジンとしては世界トップレベルの熱効率を達成している。
【セーフティ】交差点での対向車や右折時の横断歩行者を検知可能に
300系は、最新の「トヨタセーフティセンス」を採用する。プリクラッシュセーフティには、交差点での対向直進車や右左折時に前方から来る横断歩行者の検知機能と、ドライバーによる回避操舵をきっかけに操舵と車線逸脱抑制をサポートする緊急時操舵回避支援機能が追加された。また、駐車場での前後障害物や、後退時の接近車両や歩行者を認識するパーキングサポートブレーキも新しい。
【GR SPORT】スポーツグレード「GR」を新設定。走りの違いは!?
300系では新たに「GR SPORT」も設定される。詳しい情報がなく、標準モデルとの具体的な違いは不明だが、写真ではグリルや前後バンパーのデザインが異なること、メッキ類の使用が控えめになっていること、フェンダーモールが樹脂になっていることがわかる。
果たして、走行性能においても差別化が図られるのだろうか。標準モデルより発売は遅れるようだが、正式発表を楽しみに待ちたい。
ランドクルーザーといえば、トヨタ車体のラリーチームがダカールラリー市販車部門に参戦を続けており、2021年までに8連覇を果たしている。トヨタ車体は22年の大会までは200系で参戦し、23年からは300系を投入することを発表した。ラリー仕様に変身したGRランドクルーザー300がデビューウインを飾る姿を、ぜひ見てみたい。
【まとめ】2021年夏以降に世界各地で発売開始
200系に対して圧倒的ともいえる進化を遂げた300系ランドクルーザーは、2021年夏以降に世界各地で発売が開始される予定。下の集合写真を見ると、真ん中の車両はフロントマスクが異なるし、ルーフレールも未装備で、今回紹介したモデルとは異なるグレードだと思われる。
まだまだ知りたい情報がいっぱいの300系ランドクルーザー。日本のランクルファン、オフロードファンの前にも早くその全貌を現してほしいものだ。
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