The Grand Touring ルーテシアR.S.(ルノー・スポール)でパリからディエップ、スパ、そしてルクセンブルク3ヵ国1400㎞を激走!
- 2019/09/05
- ニューモデル速報

サーキット走行に主眼を置いて開発されたルーテシアRS。ましてシャシー・カップともなれば、そのスパルタンさは筋金入りだ。だが、だからといって長距離ドライブに向いていないと決めつけるのは早計である。締め上げられながらもよく動くサスペンション、余裕に満ち溢れたエンジン、そして極上のシート……走れば走るほど、ルーテシアRSのもうひとつの顔が見えてくるはずだ。
TEXT●佐野弘宗 (SANO Hiromune)
PHOTO●平野 陽 (HIRANO Akio)
カップに対する不安は乗り出してすぐに霧散した

いきなり裏話で恐縮だが、本書(『ルノー・ルーテシアRSのすべて』)に収録されているフランスネタは、2013年5月下旬から6月上旬にかけて渡仏して取材したものだ。しかも、このときは『ルノー・カングーのすべて』と『ルノー・ルーテシアのすべて』(ともに刊行済み)も同時取材するという強行軍である。あるときはルーテシアRSで、またあるときはカングーで、はたまた場合によってはルーテシアで、パリを拠点に目まぐるしく飛びまわった。
そんな「フランス10日間、3冊同時取材の旅!」で、結果的に最長移動ルートとなったのは、パリ到着翌日からディエップ、そしてそのままスパ・フランコルシャン……という2大聖地への連続巡礼だった。
3冊同時取材だったので、巡礼のアシには普通のルーテシアも、あるいはカングーも選ぶことができたのだが、私は迷わずルーテシアRSのカードキーを手にした。しかも、それは高速主体の長距離移動に好適そうなシャシースポール(以下スポール)ではなく、あえてシャシーカップ(以下カップ)のものにした。理由はふたつ。一応は私も誇り高き(?)先代ルーテシアRSオーナーのひとりである。待望の新型RS初試乗。しかも最初の長距離移動。「とにもかくにもRS!」と思った。そして、このときのスポールは当然ながら欧州仕様である。日本仕様とは異なり、タイヤがサイズも銘柄もカップと共通の18インチだったのだ。
ただ、クルマを受け取ったルノー・スポール・テクノロジーズ(RST)本社前で、目にも鮮やかなジョン シリウスのカップと対面して、後悔の念がよぎったことは否定しない。新型ルーテシアRSカップの車高はスポールより3㎜低い(日本の諸元表は5㎜刻み表示なので、日本のカタログ表記に差はない)が、ブラックホイールの視覚効果か、見た目は数値以上に低く、ハードなオーラが漂う。予定される総移動距離は約1400㎞。思わず「やっぱシャシースポ……」と言いかけるも、すでに各車のドライバー振り分けも、大量の撮影機材の積載も完了。とても言い出せなかった……。
もっとも、パリ近郊レズリスにあるRSTからA 10に乗り入れた瞬間には、そんな不安は見事に霧散してしまった。ちなみに、フランスで頭に「A」がつく道路はオートルート(高速道路)を意味する。
新しいルーテシアRSはとにかく乗り心地がいい。路面のアタリも十二分にまろやかだが、それ以上に良路ではスルーッと滑るようにフラットなので、肩の力を抜いても素晴らしく真っ直ぐ走る。途中でスポールも短時間だけ試してみたが、細かい突き上げにしやなかさが少し加わる以外は、基本的な直進性、外乱に対する自律安定性、上下動の少なさ、そして修正舵の頻度にカップと大きな差は見出せなかった。
これには、フランスのオートルートの整備が行き届いていることも無関係ではない。あとで日本で確認したところ、ワダチや路面の部分補修で4輪をバラバラに蹴り上げられたときのボディ上下動、あるいは目地段差……といった日本特有のシーンでは、やはりカップに特有の硬質さが感じられたのも事実である。そういえば、今年春に来日したRSTのロラン・ウルゴン(テストドライバー)とフィリップ・メリメ(シャシーエンジニア)のふたりが、日本の高速道路を初体験して「日本の目地段差はウワサには聞いていたが、確かに手強い」と口を揃えていたことを思い出す。日本の道は欧州から見ると、けっこう特殊なのだ。
厳格な速度取り締まり130㎞/hで淡々と巡航

