ランボルギーニの旗艦スーパースポーツ「アヴェンタドール」が誕生から10年という節目を迎える。10年間の「10のイノベーション」を振り返る
- 2021/07/05
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MotorFan編集部
アウトモビリ・ランボルギーニはこのほど、2011年にムルシエラゴの後継モデルとして発表したフラッグシップスーパースポーツモデル「アヴァンタドール」が、誕生から10年の節目を迎えたことを報ずるとともに、この10年間の10のイノベーションを振り返った。
これまでに登場した「LP700-4」「スーパーヴェローチェ」「S」「SVJ」という4つのバージョンに導入された技術も、V12エンジンのスペックとともにアヴェンタドールの価値に結びついている
2011年3月にジュネーブで行われた「アヴェンタドールLP700-4」の発表会で、同社のステファン・ヴィンケルマンCEOは「当社のスーパーカーの未来は、アヴェンタドールLP700-4の誕生で現実となりました」とコメント。それから10年の歳月を経た今、同社は世界的なアイコンとなったV12モデルの歴史を称えている。
アヴァンタドールのバリューは、自然吸気式の6.5ℓV型12気筒エンジンのパワーやその性能だけにとどまらない。これまでに登場した「LP700-4」「スーパーヴェローチェ」「S」「SVJ」という4つのバージョンに導入された技術もその価値に結びついている。ランボルギーニがアヴェンタドールにもたらした10のイノベーションを見てみよう。
(1)カーボンファイバー
アヴェンタドールLP700-4には、ランボルギーニのスーパーカーで初めてカーボンファイバーモノコックが使用された。これにより、複合材料の製造と開発における同社のリーダーシップが確立され、社内で大量のカーボンファイバー製部品を製造する世界初の企業となった。
ランボルギーニが誇るさまざまな特許取得済み技術を駆使したアヴェンタドールのカーボンファイバーモノコックは「シングルシェル」モノコックで、クルマのコクピット、フロア、ルーフをひとつにした単一構造が採用されているため、きわめて高い構造的硬直性が保証されている。フロントとリヤにあるふたのアルミニウム製サブフレームと合わせ、高い構造的硬直性とわずか229.5kgの並外れた軽さを実現する工学的ソリューションである。
アヴェンタドール・ロードスターのルーフは、すべてカーボンファイバー製の2つのセクションで構成されており、ソフトトップ仕様のムルシエラゴ・ロードスターからさらに進化したもの。こうした技術は見た目の美しさだけでなく、きわめて軽量なルーフにもかかわらず最適な剛性をもたらしている。実際、ルーフの各セクションは6kgに満たない軽さを実現している。
スーパーヴェローチェでは、さらにドアパネルとシルにもカーボンファイバーを用い、超軽量複合材料(SCM)でのモデルチェンジを図った。特にインテリアには、生産車で初めて「カーボン・スキン」テクノロジーを採用。非常に特別な樹脂を組み合わせた超軽量素材は、とても柔らかな触り心地でありながら耐摩耗性がきわめて高く、柔軟性にも優れている。
(2)四輪駆動
アヴェンタドールの絶対的なパワーには当初から信頼性が高く、最高のドライビング体験を可能にするトランスミッションが不可欠だった。
前輪、後輪間の電子制御によるトルク配分は、ハルデックス社製のトルク配分システム、リヤの自動式デフロック、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム=横滑り防止装置)と連動するフロントの差動装置という3つの要素に基づいている。このシステムは、クルマの走行状態に合わせてわずか数ミリ秒でトルク配分を調整することが可能。最も重要な場面では、ドライバーの選んだ運転モードに従ってフロントアクスルにトルクの60%を伝達することもできる。
(3)サスペンション
アヴェンタドールには初代モデルから、革新的なプッシュロッド・サスペンション・システムを採用してきた。F1マシンに着想を得たこのシステムは、各車輪のハブハウジング下部に取り付けたロッドが特徴で、これが前後のフレーム上部に水平に取り付けられたショックアブソーバーとスプリングアセンブリに「力を伝達(プッシュ)」する。
ランボルギーニのプッシュロッド・サスペンション・システムはその後、スーパーヴェローチェで磁性流体ショックアブソーバー(MRS)を組み入れ、道路状況や運転スタイルに瞬時に対応。カーブごとにダンピングを調整してロールを大幅に減少し、クルマのハンドリングに対する反応を著しく向上させる。この「適応型」サスペンション機能は、ブレーキ時の車体前部の沈み込みも低減する。
(4)ISR(インディペンデント・シフティング・ロッド)ロボタイズド・ギヤボックス
アヴェンタドールには、公道を走行できるスーパースポーツカーとして2011年当時は非常に珍しかったロボタイズド・トランスミッションが搭載されている。このシステム(7速+バックギヤ)により非常に速いギヤチェンジが可能だ。
ISRギヤボックスは、1本はギヤを入れるため、もう1本はギヤを解除するための軽量カーボンファイバー製シフティングロッド2本が同時にシンクロナイザーを動かす。これによりシフトチェンジにかかる時間をわずか0.05秒に短縮。これは人の目の動きと同じ速度である。
(5)ドライブセレクトモードと「EGO」モード
ドライビングスタイルのカスタマイズもアヴェンタドールとともに進化を遂げてきた。LP700-4の運転モードは5種類を設定。3種類の
「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」と2種類のAT「ストラーダ・オート」「スポーツ・オート」から選べる。
スーパーヴェローチェでは、3種類のドライブセレクトシステムモード(ストラーダ/スポーツ/コルサ)によってエンジン、トランスミッション、差動装置、ショックアブソーバー、ステアリングを調整できるオプションも付き、これらの運転モードによるドライビング設定の変更機能が向上している。
