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福野礼一郎のクルマ論評4を読み解くためのページ[三菱ギャランGTO(A53C/A55C/A57C)] 福野礼一郎のクルマ論評4 モーターファンロードテスト現代の視点 三菱ギャランGTO

  • 2019/10/01
  • Motor Fan illustrated編集部
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かつてのモーターファン誌の名物企画、「モーターファン・ロードテスト」を再録。1971年1月号に掲載した、三菱ギャランGTOのロードテストです。

と き:昭和45年11月4、5日
ところ:財団法人 日本自動車研究所/谷田部テストコース
座談会:昭和45年11月5日 麹町会館

目次開く

空力優先のスタイル

ダックテールの効果

軽いエンジン

剛性の高い足まわり

0→400m 16.7秒

軽いブレーキ

ゴージャスな室内

高い安全性

振動・騒音試験結果

動力性能試験結果

燃費性能試験結果

重量、アライメント、ブレーキ試験結果

操作性安定試験結果

寸法測定結果

視野測定結果

福野礼一郎のクルマ論評4を読み解くためのページ[三菱ギャランGTO(A53C/A55C/A57C)]

1970年12月1日発売の1月号のモーターファン・ロードテストをできる限りオリジナルに忠実に再録した。図版類は再度作図した。ただし、当時の写真のネガフィルム が散逸してしまっているため、一部走行写真は、同テスト時の別カット、視野写真はP153「現代の視点」企画用に再撮した写真を掲載した。

