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Honda CIVIC SEDANはモータースポーツの空力色が濃い1台である ホンダ・シビック セダンを評価|レーシングテクノロジーがギュッと詰め込まれたクルマだ!

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 一般に、量産車では車速の上昇とともにリフト(揚力)が発生する。空気の圧力差が車体を浮き上がらせようとし、その結果、タイヤの接地荷重が減って挙動が不安定になる。あるいは、意図通りに反応・収束してくれない。高速域になればなるほど、その傾向は強くなる。「なんだかフラフラする」とか、「理由はわからないけど、高速になればなるほど不安」という経験をしたことがあるかもしれない。

 シビックセダンの開発では、高速走行時の安心感と低燃費を実現するための空力開発に取り組んだ(以下、『新型CIVICの高速操縦安定性のための空力技術』真塩享/皆川真之 Honda R&D Technical Review Vol.29 No.1 April 2017を参照)。

 シビックセダンのようなFF車では重量配分が前寄りになるため、タイヤの垂直荷重はフロントに比べてリヤが小さくなる。そのため、フロントよりもリヤのほうが、垂直荷重の変化に対して敏感になる。運動特性に置き換えて表現すれば、高速になるほどオーバーステア傾向になるといわけだ。

 シビックセダンの開発では、この特性を穏やかにすることを高速操縦安定性の目標とした。また、低燃費を実現するために、空気抵抗の低減を目指した。エクステリアに絞って(床下は除く)具体的な策を紹介していこう。

 ポイントは3つ。1つ目はボンネットフード前端を張り出させたこと。2つ目は1つ目のフード前端の張り出しと合わせ、ルーフのピークを前側に設けたこと。フード前端の張り出しとルーフピークの前方化は、車体上面に発生する負圧域を前方化させるのが狙いである。これにより、リフトの発生領域がフロント側に移動(発生するリフト量自体は変わらない)。その結果、車体中心に働くピッチアップモーメントが増える(フロントを持ち上げ、リヤを沈ませる動きが生まれる)ため、リヤのリフトが小さくなる(タイヤの接地荷重が減らない→リヤが安定する)。

 3つ目のポイントは、Cピラーの根元を後方に引き、リヤウインドウ部分の角度を浅くしたことだ。前型シビックはCピラー側面とルーフ後端の空気の圧力差が大きかったが、新型シビックセダンは両者の圧力差が小さくなっている。圧力差が大きいと、車体側面からルーフ後端に回り込む流れが起き、Cピラーの下流で縦渦が発生する。ウエット走行時などでF1マシンのリヤウイング翼端板から糸を引くような白い渦が見えることがあるが、あれと同じ現象である。誘導抵抗が可視化されたものだ。

 その抵抗を小さくするためにも、車体側面とルーフ後端の圧力差は小さくしたい。シビックセダンの開発では、デザイン側の要望と空力側の要望をすり合わせながら、車体側面とルーフ後端の圧力差が小さくなる(すなわち、空気抵抗が小さくなる)形状とした。結果的に、クーペのようなシルエットになっている。どれもこれも、レーシングカーの空力開発で蓄積した技術を生かしたものだ。

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