火曜カーデザイン特集:新型スバルBRZのデザインを分析する 新型スバルBRZのデザインは生身とメカのハイブリッド!?
- 2020/11/24
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CAR STYLING編集部 松永 大演
新型BRZをみたとき、その造形をどう捉えればいいのか? とずっと考えてしまった。今この原稿が書けているのは、その答えがある程度自分の中でまとまったからなのだと思う。
というのも現行モデルが、多くの造形が一貫した流れのなかにあったのに対して、新型には「どうして?」と思ってしまう要素が散見されたからかもしれない。例えば、フロントフェンダーの唐突とも言える造形などなのだが……
変わらぬプロポーションながらさらに注がれた情熱
もちろん現行モデルでも、サイドウインドウ下からフロントフェンダーに続くボディをそぎ落とすかのようなラインなど、全体の優しい面とは異なる造形もみられる。
しかしこの部分こそが、現行BRZ / 86の最大の見せ場で、低重心、フロントタイヤの大きさ、俊敏さなどを表現するキーポイントとなっている。それどころか、個人的にはこの造形があることによって、このプロダクトの内包するハングリーさをも表現しているように感じられたのだ。
そうして考えて行くと、やはり新型BRZにもそのバランスを壊す要素がみられる。フロントフェンダー後方のかなりフラットな印象で鋭利に流れる面。そしてその下には、アウトレットがインパクトを与える。サイドシルスポイラーと呼ばれるドア下からリヤフェンダーに流れるフラットで面積の広いエリア。フロントに回れば、低くより広く直線的に広げられたインテーク。途中にはまるで新型レヴォーグのような鋭角に形作られたラジエターグリルサイド面構成も見受けられる。リヤ周りもかなり直線的な要素が混在する。
全体的にエモーショナルで人間的ともいえるソフトな造形の中で、これらがなにを意味するのか?
そのことを考えて行く前に、全体の流れについて紹介していこう。
先に米国仕様を発表したBRZだが、公開された外寸をインチからミリメートルへと単純に換算すると、全長4265mm、全幅1775mm、全高1310mm、ホイールベースが2576mmとなる。これは現行型と比較すると、全長で25mmホイールベースで6mm長く、10mm低い。全幅に変更はないというサイズだ。
狙いを明確に伝える造形
フロントの造形は、現行モデルと大きく違わないように見えるが、現行モデルがヘッドライトを含みながら横に広がる造形だった。
それに対して、フェンダー部分をより独立させる意図があったのか、左右フェンダーとも後ろから前へと押し寄せる、ダイナミックな形が印象的となった。
中央のボンネット部分はそれとは独立し、エンジンを収容し、安全性、空力性能を確保するなど機能に徹しながら、優美な面を見せている。
サイドのプロポーション自体は、現行と大きく変わらない。
しかし前述のサイドウインドウ下からフロンフロントフェンダーに伸びるキャラクターのアイデアに変わる新しい表現を面の造形で生んできた。
いかにシンプルに時代の先を行く、ダイナミックで、低く、コンパクトさを表現するか。さらに、現行モデルでも抱えている問題として、力強さを表現するには最適だが、やや大きく厚く見えてしまうリヤフェンダー周りのベストなバランスをどう取るべきか?
今回は、リヤのブリスター的なフェンダーをドア後端のかなり低い部分を起点とし、リヤウインドウからリヤバンパーの上面につながる緩やかな面と、独立したブリスターフェンダーを合流させる形とした。リヤ周りもフェンダーの独立感をさらに強調し、低重心もイメージさせるものとなっている。
リヤエンドのコンビランプは直線的に大きく、できるだけリヤセクションをコンパクトに見せることにも貢献しているようだ。加えてトランクのオープニングラインは、後部のリッド部分の幅はそれほど変わらない印象だが、上部を左右に広げることで、より扱いやすい開口部を得ているようだ。
冷たいメカニズムを操ることで生まれる躍動
そして今回の冒頭に記したデザイン上の造形の違和感の捉え方だが、エモーショナルとメカニクスの融合にあるのではないだろうかと思う。柔らかで滑らかなラインのない全体的な造形と、フェンダーやサイドシル、フロントエンドなどに見受ける、極めて直線的であったり、平面のようないかにも人工的な強さを感じさせるような面との構成を、このように捉えてみた。
一見違和感があるようにも思うのだが、スバルの魅力はまさに絶対的にクールなハイメカが生み出す高い性能と、それを操ることで生まれる気持ちの高揚感にあると思う。そうした、感情のあるはずのないメカと、そのメカを操るがゆえに生まれるエモーショナルな世界を一体化して見せた造形のように思えた。ただ一つ残念なのは、あくまでも私感なのだが、フロントフェンダー周りの造形によってフロントタイヤが小さく感じられたことだ。現状では限られた写真でしか確認できないために、そのような印象に固定されてしまっているのかもしれない。
今後、実車を見ていけばまた違う印象となることを期待したい。
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