空力優先のスタイル

 本 誌 ギャランGTOの狙い、といったことからはじめたいと思います。
 小 林 昨年、ギャランのセダンを発売し、今年5月にハードトップ、エステートバンを発売する、というようにワイド・バリエーション化を図ってきましたが、さらに豪華、高性能のスポーツ・タイプGTOをシリーズに加えたわけです。このプロトタイプのGTXを昨年の第16回モーターショーに出品して、大変評判になりましたが、さらにクライスラー社の協力を得て、よりリファインしたしたものがGTOです。ただし、ギャラン・シリーズの一環といっても、スタイル、エンジン、内装とも新しく設計したニューモデルです。公害対策などについても、万全を期したエンジンである、と自負しております。
 本 誌 クライスラーの協力は具体的にどういう点ですか。
 小 林 クライスラー社はまだ資本参加していませんので、すべて私どもの責任でやったわけですが、クライスラーからサゼッションを受けたのは「このスタイルは非常にいいが、今後の傾向からは、もっと“タンブルホーム”な形の方がいい」と言うことで、その思想を入れて50インチの曲率のサイドガラスを使って、トップをすぼめたような形にしました。
 本 誌 ネーミングが“GTX”から“GTO”になったのは……。
 小 林 一般にクーペというのは、居住性を犠牲にしていますが、これは後席の居住性をそこなっていませんので、販売店から「名前を変えてくれ」と言う要望があってその結果GTO、イタリア語で“グラン・ツーリスモ・オモロガーレ”としたわけです。
 本 誌 スタイリングはセールスポイントでしょうが……。
 上 砂 このクルマはギャランの兄弟ですが、いわゆる、従来の高価で性能が良く速い、というスポーツカーじゃなく、もっと安く、若い人だけでなく広いユーザー層にも乗れるということころを狙いました。しかも、軽く、エンジンも小さいので、最高速を出すためには、空力の利点を取り入れるということで、空力グループと一緒にやりました。スタイリングの一つの流れとして“カット・バック”というか“カムテール”が流線型から派生してきたわけですが、そういうものがスピード感を感じさせるシェープであると同時に、100㎞/h以上になれば空力的に有利になるということをミックスしてデザインしたのです。今回はとくにデザイナーの注文をアドバタイジング(宣伝セクション)の方でつかんでくれたのでやりやすかったですね。タンブルホームについても、居住性を犠牲にしないで空気抵抗を減らしたい、ということで工作上の難しい点を設計と生産技術で協力してやってもらいました。
 本 誌 空力的には“ダックテール”はどうなんですか?
 鈴 木 歴史的に見ると、1930年代からの流線型の流れが時代が進むにつれてクルマの性能も上がり、道路事情も変わってくると、空気抵抗を減らすだけではすまなくなったという事情があります。たとえば横風の問題、あるいは揚力の問題が出てきて、プロトタイプなどにはカムテールの処理とか、あるいはそれを一歩進めたダックテールの処理が取り入れられてきたわけです。
 三菱としては、従来から風洞試験はたくさんやってましたが、特に新体制を目指した67年ごろから非常に大がかりな風洞試験をやってきました。それで一番問題になったのは、GTOのダックテールをとった形、いわゆるファストバックでは、空気抵抗は非常に少ないが、揚力が大きい。150㎞/hぐらいのクルマではまだ問題はありませんが、200㎞/hという高速が出て、しかもボディも軽いということになると揚力の制御が大きな問題になってきました。当時、ダックテールというのは、まだ実際に応用されたものが特殊なクルマ以外はなくて、実験的な段階でしたが、何回も風洞実験で確かめて、かなり効果がある、というところまでこぎつけたわけです。実際に応用する場合、一番の問題はスタイリングとの関係で、その大きさが問題になります。大きなものをつければ揚力の制御に効果はありますが、スタイリング、あるいは視野が影響を受ける。小さければ効果がない、というわけで、今の形になったのです。 
 本 誌 何㎞/h以上で効果がありますか。
 鈴 木 理論的には何㎞ /hでも効果があるはずですが、実際問題としては、180~190㎞/hで走っても、普通のセダンで130~140㎞/hで走っているのと同じぐらいです。だいたいセダンに生じる揚力の40%減ぐらいです。たとえば、セダンで180㎞/hぐらいで走っている時、15m/sの横風を受けると大きな揚力が発生します。それが160㎏ぐらいのものですが、これは100㎏ぐらいです。
 平 尾 後輪荷重がそれだけ減る、ということですか。
 鈴 木 全体の荷重です。空力中心点にかかる力です。空力中心点は重心よりやや前です。
 本 誌 リヤの荷重でいうとどのくらい減るんですか。
 鈴 木 リヤが60%ぐらいですね。
 本 誌 空気抵抗はセダンに比べてどのくらい小さくなっていますか。かなりのものだと思いますが……。
 鈴 木 20~25%ぐらいだと思います。
 本 誌 ウインドシールドが寝たのと後ろがファストバックになったことですね。
 鈴 木 もうひとつ、ダックテールを付けることによって揚力は減りますが、いわゆる抵抗になるわけで、そういうものを兼ね合わせて20~25%といったところです。
 平 尾 サイドガラスのカーブで、前面投影面積が小さくなるといったことは……。
 鈴 木 前面投影面積ではだいたい4%ぐらい減りました。それをかけて25%ぐらいです。
 本 誌 開発はセダンと同時ですか。
 豊 島 そうです。バンを入れて4車種を開発初期に頭に入れて、部品の共通性とか、生産性を考えてやりました。そしてあとから出すものは、ハードトップ、GTOとクルマの格を上げて、順番に出していくというふうに考えて出発しました。ただ、時期的には半年ほど遅れましたが。

