『これが新しいスタンダード』マツダCX-30開発主査に訊く「CX-30の狙いは?」「世界ではどう受け入れられている?」「MX-30との関係は?」(前編)
- 2020/08/09
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MotorFan編集部 鈴木慎一
M F:ひとつ純粋な疑問あるんですが、お訊きしてもいいですか? マツダくらいのサイズの会社で、かたやCX-30があって、かたやMX-30が出てくる。大きさほぼ一緒。片方は電気自動車だって言われたら「そうだねよ」って納得できるのですが、いやいや電気じゃなくてエンジンを積んだのもあるぞ、ってなると「???」となるのです。エンジンが載るのだったら、MX-30っているの? CX-30とMX-30は両モデルともかっこよくて、両モデルともどちらかといえば本格SUVというより都会派クロスオーバーです。同じサイズのクロスオーバーがマツダのなかで並立する、並立させ方がちょっとよくわからなくて。佐賀さんはCX-30の主査なので「いいや、CX-30があれば、ほんとはMX-30はいらなかったんだよ」って思っていらっしゃるかもしれませんが…….(笑)。
広報:(すかさず割って入る)マツダとしては両方いるってことですよ。ターゲットにしているお客様がまったく違うので。
佐賀:じつはMX-30の企画は、CX-30とほぼ同時期だったんです。その頃からEVとエンジンがあるカタチにしようと思っていました。竹内(注:MX-30の主査。女性)は、主軸を電気自動車に据えて新しい価値の創造をやっていますが、やはり数的なものと市場を考えたら、やはりガソリンエンジンを搭載したモデルもフィットするんじゃないかとということで、MX-30にもエンジン搭載車を設定したわけです。MXって、いわゆるチャレンジ的な意味合いが非常に強いですよ。内装もコルクやいろんな素材にこだわって環境的なイメージも強めて開発しています。マツダが可能性に挑戦する意味合いが『MX』にはあると僕自身は受け止めています。
佐賀:そのうえで、『CX-30があるからMX-30はなくてもいいじゃん』って言ったら”なくてもよかった(笑)”。なくてもよかったかもしれませんが、逆にCX-30でMXのチャレンジはできなかったです。CX-30でチャレンジしてしまったら、ちょっとスタンダードから外れてしまう。じつはCX-30のサイズや考え方は、非常に古典的ですよ。クルマ作りの基本に忠実にやりました。その意味では正直チャレンジはMX-30に任せた。で、CX-30は王道をいこう、と。だからMX-30は、いらなかったかもしれないけど(笑)、助けられた部分もずいぶんあった。CX-30でできなかったことを彼女はMX-30にどんどん取り入れていきました。そういう意味ではいい棲み分けができたんじゃないかな、と思っています。
M F:僕らはMX-30とCX-30はまったく別のプラットフォームだと思っていたので、あっち(MX-30)にエンジンが載るんだったら、こっち(CX-30)にも電気が載るんじゃないかって思ってしまうんです。当然、これから電動化はしていかないといけない。いまマツダの場合は、M HYBRIDが24Vのマイルドハイブリッドです。きっといろんなマーケットからは、これでは足りないって言われる部分ってあると思います。そのあたりはどうお考えになっていますか?
佐賀:M HYBRID、まず24Vでいれましたが、今後、それで足りるとも、当然思っていません。世の中に48Vもありますし、将来的にはもっともっと……技術開発は進めています。……これは言ってもいいんだよね?
広報:24Vが足りないっていうのは……。
佐賀:いや、足りないんじゃなくて、将来的にはそれだけでは勝負ができないってことだよ。いまの24Vが足りないって話じゃないよ(笑)。
佐賀:そういう技術開発は当然ながらパワートレーン部門、あとは技術研究所がやっていますいまのマルチソリューション戦略をさらに強化していく必然性は当然あると思っています。そのなかでMX-30が電気だから、それがCX-30にも載るかっていうと、まぁちょっと派生のさせ方が違いますよね。MX-30が完成したので、今後それをどうやってフィードバックするかは、考えていかなくてはいけない。いろんなクルマでいろんな可能性を追求していくのは当然の責務としてやっていく。はい。そんなところです。
M F:CX-30は一躍マツダの主力車種に躍り出ました。もちろん、佐賀さんは躍り出るつもりでお作りになったと思います。でもこれから先、プレッシャーはありますよね?
