ホンダNSX2019年バージョン 生まれ変わったホンダNSXはどこがどう変わったのか? 電子制御SH-AWDだけではない改良点をリポートする
- 2019/01/27
- GENROQ編集部
大幅に改良されたMY19モデル
では、彼らはどんなチューニングをMY19に施したのか?
まず、前後スタビライザーのバネ定数を引き上げる(前:26%、後:19%)とともに、リヤコントロールアームブッシュの剛性を21%高めた。つまり、ボディの挙動を抑えてスタビリティを高めたのである。ただし、このままでは乗り心地が悪化する恐れがあるので、これは磁性流体式ダンパーの制御ロジックを変更することで対応。足まわりの変更に伴ってSH-AWDのソフトウェアにも再チューニングを施した。さらにリヤベアリングハブの剛性を6%向上させて質感を改善させた。
以下、生まれ変わったMY19の印象をリポートしよう。
走り始めた直後の微低速域では路面から伝わるザラツキ感が減ったことで、足まわりはむしろ柔らかく感じた。まるでタイヤの踏面がソフトになったような印象である。しかし、タウンスピードで走ってみれば、サスペンションがしっかりとボディを支えている様がはっきり伝わってくる。端的にいえば足まわりが硬くなったことを実感させられるのだが、それでもまったく不快に思えないのは、NSXの圧倒的に優れたボディ剛性の恩恵だろう。リヤベアリングハブの剛性向上も、こうした印象に貢献していると推測される。
肝心のコーナリングは極めて自然でリニアリティが高い。ペースを上げるとドライビングモードの「スポーツ」では路面の大きなうねりでボディが煽られ気味になるが、これも「スポーツ+」に切り替えれば解消され、荒れた路面でのハードコーナリングでも安心感の高いフラットライドが味わえる。このような状況でもクルマ全体の印象がソリッドで、路面の様子が克明に感じ取れるのは新しい足まわりのおかげだろう。
一方でSH-AWDはこれまで以上に黒子役に徹し、その存在はほとんど感じられないが、SH-AWDの効きが最弱になるトラックモードを試したところ、一般的なスポーツカーと同じように荷重移動がコーナリングの軌跡に顕著な影響を与えるようになり、SH-AWDの恩恵を改めて実感することとなった。
SH-AWDのもうひとつの魅力は、モーターのアシストによってエンジンレスポンスやトルク特性を改善できる点にある。今回の試乗でもシャープでリニアリティの高い加速感を味わえたが、EU6d-TEMPに代表される次世代エミッション規制が導入されれば、電動化技術を備えないスポーツカーは軒並み牙を抜かれる恐れがある。そのとき、ライバルたちはどう対応するのか?
2代目で車重増と戦ったホンダはSH-AWDで操縦性や動力性能を制御する無限の可能性を手に入れた。この技術的アドバンテージは、今後のエミッション規制強化に伴ってさらに大きな意味を持つはずだ。
※本記事は『GENROQ』2019年2月号の記事を再編集・再構成したものです。
ホンダNSX
■ボディスペック
全長(㎜):4490
全幅(㎜):1940
全高(㎜):1215
ホイールベース(㎜):2630
車両重量(㎏):1800(※)
■パワートレイン
ハイブリッド方式:フルハイブリッドシステム
システム合計出力:427kW(581ps)
システム合計トルク:646Nm(65.9kgm)
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量(㏄):3492
最高出力:373kW(507㎰)/6500〜7500rpm
最大トルク:550Nm(56.1㎏m)/2000〜6000rpm
電気モーター出力:Ⓕ27kW(37㎰)×2 Ⓡ35kW(48㎰)
電気モータートルク:Ⓕ73Nm(7.4㎏m)×2 Ⓡ148Nm(15.1㎏m)
■トランスミッション
タイプ: 9速DCT
■シャシー
駆動方式:AWD
サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン
サスペンション リヤ:ウイッシュボーン
■ブレーキ
フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク
■タイヤ&ホイール
フロント:245/35ZR19
リヤ:305/30ZR20
■環境性能
燃料消費率:12.4(㎞/ℓ:JC08複合モード)
■車両本体価格(万円):2370
※カーボンセラミックブレーキローター装着車は1780㎏
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