ダックテールの効果

 本 誌 実際に乗ってみて、横風に対してどうでした。
 星 島 そうですね。路面に吸いつく感じで、ロードホールディングはいいですね。それがダックテールのせいかどうかはわかりませんが。
 平 尾 これにまたオプションでスポイラーを付ける、という話しも聞いたが、また一段と良くなりますか。
 鈴 木 スポイラーは試験もしましたし、またうちのフォーミュラーでも付けてみましたが、スポイラーは揚力制御をする、という点では有効な手段のひとつです。しかし、スポイラー自体ある意味での欠陥を持っている。つまり、先ほど言いました空気抵抗が増える、ということです。それとスポイラーを付けるとすれば、実際のフィーリングとしては、どの程度のものがいいか、ということですね。
 本 誌 スポイラーを付けるとすれば、どういうふうに付けるんですか。
 平 尾 付ける場所が問題だね。
 上 砂 モデルの段階としては、完全にボディに付けないで、浮かしているんです。
 平 尾 そういうオプションが出たら、また話題になるだろうね。
 星 島 雪道では非常に効果がありますね。ファストバックのクルマに付けてみたんですが、雪道で60㎞/hぐらいでも安定感が違ってきましたね。
 鈴 木 ただ、空気抵抗と、揚力を抑える、ということのマッチングで考えなければならないので、そのへんが難しいですね。
 星 島 スタイルはリヤから見るとアメリカ車的イメージを持っていますね。
 上 砂 50インチ・アールのガラスを使ったので、飛行機の胴体のような形にできたわけですが、これもイメージが活かせたと思います。
 本 誌 あのカーブ・ガラスはコスト的には?
 小 林 高いですね。
 本 誌 高速で窓を開けるとガタガタする、というような問題はどうですか。
 豊 島 わずかにガラスを下げた状態にして、どのくらいガラスがたわむか、といった実験をやっています。特に、ガイド・ローラーを高級にして、ガッチリ支えています。ガラスも6mmの厚さで、重量を軽くするために下側をえぐっています。
 平 尾 高速になっても窓も開けなければならないのか、と思うんです。新幹線は窓が開かないからね。
 本 誌 120㎞/h以上になると、みな閉めるんじゃないですか。
 平 尾 だから、もうガラスを降ろさないことにする。そうするとドアのなかが、たとえばエア・コンディショニングの通路にできるし、ボディの剛性にもドアが寄与できる。またドアを閉める時、ラッチが半分まできたら、つまり半ドアの状態になったら、あとは電動でギュッとくわえ込んでしまう、というメカニズムにすれば、ドアシールを相当硬いものにできる。そうすれば高速でもエアが抜けて笛になる、ということにもならないんだけど……。
 樋 口 下のしきいのところをダクトに使うクルマは北欧にありますね。

軽いエンジン

 本 誌 エンジンの変更点は……。
 中 村 ロングストローク、球型燃焼室という基本的な思想は同じです。つまり球型燃焼室は吸排気弁が大きくとれ、吸入効率が良い。またロングストローク気味だと低速性能が良く、OHCと組み合わせれば高速もいい。ピストンスピードについてもこのぐらいのボア・ストローク比だとそれほど差はない。公害問題に対しても、ロングストロークと球型燃焼室を組み合わせて燃焼室の表面積をできるだけ小さくしたほうがハイドロカーボンが少ない、という利点があります。燃焼室の表面積はウェッジタイプのものと比べると、約4分の3くらいです。それにロングストロークはエンジンがコンパクトにできます。
 このGTOのエンジンはMI、MII、MRと3種あります。いずれもセダンのエンジンをボアアップして排気量を上げています。MRはDOHCにしていますが、シリンダーブロックはMI、MIIとできるだけ共通性をもたせています。ボアアップしたので、ボア・ストローク比が1.1 ぐらいになりました。回転数はMRが6800rpm、MIIが6700rpmまで引っ張れます。そのへんでも馬力が低下しないようにしています。
 それと圧縮比を0.5ずつ下げて、MIは8.5、MII、MRは9.5にしています。その理由は点火進角を遅らせるだけで、低オクタンガソリンが使えるように、というわけです。
 エンジンの重量は1500ccとほとんど変わらずで、0.5㎏ぐらいの増加です。MIのエンジン重量が106.6㎏ですから、だいたい1㎏で1馬力出るわけで、鋳鉄ブロックのエンジンのなかでは軽い、と言えるのではないかと思います。
 平 尾 肉厚はどのくらいですか。
 中 村 4mm程度です。
 本 誌 そうするとさらにボアアップの可能性はあとどの程度ありますか。
 中 村 可能性はあるでしょうね。
 本 誌 ピストンスピードは?
 中 村 7000rpmで16.5mぐらいですね。
 平 尾 7000rpmまで引っ張ると音がかなり大きいね。
 樋 口 7000rpmまではめったに使いませんが、むしろ高速道路を走ると、オーバートップが欲しくなりますね。音と燃費とピストンスピードの点からは。
 本 誌 MRは5段ミッションですね。
 平 尾 オートマチックはオプションですか。
 中 村 今のところはありません。
 樋 口 半年後ですね(笑)