知っている人も多いように、フランスのオートルートの最高速度は130㎞/hである。最近のフランスは、とくにスピード違反取り締まりカメラが増殖している。そして不運にも記念撮影されれば、我々のような外国人にもきっちり請求書が届く。もっとも、カメラの手前にはかならず警告標識があり、標識とカメラの距離も日本よりずっと短い。だから、道路標識を忘れず確認するクセさえつけておけば危険はないが、聞くところでは、数㎞/h単位のスピードオーバーでも律儀に撮影されるというから、油断は禁物である。
欧州に統合通貨ユーロが導入されたのは1998年のことだが、ユーロ導入は単なる貨幣単位の統一という意味にとどまらない。ユーロ各国は経済・産業活動に関わるあらゆる規制や規則の統一と、それを厳格に順守することが求められる。クルマの商品力に関わる制限速度も常に取り沙汰されており、フランスにおける昨今のスピード違反カメラ増殖もそれと無関係ではないだろう。
ハッキリいうと、現在のパリ近郊のオートルートは、次から次へとスピード違反カメラが現われて、しかもわずかな速度超過でも容赦なく撮影される。もはや「ちょっとオイタを」という気すら完全に失せるほどで、実際に、追い越し車線を凄まじいスピードでブッ飛ぶクルマも、15年前にはたくさんいたのに最近はほとんど見られない。スピード違反を奨励するつもりはさらさらないが、「明記される法規は厳しいが、運用は弾力的」である日本のほうが、今では自由度が高いとすら思う。
そういうヨーロッパの現状を反映してか、新しいルーテシアRSでは130㎞/hがひとつの明確なスウィートスポットになっている。
6速130㎞/hでのエンジン回転数はちょうど3000rpmほどだが、それはエンジンの音圧が高まる一歩手前の領域。この速度で一定速度で巡航する限り、エンジンノイズは実に静かで、先代のような威圧的なコモリ音もない。シャシーもピタリと落ち着いている。従来から飛躍的に快適になったカップでも、低速で大きなギャップを通過するとそれなりの衝撃を見舞うこともあるし、150㎞/h以上では、さすがに煽られるような上下動が隠しきれなくなる。そのどちらも適度に緩和されたフラットライドを披露するのが130㎞/h前後。これは間違いなく意図的なチューニングである。


今回は工場訪問という明確な目的があったが、そうでなくても『ルノーRS系のすべて』のフランス取材では、我々にとってディエップは欠かせない聖地である。第一の理由はもちろん、ここがアルピーヌの故郷だからだが、同時に試乗と撮影に最適な場所という理由もある。
ディエップはアルピーヌの故郷である以外には、ドーバーを望む断崖絶壁と風光明媚な湊、そして美味しい魚介類しかない(?)土地である。それなりの歴史もあり、由緒がありそうな教会や史跡もあるが、ちょっと失礼な言い方をすれば、観光客にとっては「よくあるヨーロッパの街並み」でしかない。
ただ、そういう美しい風景やヨーロッパ的なアイテムがコンパクトにまとまっており、市街地を外れると、すぐに適度なアップダウンのワインディングロードもある。パリからの距離は約200㎞。パリ起点のちょっとしたドライブには、ディエップはなんとも好適な町なのだ。
冒頭の試乗インプレッションでは「ワインディングを攻めるにはレースモードで決まり」と書いた。しかし、ディエップのワインディングを普通のルーテシアと並走しなが70〜80%のペースで走るなら、RSドライブをスポーツモードにして、シフトレバーをマニュアル側に倒す……のが最も走りやすい。
スポーツモードにすると、スロットルには荷重移動のキッカケを作りやすい適度なメリハリが生まれる。さらに6速デュアルクラッチのEDCは、レースモードでは自動変速が何も作動しないが、スポーツモード(のマニュアルモード)の場合は、6500rpmのリミットで自動的にシフトアップしてくれる。新しい1.6ℓターボはあまりに滑らかに引っ掛かりなく吹け上がるために、常に意識していないと、シフトアップを忘れてレブリミッターに当たってしまうこともしばしば。その点、スポーツモードなら、シフトアップはクルマまかせで、パドル操作はダウンシフトだけに集中すればよい。それでも、ディーゼルのルーテシアを鼻歌まじりで追いかけられる。

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