【毎日更新・人生最高の3台(まるも亜希子編)】第3位:ダイハツ・ソニカ/第2位:日産サファリ/第1位:ホンダNSX 【私の人生最高国産車・ベスト3】日本車の黄金時代を作り上げた孤高のスーパーカー、ホンダNSX(まるも亜希子)
- 2020/08/16
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まるも亜希子
その誕生から20年後、念願叶ってホンダNSXのステアリングを握ることができたまるも亜希子さん。「ジャジャ馬なのかも?」というイメージを抱いていたが、実際には一つ一つの挙動からクルマとしての誇りとスポーツカーとしての使命のようなものが感じられ、忘れられない試乗体験となった。
TEXT●まるも亜希子(MARUMO Akiko)
第3位:ダイハツ・ソニカ(2006年-)
「カール・ルイスが反復横跳びするようなブレのないレーンチェンジ!」
大人のためのグランドツーリングカーという、軽自動車としては異例の開発コンセプトで登場したソニカ。外観からして、4ドアではあるものの全高を1470mmに抑えたクーペスタイルで、メーターは自然発光式の3眼、ステアリングはMOMOの革巻き。当時はまだ珍しかった3気筒ターボ+CVTの組み合わせに、ゲート式7段アクティブシフト(トップグレードのみ)を備え、全グレード(2WD)に前後スタビライザーが標準装備というのもエンジニアの意気込みを物語っているようでした。
でもね、そうは言っても...と、あまり期待せずに乗ってみたわけなのです。
発進してすぐに感じたのは、身体と手足がすっぽりとソニカに組み込まれたような一体感。地面に吸い付くような低重心でスルスルと加速していく伸びやかなフィーリング。少し踏み込んだだけでもモリモリとパワーが湧き出して、追い越しも合流も余裕だし、カール・ルイスが反復横跳びするかのような(イメージの)ブレのない完璧なレーンチェンジ。「なんなのこれは!」と驚き、もう楽しすぎて爽快すぎて、そのまま4時間もぶっ続けで走ってしまったのでした。そんな軽自動車は未だかつてソニカだけ。私の中の伝説です。
第2位:日産サファリ(1997年-)
「サハラ砂漠ラリーで、その頼もしさに何度も救われた」
残念ながら日本での販売は2007年に終了してしまいましたが、世界では今も「パトロール」の名で健在の本格SUVです。私はこのサファリとともに、2004年・2005年のサハラ砂漠ラリーに参戦して、命からがら完走することができました。しかも、パリからモロッコのサハラ砂漠まで、往復自走で(笑)。
まずパリから南仏のトゥールーズという街まで約800kmを高速道路で走り、そこで出走式をやってから港町のセットへ移動。モロッコ行きのフェリーに乗り込んで2泊3日、タンジェに上陸。そしてまた1000km以上の道のりを走って、ようやくサハラ砂漠の入り口の街、エルフッドに到着します。いや〜、競技が始まるまでが長いこと長いこと。
でも私はその長旅で、すっかりサファリが好きになりました。おおらかで、ちょっとくらいの段差なんてビクともせず、繭の中で守られているような安心感がものすごい。とくにモロッコに上陸してからサハラ砂漠までは、完全なる高速道路というものはなく、先へ進むにつれて対向車とすれ違うのもギリギリの道しか無くなってしまったのですが、サファリは車体の半分くらい路肩に落っこちたまま走ったって、まったく問題なし。その「ドンとこい」的な頼もしさが、どれだけ当時の未熟な私を救ってくれたことか。きっと今も世界のどこかで、サファリを必要とし、助けられている人たちがいるのだと思います。
第1位:ホンダNSX(1990年-)
「孤高のスーパーカー。クルマから誇りと使命が伝わってきた」
1990年代、NSXがGT選手権で大活躍していた時にクルマ業界に飛び込んだ私にとって、NSXはロードカーでさえも雲の上の存在でした。先輩たちが運転する助手席に乗せてもらうのも緊張するほどで、自分で運転するなんてもう、おこがましいにもほどがあるっ。とひれ伏していたばっかりに、とうとう運転席に座ることのないまま、NSXは生産終了してしまったのでした。
ところがNSXの誕生から20年後。ホンダアクセスが新たなパーツを制作・販売し、それらを装着した広報車両があるということで、幸運にも1泊2日で試乗することが叶ったのです。落ち着いたネイビーのそのNSXは1997年式の2型で、20年目にふさわしい足まわりやドライカーボン製のトランクスポイラーなどが装着されていました。
夢にまで見たNSXの運転席は、もっと寝そべるように低いポジションなのかと思っていたら、意外にもそこまで低くなく、しっかりと視界が確保できているので、車両感覚がわかりやすくて安心感があるなぁと感じました。そしてエンジンを始動すると、背中から覆われるように響くVTECエンジンのサウンド。足が短かい私は、シートをけっこう前にスライドさせるので、シフトレバーがやや近すぎる位置になっちゃいましたが(笑)、カキッと一発でキマるショートストロークの操作感がレーシーで、なんだかクセになりそうでした。
そのまま東名高速を西へと走り出すと、フォーンという音が高揚感を煽りつつも、すごく紳士なエスコートをしてくれるような走りに惚れ惚れ。もっとジャジャ馬なイメージだったのに、一つ一つの挙動にクルマとしての誇り、スポーツカーとしての使命のようなものが感じられて、涙が出そうになりました。日本が世界を追いかけていた時代を経て、世界に日本車ファンを増やしていった時代を支えた孤高のスーパーカー。またいつか、こんなクルマに出会えたらいいなと思います。
選者:まるも亜希子(まるも・あきこ)
【近況報告】
100歳の祖母が天寿を全うし、葬儀のため久々に懐かしい街へ。20年ぶりくらい再会した従兄弟たちと、「4人乗りのフェラーリが意外にいい」などクルマ談義に花が咲き、祖母がくれた楽しいひとときを過ごしました。
【プロフィール】
カーライフ・ジャーナリスト。20年以上に及ぶ国内外での取材経験を生かし、雑誌・ウェブサイト・ラジオ・トークショーなどに出演・寄稿する他、安全&エコドライブのインストラクターも務める。日本カー・オブ・ザ・イヤー(2006年〜)選考委員。現在はYotube「クルマ業界女子部チャンネル」でもユルく楽しいカーライフ情報を発信中。
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