佐賀:そうですね、まず産んで出す、皆さんに説明するまでがひとつ大きなプレッシャーでした。当然、MAZDA3とのポジショニングの問題もありました。ファストバックをデザインのほうへ飛ばして、こいつ(CX-30)を主力にするんだっていうのは企画当初からありました。しかし、果たして本当にそこへ行きつけるんだろうか、っていうところは、ニューネームプレートということも合わせると非常にハードルは高かったと思います。
佐賀:CX-30は始まったばかりなので、次をどうやって進化させるの? っていうのが一番の高いハードルです。これだけクロスオーバーに競合車種が出てくると、今度はそれぞれが睨み合いを始めるわけで、そうするとどうやってCX-30の特徴を維持していくか。当然デザイン、CX-30に質感で買ってくれるお客様が多いというのを他社さんが分析したら、その方向へくるだろうし、やっぱりサイズだよねとなれば、同じようなサイズになってくると思います。そうなると今度は画一的なものになってしまう。そうするといまのクロスオーバーマーケットが果たして存続できるかっていう話にもなってきます。次が非常に難しい。それはひしひしと感じますね。
M F:佐賀さんご自身は、現行のCX-30を進化、その先の次のフルモデルチェンジも担当するかもしれないんですか?
佐賀:それは上が決めることなので、僕がどこまで携われるかわからないですが、会社にいる限り、どういったカタチにしていくかには携われるかなと思っていることを前提にすると、そこは『イエス』でやっていかなくてはいけない。もうすでにインサイクルなアクションは、ある程度走っているんです。いろんな考えがあるなかで、自分のなかの一番の課題は、じゃあ次のモデルを出すとして、そこにいまのインサイクル進化とどう繋げていくか。そこがすごく難しい。CX-30は新しいネームプレートなので、一代でガラッと変わってしまうと、あれ? 結局認知度が上がったのに、その認知度って捨てるのかっていう話になる。しかし、キープコンセプトになると、あ、代わり映えしないなってなってしまう。それが悩みの種です。
M F:CX-30が発表されたとき「まさか、30でくるとは思わなかったよね」ってみんなが言っていましたい『2桁あり』ってなったときに、じゃあCX-5の次はCX-50になるのか、80になるのかとか、中国専用モデルのCX-4も含めて、CXシリーズをどうしていくのか、にも興味があります。
佐賀:そういう意味では一桁でも二桁でも僕のなかではこだわりはないんですが、シリーズラインアップとして、SUVとして置くのか、クロスオーバーとして、新しいカタチとして整理していくのかといったら、僕は後者になっていくような気がします。そのときに、ほんとにいまの体系でいいのか。じゃあ、お客様がCXシリーズのなかでマツダを乗り継いだときに、ちゃんと繋がっているのかとか、どういう派生のさせ方をするのかとか、そのあたりは整理するでしょうね。
佐賀:逆に、SUVという名の下にラギット(rugged=いかつい、無骨な、荒削りな)なクルマも当然ながら同時に出てきているわけで、じゃあそういうクルマはいらないのか、とかそんな議論もしていかないといけない。CXシリーズが第6世代商品群のCX-5から始まったなかで、我々としてはある程度知名度が出てきたんじゃないかな、と思っています。CX-30は新しい商品群としてどうやってストーリー作りをしようか、はひとつ大きな方向性ではありますね。CX-5やCX-8が今後二桁になるのか、僕も知りませんし、僕の口からは言えません(笑)。
佐賀:ただ、そうですね、自問自答しながらお客様に本当に喜ばれる商品をどうやって作っていくか、というのはCXシリーズが出揃ったいまだからこそ、次が難しい。そこをどうやって外さないようにかつ「そう来たか!」ってサプライズもありながらニュースを発信していけるかが、我々小さい所帯のマツダが生きていけるかだと思うんです。
後編では、SKYACTIV-Xについて、の佐賀さんとのQ&Aをお届けする。
『SKYACTIV-Xはどう進化させる?』マツダCX-30開発主査に訊く「CX-30のX比率は現在国内では約5%、欧州では40-50%です」(後編)
CX-30には、マツダが世界に誇る革新的な新世代エンジンであるSKYACTIV-Xがある。ところが、X搭載車の販売台数は現状では国内...
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