剛性の高い足まわり

剛性の高い足周りのため操安性は抜群。
 本 誌 足まわりは同じですか。
 豊 島 これまでのものとそう変わっていません。ただ、ばねを強化しています。MIIはリヤのリーフばねを4枚にしています。タイヤは165S-13というラジアルにした程度です。そのほか、ばねの取り付けなど細かいところをいじってますが。
 本 誌 ロードホールディングがいいという話も出ましたが。
 森 谷 まず空力的なことが効いていると思います。それとラジアルタイヤですね。細かいところでは、ばねを強くしたことにともなって、ショックアブソーバーのダンピングレシオを50~60%上げています。スタビライザーの剛性も上げています。そういった結果、割といい特性が出たのではないか、と思います。もうひとつ、重量配分的なバランスも関係していると思います。
 岡 崎 高速安定はいいですね。スピードの上昇に対して操舵力の差がそれほどなく、落ち着いていますね。操縦性の面でもセダンやハードトップに比べて、しっとりした感じになっています。セダンよりシャープさを抑えて、安定を良くしてあるというフィーリングでした。
 アンダーはかなり強く感じました。タイヤ圧がフロント1.4㎏ /㎠、リヤ1.6㎏ /㎠でしたが、これは操縦性というより一般ユーザーの使える範囲内で、乗り心地を重視したのではないかと思うのです。もっと操縦性のフィーリングを出そうとすれば、おそらく1.8~2.0㎏ /㎠ぐらいのスクエアあたりがいいのではないかと思いました。
 性格的にダートでは比較的リバースへの移行が早いのですが、セダンよりはかなりコーナリングスピードが上がっていますね。それからリヤサスペンションの剛性そのものも上がっているんでしょうか。取り付け部の剛性が高いように思いました。
 タイヤのリム幅はどのくらいですか。
 豊 島 4.5Jです。
 岡 崎 あのタイヤなら少なくとも5.5Jは欲しい気がします。
 森 谷 高速での安定性、という点に重点をおいて、サスペンションの剛性を高めています。ボディのストラクチャーそのものも剛性を上げ、リーフスプリングの取り付け部の剛性を上げ、ゴムブッシュなども少し直しています。ばね定数もセダンの1.97に比べ2.28と高めています。
 タイヤの選定には操縦性と安定性をバランスさせるよう、いろいろやりました。
 本 誌 操縦性・安定性のデータはどうですか。
 土 居 実用最小回転半径は、外側が5.125m、内側が2.684mで、このクラスでは一番小さい値です。
 据え切りはラジアルタイヤにしては、やや低めで、左右の最大値が17㎏と15㎏でした。
 U/S、O/S特性はまだデータが未整理ですが、谷田部のスキッドパッドで旋回をした時、フィーリングでは、強いアンダーを感じました。あのスキッドパッドはμが低いので、50~60㎞ /hから後輪がスリップしましたが、コントロールが容易で、不安感はありませんでした。
 ロール率もまだ未整理ですが、写真で見ると3.0~3.5度ぐらい、社内データでは5名乗車で3.37度ということですから、ロール率は低いと思います。
 手放し安定性は140㎞/hまでやり、100㎞/hでは、周期が0.9秒、減衰比は0.18と良い値で、波形から見ても良いと思いました(以下、149Pデータ参照)。
 本 誌 アンダーが強い、というのは設計通りですか。
 森 谷 V² が100㎡ /S² のとき1.37~1.40ぐらいが普通ですが、その範囲内ということでやっています。
 岡 崎 かなり頑張って旋回しても、リヤが滑らずに結局ドリフトアウトの状態になってしまうんです。
 森 谷 岡崎のテストコースのコンクリート路面では、横向加速度0.7~0.8Gまでアンダーを保っています。
 本 誌 タイヤの圧を1.4㎏/㎠と1.6㎏/㎠にしたのは乗り心地からですか。
 森 谷 いえ、安定性の方からです。
 星 島 指定圧がそうだと知らなかったので、前を1.7㎏/㎠ぐらいに上げ、後ろは1.6㎏/㎠のままにして走りましたが、アンダーが強い、という印象はありませんでした。思ったとおりに走れましたね。
 平 尾 前の圧を上げれば、アンダーは弱くなりますよね。本来は、前と後ろの空気圧はドライバーが自分で選べばいいですね。
 本 誌 タイヤがかなり踏ん張る、ということもあるんじゃないですか。“ハイブロック・パターン”はどうですか。
 星 島 ロードノイズはかなりありますね。それと意外に雑音が気になりましたね。ミッションあたりからの音が……。
 平 尾 そういう点からはMIが一番いいんじゃないかな。
 岡 崎 ミッション系のノイズが気になりましたね。
 森 谷 音的には大きなピークのないようにしよう、ということでやりました。
 星 島 排気音はカッコイイ音ですね。
 豊 島 排気音は運輸省の審査のとき、あまり静かなんで、計測をやり直したほどです。初期のセダンなどでは、大きな音が好まれていたので、心ならずとも大きな音にしていましたが、最近では静かでなければいけない、ということでオプションにしていた静かな排気系に切り替えております。