さらにアヴェンタドールSでは飛躍的な進化を遂げ、「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」「エゴ」という4種類の運転モードから選べるようになった。この新しいエゴ・モードでは、ドライバーが、ストラーダ/スポーツ/コルサという3つのモードの設定範囲内で、トラクション、ステアリング、サスペンションを好みの基準にカスタマイズできる追加の構成プロファイルを選ぶことができる。
(6)LDVA(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・アッティーヴァ)
アヴェンタドールでは、LDVA(ランボルギーニ・アクティブ・ビークル・ダイナミクス)制御ユニットにより、縦方向制御を行なっている。これはアヴェンタドールSで最初に導入された改良版ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール=横滑り防止装置)ストラテジーで、選択した運転モードに合わせてトラクションやクルマのハンドリングをより速く正確に制御するもの。
LDVAは一種の電子頭脳で、クルマのあらゆるセンサーから伝達されるインプットを通して、クルマの動きに関する正確な情報をリアルタイムで受け取る。したがって、すべてのアクティブシステムにとって最適な設定を瞬時に定義し、走行条件を問わず最高のハンドリングを実現する。
(7)「ALA 2.0」と「LDVA 2.0」
アヴェンタドールのロードホールディングとパフォーマンスを向上させルために、SVJにはALA(エアロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)の2.0システムと、改良し第二世代版となったLDVA 2.0システムを搭載。ランボルギーニが特許を取得したALAシステムはV型10気筒モデルのウラカンの高性能版「ペルフォルマンテ」で初めて登場し、アヴェンタドールSVJでALA 2.0にアップグレードされた。さらに、クルマの横加速度の増加を考慮して再調整されると同時に、エアインテークとエアロのデザインも一新された。
ALAシステムは空力負荷をアクティブに変化させ、動的条件に合わせて高いダウンフォースや低い抵抗力を実現する。電子的に作動するモーターがフロントスプリッターとボンネットについているアクティブフラップを開閉し、前部および後部への空気の流れを作り出す。改良型の慣性センサーを備えるLDVA 2.0制御ユニットがクルマの電子システムすべてをリアルタイムに制御し、ALAシステムのフラップを0.5秒未満で起動。いかなる走行条件においても最高の空力形状を保証する。
(8)新四輪ステアリング
アヴェンタドールSの導入に伴い、ランボルギーニのラインナップで初めて採用された新四輪ステアリングシステムが、横方向制御にメリットをもたらしている。このシステムにより、低速および中速での敏捷性と、高速での安定性が大きく向上した。
フロントアクスルのLDS(ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング)と組み合わせることで、急カーブでの自然なレスポンス、より優れた反応性を保証。LRS(ランボルギーニ・リヤホイール・ステアリング)システムとの一体化を図るために特別に改良されている。
ふたつに分かれたアクチュエーターがドライバーによるステアリング操作の0.005秒以内に反応し、リアルタイムでの角度調整や、ロードホールディングとトラクションのバランスを向上。低速時にはリヤホイールがステアリングの角度と反対方向になるため、ホイールベースが実質的に減少する。一方で高速時には、フロントおよびリヤホイールがステアリングと同じ方向になるため、ホイールベースが実質的に増加して安定性が高まり、クルマの反応性を最適化する。
(9)ストップ・スタート・システム
2011年以降、ランボルギーニはエネルギー消費と環境汚染の削減はもちろん、効率性の向上に取り組んでいる。アヴェンタドールではLP700-4より革新的な高速システムを採用。電力を蓄えておくスーパーキャップを備え、燃料消費の大幅な削減を可能にした。
ランボルギーニがアヴェンタドールに新しく導入したストップ・スタート・システムは、自動車業界初となる最新テクノロジーを駆使し、信号などで停止した後にエンジンを再始動するための電力をスーパーキャップから供給することで、驚くほど速い再始動を実現している。従来のアイドリングストップシステムとは比べ物にならないほど速く、V12エンジンが0.18秒以内に再始動する。
軽量設計というランボルギーニの哲学と足並みをそろえるように、この新しいテクノロジーの導入で車体重量の3㎏削減も実現。従来の車載バッテリーは電子システムだけに電力を供給し、小型となり、クルマの寿命が尽きるまでほぼ交換不要で使用できる。
(10)シリンダー休止システム「CDS」
(10)シリンダー休止システム「CDS」
効率性を高めるふたつ目のテクノロジーがCDS(シリンダー・ディアクティベーション・システム=シリンダー休止システム)だ。車速135km/h以下の少ない負荷で走行時、CDSがふたつあるシリンダーバンクのうちのひとつを休止することで、直列6気筒エンジンとして機能し続ける。アクセルをわずかに踏み込むだけで、再びフルパワーのエンジンに戻る。
CDSとストップ・スタート・システムはいずれも驚くほど高速で作動するため、ドライバーは違いにほとんど気づくことなく、ドライビングの感動を妨げられることもない。こうしたテクノロジーを搭載していない場合に比べると効率性は大幅に向上し、ハイブリッドタイプでは燃費が7%削減された。車速130km/h前後の高速走行時では、燃費と排気ガスをおよそ20%削減できる。
ちなみに、ランボルギーニの歴代スーパーカーには闘牛の名前が授けられている。「ミウラ」「ハラマ」「レヴェントン」「ムルシエラゴ」そして、それらのなかで最も誇り高き闘牛が、1993年にスペイン・サラゴサの闘牛場で最も勇敢な闘牛であることが証明された「アヴェンタドール」だ。
ランボルギーニが2011年に発売したスーパーカーは、10年に亘ってイノベーションを積み重ね、自動車界の先頭を毅然と走り続け、その存在意義を証明してきたのである。
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