0→400m 16.7秒

0→400m 16.7秒と加速性能はすばらしい。

 本 誌 動力性能の結果はどうですか。
 古 谷 発進加速は、50mに4.5秒、100mに6.8秒、200mに10.6秒、400mに16.7秒でした。(以下、144Pデータ参照)
 本 誌 非常に速いですね。ギヤレシオはどうでした。
 古 谷 ロー、セカンドがちょっと低いという感じがしましたね。サードはいいですが。 
 本 誌 ロー、セカンドのギヤ比が大きいと立ち上がりはいいわけですね。
 古 谷 そのわりにGがでていない。ただ、保っている時間は長いです。
 岡 崎 ストップウォッチでちょっとやってみても、160㎞/hに到達するのが非常に早いんです。はじめの出足が100㎞/hを超えても落ちませんね。
 平 尾 伸びがある、というのは、空気抵抗が少ない、ということにつながるね。
 本 誌 50mに5秒を切っているわけですが、タイヤのスリップは……。
 古 谷 多少ありますが少ないですね。
 小 口 加速度が0.6Gぐらいで、しかもずっと保っているのというのは、クラッチのつなぎ方もありますが、ショックが少なくスムーズに加速する、という感じを受けましたね。
 本 誌 クラッチはどうでした。
 古 谷 こういうタイプの、パワーをかなり出しているクルマにしては、つながりがスムーズですね。
 小 口 ひとつはストロークとペダル踏力の関係もありますね。
 平 尾 ツイン・キャブの場合は、アクセルペダルの重さの関係もあるね。
 石 川 操作力はクラッチを切るのが12.0㎏、つなぐのが12.5㎏、アクセルは一定速で2.0㎏、加速は4.5㎏ぐらいで、普通のセダン並みですね。
 小 口 そういうところのフィーリングが扱いやすく、加速度のほうもおとなしい。が、実は非常に速い、という感じですね。
 樋 口 自制心のない人にはオススメできないようですね(笑)。
 平 尾 東名を100㎞ /hで走るときは、100%のマージンがあるわけだ。200㎞ /hでプルーフしているんだからね。だけど「なぜ200㎞/hも出るクルマを作るんだ」と言う人がきっとあると思う。「都内は40㎞/hでしか走れないんだから、そんなハイスピードは必要ない」と言う人に対しては、「都内はたしかにそうだが、1台のクルマで都内も高速道路も走るんだから、そうはいかない。もう少しお金があれば、2台のクルマを買って使い分けるんだが」と言っているんですが……。

軽いブレーキ

 本 誌 ブレーキはどうでしたか。
 石 川 効力とフェード試験をやりました。効力試験は50㎞/h、100㎞/h、130㎞/hでGは0.2~0.6Gまで、50㎞/hでは0.8Gまでやりました。結果は50㎞/hと100㎞/hでは0.2G踏力が約7㎏、0.4G踏力が15㎏ぐらいでした。0.6G踏力は50㎞/hが約27㎏、100㎞ /hが3㎏ぐらい。130㎞ /hでは、0.2Gは同じですが、0.4Gでは最初15㎏、止まる間際に35㎏ぐらいまで増えます。0.6Gは始めおよそ35㎏、終わりが45㎏ぐらいでした。ブレーキ型式が前輪ディスク/後輪リーディング・トレーリングで、リヤにPCVが付き、マスターバック、ダブル・サーキットということで、踏力が大きくなるのは、サーボが休止しているせいだと思います。
 フェード試験は1回目は16~20㎏ぐらい、5回目は30㎏前後、9回目が35㎏前後と増加はかなり大きいですが、100㎞ /h程度ならわりとコントロールしやすいと言えます。リカバリーは良かったですね。それと80㎞ /hから全制動をかけてみましたが、リヤはロックしませんでした。(以下、147Pデータ参照)
 本 誌 ブレーキの味としてはどうですか。
 石 川 タンデム・マスターシリンダーで、しかもサーボを使っていると、どうしても柔らかめになりますね。

ゴージャスな室内

ギャランGTO-MⅡのリヤスタイル。
 本 誌 寸法関係のデータをお願いします。
 音 田 ボディ寸法では、全長とホイールベースはフィアット124クーペとぴったりあった数字です。幅は国産車の通例ですが、全幅、トレッドともヨーロッパ車と比べると狭くなっています。車高は1300mmと非常に低くなっています。最低地上高は排気管の出っ張ったところが若干小さくなっていますが、セダンと変わらないと思います。スタイル上では三角窓もなく、フルオープンでスッキリしています。
 トラックはダックテールの関係で多少詰まった感じですが、中身は従来と変わらず広いです。
 室内寸法は、従来のヘッドルームの数字は十分ですが、座面のクッションをえぐるなど苦心の跡が見えます。
 カーブドガラスはスタイルとか空力的にはいいと思うのですが、寸法の上ではむしろ頭をせばめた分だけ不利じゃないかと思うのですが。
 豊 島 カーブガラスを使ったから、居住性が良くなったのではなく、カーブガラスを使ってカッコ良く、空力的にも良くして、さらに居住性を損なわない、ということです。
 音 田 室内のムードは豪華さを狙ったということもあって、ほとんど付けられるものは付いていると思います。リヤの熱線プリントのデフォッガーも、タイマーを使って電気の使用量を考えて設計されていると思います。ギヤシフトパターンはリバースの位置が、他のクルマと比べてあの位置は少ないほうです。その他ではオーバーヘッドコンソールといいますか天井にウォーニングランプを付けたことが目新しいところです。(以下、150Pデータ参照)
 本 誌 リヤシートの位置がだいぶ低いですが、レッグスペースはどうですか。
 音 田 フロントシートのスペースを十分とって、後ろがこのぐらいですからいいと思います。数値で言うと小さいですが。
 本 誌 リヤシートを倒してもトランクルームとはつながらないんですか。
 豊 島 つながりません。ねじり試験などで、あの部分が強度的なポイントであるということがハッキリしているので。そこは立派な1枚板を付けています。
 本 誌 シートの座り心地はどうでした。
 星 島 フロントシートは非常に良かったですね。ただし、リヤシートはあまり良くなかった。膝のスペースが思ったほど良くないんです。それとコンソールをドライバーに向けてある、というのはいいですね。メーター類もたくさんあって、これなど“売り”になりますね。ただ、オーバーヘッドコンソールはちょっと疑問です。あそこに操作するものがある、と言うならばイカしているんですが、ウォーニングランプだけ、というのは……。
 樋 口 あそこあたりに、チョークレバーでもあるとね(笑)
 平 尾 ベンチレーターの調節はセダンでは絵表示でしたね。あれは非常に良かったと思うが、これはまた字になっていますね。何か悪かったのですか。
 豊 島 いえ、そんなことはありません。このGTOも絵表示にしたいと思っています。

高い安全性

 本 誌 安全のほうはどうですか。
 樋 口 目で見た安全は、100点満点で88点。2ℓクラスの安全装備が付いていて、ユーザーの目から見て、安全だと思われるものはみんな付いているので、問題はないと思います。現実にはそういったいろんなものを付けても、安全につながるかどうかは分かりませんが……。
 本 誌 衝突試験をかなりおやりになったと思いますが……。
 石 坂 2年前から実車試験をやっています。特にキャビンを頑丈にして前後でできるだけ衝撃を吸収する、という考え方を盛り込んでいます。
 本 誌 センターピラーがない、ということで強度的にはどうなんですか。
 石 坂 一般論としては、センターピラーレスということは弱点のようにも言われていますが、フロントピラー、サイドシル、リヤピラーの構造をガッチリさせて、特に太いリヤピラーが十分カバーしています。それとロールオーバーに対しては、安全からいえば、ロールオーバーしにくいクルマが好ましいわけですが、このクルマはテストでロールオーバーさせるのに苦労したクルマでした。
 本 誌 視野の結果をお願いします。
 平 田 全体の可視範囲は2.5ステラジアンで、今まで測定したうちでは中ぐらいのところです。(以下、152P参照)
 樋 口 視野に関係あると思いますが、バックする時など助手席のハイバックシートのヘッドレストの部分が取れるとありがたいですがね……。
 平 尾 後ろの荷物を取るのにも邪魔だね(笑)  
 本 誌 バックで車庫に入れるとき、どのくらい先が見えますか。
 石 坂 ドライバーの目の位置で違いますが、だいたい6m前後は見えます 本 誌 振動は測定しなかったのですが乗り心地はどうでした。
 岡 崎 あれだけの操安性のいいクルマでは、乗り心地は全般的にいいと思いました。
 ダンパーが良く効いていて、しっくりした感じがしました。
 豊 島 ダンパーはセダンに比べて倍の減衰力を持っています。
 森 谷 ただ、ばねが硬くなっていますから、ダンピングレシオとしては50%ぐらい高くなっています。
 本 誌 では最後に生産と輸出の計画をお聞かせください。
 須 田 生産計画は月産2500台を予定しています。輸出の問題は、このGTOをすぐ輸出することは考えてません。もう少し経ってから、と思っています。
 星 島 左ハンドルにすると、あのコンソールは逆にするんですか(笑)
 上 砂 その問題は上の方から言われて困りましたが「ハードトップのやつを使います」と言ってごまかしました(笑)
 樋 口 図面を裏返しにして作ればいいんじゃないですか(笑)
 本 誌 ではこのへんで……。

コルト・ギャランGTO-MⅡ主要諸元
寸法: 全長4125mm 全幅1580mm 全高1315mm ホイールベース2420mm トレッド(前)1295mm トレッド( 後)1285mm 室内長1620mm 室内幅1300mm 室内高1075mm 地上高165mm 車重930㎏ 定員5名
エンジン:水冷直列4気筒 OHC クロスフロー吸排気系 ボア×ストローク 76.9mm×86.0mm 排気量1597cc 圧縮比9.5 最高出力110ps / 6700rpm 最大トルク14.2㎏m /4800rpm 気化器SUタイプ2個
クラッチ:乾単 機械式操作
変速機:4速フルシンクロ フロアシフト ギヤ比 1速3.525 2速2.193 3速1.442 4速1.000 R3.867 最終減速比4.222
ステアリング:リサーキュレーティング・ボール ギヤ比 バリアブル15.5 ~ 18.1 ハンドル径380mm(チルト)
サスペンション:前輪 独立ストラットコイルスプリング スタビライザー付 後輪 リジットアクスル 4枚リーフスプリング
ブレーキ:前輪ディスク 後輪リーディング・トレーリング PCV付 タンデム・マスター・シリンダー マスターバック付
タイヤ:165SR-13 ラジアル 空気圧 前輪1.4㎏/㎠ 後輪1.6㎏/㎠
燃料タンク容量:45ℓ
フレーム:モノコック
性能:最高速185㎞ /h 燃費18.5㎞ /ℓ 制動距離14.0m(50㎞ /h) 登坂力sinθ0.50 最小回転半径4.6m
価格:84.3万円(東京店頭価格)

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